2024年 4月 27日 (土)

入社後に「事なかれ」の天井が 女性総合職伸び悩みの理由とは

糖の吸収を抑える、腸の環境を整える富士フイルムのサプリ!

   今回のテーマは「女性社員の伸び悩み」です。

   学校基本調査の就職率(速報値)で2016年3月卒業者は74.7%。2000年代で過去最高となりました。特に女子は80.7%、1990年の81.0%、1991年の81.8%に比肩する高い数値です。

   これは売り手市場だからというだけではありません。第二次安倍内閣以降、政府がウーマノミクスを掲げ、企業側に女性採用を強く促している、その効果が表れています。

入社3年くらいで伸び悩む

育たないのはなぜなのか
育たないのはなぜなのか

   ただ、女性総合職については2000年代に入ってから、このような見方が定説になっています。

「女子学生は優秀。だけど、採用すると、入社3年くらいで伸び悩む。だから、バランスをとる上でも優秀ならざる男子学生もある程度採用したほうがいい」

   もちろん、入社時点から順調に成長し、着々と管理職コースをたどる人材もいるのですが、全体から見れば少数派。

   どうして、伸び悩むのか。その理由がいくつか判明してきました。

   理由1:男性管理職の過剰配慮

   女性総合職を登用するようになった企業でよくあるパターン。セクハラ・パワハラはあってはならないのですが、男性管理職がそれを過剰に気にするあまり、女性に負担の大きな仕事を与えないきらいがあります。

   同じ若手の平社員が男性、女性、それぞれいるとしましょう。過剰に配慮する管理職は、残業が発生した、若手社員にとって難しい案件が出たなどの場合、それを女性社員にではなく、男性社員に出してしまいがちです。男性社員からすれば、仕事の負担は大きくなりますが、その分、成長する機会が増えます。

   これは仕事以外でも言えます。管理職が業務時間外に「飲みに行こう」と誘うとしましょう。部署やプロジェクト全体での飲み会ならまだしも、部下と二人で飲みに行く、となると女性はまずい、それが現在の常識でしょう。

「女性、それも若い子を飲みに誘って、セクハラと取られるのもバカらしい」

   そう考える男性管理職がほとんどでしょう。その分、管理職と部下がコミュニケーションを取る機会は少なくなってしまいます。

   理由2:失敗への忌避反応

   失敗を恐れ、リスクを回避しようという傾向およびそうした行動――これは女性総合職・管理職が少数派に留まる企業だけではありません。女性総合職・管理職が多いとされる企業でもそこそこある話です。

   忌避反応が起きるかどうかの違いは何か、といえば、失敗に対するフォローがきちんとできているかどうかにかかっています。男女を問わず、学生・社会人を問わず、人は失敗するものです。失敗を経験するからこそ、次のステップに進めるわけです。

   たとえ何か失敗をしても、管理職や先輩社員のフォローがあれば、立ち直ることができます。失敗を過度に恐れず、挑戦精神を失うこともありません。

   失敗を過度に責めるとどうなるでしょうか。次は失敗しないように安全に行こう、あるいは、下手に挑戦するよりも前例踏襲で行こう、となってしまいます。

   こうなると、成長が鈍くなってしまいます。

「あなたのせいで仕事が増える」

   理由3:一般職・先輩社員からの圧力

   女子学生からすれば意外かもしれませんが、一般職でも総合職とほぼ同じ仕事をしている、ということが企業ではよくあります。人事、総務、経理、営業事務などバックアップ部門ではよくある話です。

   一般職の先輩社員からすれば、同等か自分よりも少ない仕事量で給料が自分よりも高い総合職の後輩社員が面白いはずがありません。イジメ、というほどでないにしても、総合職の後輩社員に圧力をかけることがそれなりにあります。

   一例を挙げましょう。とある建材メーカーで営業事務に配属された女性総合職のAさん。終業時間18時直前の17時50分、担当する営業部のBさんから、「取引先の見積もり一覧を用意してほしい」と言われました。作業時間としては30分程度と見当をつけたAさんは、それくらいの残業ならばいいか、と快く資料を揃えてBさんに送信しました。それを見ていた課長は、「よく対応してくれた」とAさんをほめます。

   いい話じゃないか?

   この会社の営業事務の部署の構造がどうなっているか、そこがポイントです。もし、総合職に女性だけでなく男性もいて、単純作業はもっぱら契約社員が扱っていて、契約社員はかならず18時ちょうどで終業、ということであれば問題はありません。契約社員からすれば、Aさんが残業してもしなくても、自分の仕事には直接関係はないからです。

   ところが、一般職だったらどうでしょうか。もし、Aさんが終業間際に作業を引き受けて残業を拒まないと、なしくずしに自分たちにも残業仕事が回ってきます。一般職は総合職と違って残業をしてもそれほど評価されるわけではありません。

「あなたのせいで仕事が増えるのよ」

   課長に褒められていい気分になっていたAさんは翌日、一般職のCさん、Dさん、Eさんに呼びつけられます。

   Cさん:「あなたさあ、終業間際にああいう仕事、受けられると困るのよ」

   Aさん:「え? でもBさんもお急ぎの様子でしたし」

   Dさん:「終業間際なんだし、見積もりリストなんて本来は営業のオトコが揃えるものなの。それを勝手にスタンドプレーしてくれちゃって」

   Eさん:「あなたがああいう仕事を受けて、もしあなたがいない場合、私たちの負担が増えるの。それって迷惑なの。ね、今度からは本来の線引きがどこにあるのか、きちんと確認してから受けてちょうだい。あなたと違って、私ら、余計な仕事をしたくないし」

   Aさん:「はい、すみません......」

   という会話があったかどうか分かりませんが、以降、Aさんも含め、この建材メーカーの営業事務は終業間際、連絡がつきづらいと社内に悪評が立ちました。めでたし、めでたし......ではないですね。

   どうすれば改善できるかは、また別の問題なので措くとします。

   以上のように、女性総合職の伸び悩みの理由を3点にまとめてみました。一般職の待遇改善を含めて考えないと、難しいですね。うーん。(石渡嶺司)

石渡嶺司(いしわたり・れいじ)
1975年生まれ。東洋大学社会学部卒業。2003年からライター・大学ジャーナリストとして活動、現在に至る。大学のオープンキャンパスには「高校の進路の関係者」、就職・採用関連では「報道関係者」と言い張り出没、小ネタを拾うのが趣味兼仕事。主な著書に『就活のバカヤロー』『就活のコノヤロー』(光文社)、『300円就活 面接編』(角川書店)など多数。
姉妹サイト

注目情報

PR
コラムざんまい
追悼
J-CASTニュースをフォローして
最新情報をチェック
電子書籍 フジ三太郎とサトウサンペイ 好評発売中