2024年 4月 19日 (金)

新聞読もうよ、マスコミ志望者 採用担当が当惑する今時の素顔

   今回のテーマは「ダメなマスコミ志望者」です。マスコミを志望する学生は今も昔も変わらず、一定数います。ただ、昔ほど数が多くはないのと、マスコミへの就活全般を扱う雑誌がないこともあり、マスコミ志望者について触れられる機会は減っています。

「それはあなたが考えなさい」

何を撮りたい? 何を取材したい?
何を撮りたい? 何を取材したい?

   そんな中、マスコミ各社の採用担当者によるマスコミ志望学生についての特集記事を発見しました。朝日新聞社の「Journalism」、タイトル通りジャーナリズムの専門雑誌です。2008年創刊。2009年4月号以来、毎年3~5月号あたりで採用担当者座談会企画を掲載しています。

   出席者は日経、読売、朝日の新聞3社とNHK。ある年から中日も参加しています。テーマは、採用環境から志望学生、ジャーナリズム教育、研修、女性社員の働き方、ネットメディアなど。毎年似かよっていますが、その動向は少しずつ差があり、興味深いものがあります。

【「Journalism」2011年3月号】

   編集部 学生に何かやっておいてほしいことって、何かありますか。

   堀江(朝日新聞採用担当部長) そういう質問多いんですよ(笑)。「それはあなたが考えなさい」って僕は言っています。今年は特に多くて...。正しい答えがある受験勉強みたいに思っている。その場で問答しながら、一緒に考えてあげたりはしますけど。

   原田(読売新聞東京本社人事部次長) 答えを聞きたがるんですよね。

   堀江 そう、答えを求めている。

   大久保(NHK人事労務部担当部長) エントリーシートの材料や面接の答えに使いたいんですよ。

   堀江 「これをやっちゃいけないというのを教えてください」という質問も多い。

   原田 何て答えるんですか。

   堀江 それも「君が考えようよ」って(笑)。

   大久保 今の若い人たちはテレビゲームを、攻略本を読んでからやるじゃないですか。ああいう感じのイメージだと思うんですよ。

   原田 あらかじめ答えを知ってからやりたいんでしょう。それだと、面白くないと思うんですけどね。

自分で考え動ける学生が少ない

【「Journalism」2012年3月号】

   山内(NHK人事労務部副部長) 面接で異なる学生が、あるニュースについてそっくり同じような批判をするので、その出所を探ると、結局ネットだったりします。原発報道に関しても、ネットの不確かな情報を元に批判したりします。よくニュースを見ずに受けに来られるなと、その勇気にある意味驚いています。

   堀江(朝日) OB・OG訪問をしたいというので話をしてみると、やっぱり新聞を読んでいないし、ネットでずっと見ていた、と。本当に新聞記者をめざすのなら、ちゃんと新聞読もうよ、とアドバイスしているのですが...。最近は朝日新聞に興味を持ってくれただけでもありがたいのかなと感じています。内定者に聞くと、周りの学生は新聞を全く読んでない。新聞社を受けようとか、マスコミの勉強をしようという学生たちが孤立した状態になっているという話はよく聞きますね。

【「Journalism」2015年5月号】

   堤(日本経済新聞社総務局人事・労務部担当部長) 最近我々が聞くようにしているのは、「今、日経の名刺をあなたにあげるから、だれでも好きな人に取材していいですよ。だれですか?」という質問です。これに答えられない学生が結構います。これには我々も衝撃を受けていまして、正解などなくて、だれでいいわけですよ。総理大臣でもどこかの社長、会長でもいい。どれくらい大きな夢や希望を持っているか、野心を持っているかを見たいのに、「えーっと誰かなあ」と止まってしまう。自分で考えて動ける学生が少なくなっている気がします。

   水島(法政大教授・司会) でも、ショッキングですね。取材したいことがないのに新聞社を受けるみたいなことでしょう。

   堤 取材したいテーマを聞くと、「貧困」「弱者の目線」がほとんどで、視野が狭い。取材先を具体的に言ってごらんと聞くと、そこで考え込んでしまう学生が多いですね。

   橋爪(NHK人事局副部長) 少し違う視点で言うと、今の学生は失敗ができないのかなと思っています。ちょうど我々は似たようなバブルの世代で、世の中何とかなるだろうと本当に心の底から思って生きていた世代と、この20年間ずっと右肩下がりの中で、生まれたときから景気がよくなるはずはないと思って生きてきた人たちとの決定的な差で、失敗するともう戻ってこれないところがあって、ディフェンシブな考えが強いのかなと思います。実際、就職浪人する人も減っているようですし、昔我々のころにいたマスコミ留年などは減っています。安全志向と言われていますが、その根は失敗できないところに起因しているのかなと。

   いかがだったでしょうか。マスコミ志望者には新聞・テレビか、広告かを問わず、強くお勧めしたい記事です。

   ただ、この専門雑誌、どう考えても学生が読んでいる形跡がありません。それどころか、記事にもある通り、新聞すら読まずにマスコミを志望する学生が年々増加中。それでは落ちるよね、と思う次第です(石渡嶺司)。

石渡嶺司(いしわたり・れいじ)
1975年生まれ。東洋大学社会学部卒業。2003年からライター・大学ジャーナリストとして活動、現在に至る。大学のオープンキャンパスには「高校の進路の関係者」、就職・採用関連では「報道関係者」と言い張り出没、小ネタを拾うのが趣味兼仕事。主な著書に『就活のバカヤロー』『就活のコノヤロー』(光文社)、『300円就活 面接編』(角川書店)など多数。
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