言い出しっぺの幹事業を厭うなかれ 労苦にはおいしいご褒美が(高城幸司)

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   「いろいろご苦労様です。幹事は大変ですよね」

   何事にせよ人の集まりを仕切る幹事役は、周囲から殊勝に見えるものです。まして、その幹事役を自らが手をあげて引き受けた「言い出しっぺ」は責任重大。「言い出したのは君でしょ。最後まで責任もってお願いしますよ」と逃れられない立場になります。

   ちなみに「言い出しっぺの法則」をご存知ですか? 最初に提案した人間が自ら実行するべきであるという理念のこと。

   A「今度、職場で親睦のために飲み会をやりたいですね」

   B「そう思うのなら、君が幹事で仕切ってください。よろしく」

   自分から進んで行動しない人や、人の計画を批判するだけの人を黙らせるには大変効果的な一言として、ネット上でつかわれることが増えています。

最後までやり切る経験を

勉強会を仕切る苦労も買ってせよ
勉強会を仕切る苦労も買ってせよ

   C「××なキャラがあればいいのにな」

   D「だったら自分でつくれよ」

といった感じでしょうか。ネット社会では言い出した人物が先陣を切ってそれをやることを求められるから、との背景から法則として広まったようです。いずれにしても言い出しっぺになり、ネットよりリアルな場面でも(仕事では是非とも)積極的に引き受け、最後までやり切る経験を重ねるべきです。なぜなら、大変な苦労の分だけ恩恵にあずかる可能性もあるからです。

   例えば、日常業務に追われるだけではできない社内外の人脈がつくれる可能性が生まれます。あるいはセルフブランディングが広まることで、おいしい仕事が舞い込むチャンスが増加します。ちなみにセルフブランディングとは「個人」が、自らをメディア化し、自らの力でプロモーションできる状態になること。

   「こんな仕事ならEさんにお任せすれば間違いない」ということが強く印象づけられれば、大きなプラスになります。言い出しっぺとして仕事をやり切る場面は、周囲の関係者がみな注目しているからです。

利他主義はむしろ歓迎される

   しかも、言い出しっぺは幹事役として周囲のお役に立つべき仕事を引き受けたわけです。いわゆる利他(他者の利益を優先する考え方)の立場にあったと言えます。周囲が自分の応援団になってくれる可能性が高まっているはずです。以前にある経営者が、

「利他主義を強く主張しても周囲は足を引っ張らない。むしろ歓迎される」

と語るのを聞いたことがあります。確かに自分のやりたいことを強く自己主張すると一見「わがまま」に見えますが、言い出しっぺで引き受けた幹事をやり切るために、

「何とかいい形で終わらせたいので来週は会議を3回やりたい」

と無茶を言っても悪い印象は与えません。むしろ頑張っているな、当事者意識が高いなと、その熱意に評価が高まるはずです(無茶な会議召集が了承されるかは別の話)。そうした当事者意識の高い取り組みを見ていると、相手も、

「これだけ情熱もって取り組んでくれているから、仕事の相談もしてみようか」

となりがちですから、おいしい仕事がネットワークから舞い込みやすくなります。

   私もリクルートの若手営業時代に、直接の業績達成以外の目的で業界担当別情報交換会を開いたり、東西営業同士で提案書の作成力を上げるための勉強会の開催したりして、幹事役を務めました。当時は仕事が多忙を極めた上にメール環境が整っていなかったために、参加者への告知や出欠確認をするのも大変な手間の時代でした。それでも地道に1年以上継続すると、参加者の数名から電話で仕事の相談がくるようになりました。

「日頃の勉強会の運営を見ていて、誠実で仕事ができる方とお見受けするようになりました。確か、販売店向けの販促支援が得意だったですよね? 1社ご紹介したい企業があるのですが」

   キター......という感じですよね。

   このように進んでネットワークの形成に寄与する人には、おいしい仕事が舞い込んできているはずです。(高城幸司)

高城幸司(たかぎ・こうじ)
1964年生まれ。リクルートに入社し、通信・ネット関連の営業で6年間トップセールス賞を受賞。その後、日本初の独立起業専門誌「アントレ」を創刊、編集長を務める。2005年に「マネジメント強化を支援する企業」セレブレインの代表取締役社長に就任。近著に『ダメ部下を再生させる上司の技術』(マガジンハウス)、『稼げる人、稼げない人』(PHP新書)。「高城幸司の社長ブログ」
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