都心のオフィス賃料上昇 5年10か月ぶり1坪1万8000円台に

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   オフィス仲介大手の三鬼商事が発表した4月末の東京都心5区(千代田、中央、港、新宿、渋谷区)の1坪(3.3平方メートル)当たりの平均賃料は、前月末より0.49%(88円)上昇し、1万8061円となった。1万8000円台に乗せるのは2010年6月以来で、5年10か月ぶりのこと。景気の先行きは依然、不透明感が漂っているが、企業の雇用環境が改善していることを背景に、オフィス需要は引き続き堅調に推移しているようだ。

上昇基調は明確だが

都心のオフィスビル、需要堅調
都心のオフィスビル、需要堅調

   調査は都心5区にある大規模な貸事業所ビル約2600棟を対象に実施した。5区の平均賃料の上昇は28か月連続になる。地区別で見ると、3月に「新宿ガーデンタワー」(住友不動産)が完成したばかりの新宿区が前月末比1.21%(185円)上昇と最も高い伸びを見せた。また、中央区が0.80%(131円)、港区も0.62%(115円)上昇するなど、5区すべてで前月末を上回った。

   オフィス賃料が上昇しているのは、空室率の低下と表裏の関係にある。4月末の都心5区の空室率は前月末比0.11ポイント低下し、4.23%だった。新築ビルの成約が進んだうえ、企業のオフィス拡張の動きに伴って、既存ビルでも成約の動きが出ているといい、5区全体の空室面積は1か月で2万1000平方メートル以上も減少したという。需要の堅調さは確かといえるようだ。

   空室率を地区別で見ると、新宿区の空室率が0.63ポイント低下し4.23%で好調だったほか、中央区が0.17ポイント低下の4.07%、渋谷区が0.10ポイント低下の2.25%とそれぞれ低下した。なお、港区(0.02ポイント上昇の5.48%)、千代田区(0.03ポイント上昇の3.57%)の2区は小幅ながら上昇したが、水準自体は引き続き極めて低い。

   「賃料の上昇基調は明確になってきている」(業界関係者)のは疑いないが、上昇は企業活動の活発化の反映であるとはいえ、上がり過ぎれば経済活動の足を引っ張るという二面性がある。

   現在の状況をどう見るか、また、今後の見通しはどうなのだろうか。空室率の低下で全体の需給バランスが引き締まっているのは確かだが、先行き、どんどん賃料が上昇を続けるか、疑問視する声も少なくない。地域や物件によってはテナントの確保に時間がかかっているケースもあるとされ、業界関係者からは「今後は上昇のペースがいっそう緩やかになるかもしれない」との見方も出る。また、2020年の東京五輪・パラリンピックを前に、2018、2019年には都心部に大規模なオフィスビルが相次ぎ完成する見通しだ。五輪に向け、景気全体がどうなっていくかにも関わるが、需給バランスが乱れることで、業界は一転、冬の時代に突入する懸念もささやかれている。

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