2024年 4月 19日 (金)

栗山監督にリーダーの範を求める 何が選手を日本一に導いたのか

主砲の気持ちを前に向かせる

   主砲中田選手がシーズン途中で極度の打撃不振に陥った時のこと。チームがサヨナラ勝ちしたゲームで、ノーヒットの中田選手は、グラウンドで繰り広げられるチームメートの歓喜の輪に加わることなく、早々に一人球場を後にしたそうです。栗山監督はその姿を見逃さず、翌日の試合前、中田選手を監督室に呼びました。呼ばれた中田選手も、極度の不振でチームに迷惑をかけている状況を潔しとせず、監督に叱責されたら自分から二軍行きを申し出ようと心に決めていたのだといいます。

   しかし監督の話は予想外のものでした。

「もう一回がんばろう。翔で勝負してダメだったら納得できる。一からやろう」

   前日の「早退」を咎めるわけでなく、「四番として恥ずかしくないか」でなく、「先発を外す」「二軍へ行け」でもなく、「お前でダメなら納得」。これ以上の信頼感、期待感を伝えてくれる言葉はなかったと、中田選手は述懐しています。その後スランプを脱し優勝に大きく貢献した中田選手。主砲の折れそうな気持ちをしっかりとつかまえ前に向かせたのは、栗山監督の卓抜したコミュニケーション力だったのです。

   同じような経験は、今季パ・リーグのホームラン王を獲得したレアード選手にもありました。来日1年目の昨年、開幕からシーズン半ばまで日本人投手への対応に苦労し打率が低迷を続けていた時、レアード選手も監督室に呼ばれたといいます。二軍行きか? 事によっては解雇・帰国か? 首を洗って監督と相対し、告げられた言葉は、

「君のプレーをビデオで入念に見て、絶対に活躍できると確信して日本に呼んだ。僕は必ずやれると思っている。だからこれからも使い続けるのでよろしく頼む」

だったといいます。

   今季活躍できたのも、この時の監督の言葉があったからだとレアード選手は話しています。優勝談話では、「栗山監督への感謝しかない。栗山監督をナンバーワンにしたい、その一心でがんばってきた」と。日本シリーズでMVPを獲得した外国人選手の大活躍もまた、栗山監督のコミュニケーション力によって引き出されたのです。感性に違いもあるだろう外国人の魂すら奮い立たせるその力量には、ただ驚かされるばかりです。

大関暁夫(おおぜき・あけお)
スタジオ02代表。銀行支店長、上場ベンチャー企業役員などを歴任。企業コンサルティングと事業オーナー(複合ランドリービジネス、外食産業“青山カレー工房”“熊谷かれーぱん”)の二足の草鞋で多忙な日々を過ごす。近著に「できる人だけが知っている仕事のコツと法則51」(エレファントブックス)。連載執筆にあたり経営者から若手に至るまで、仕事の悩みを募集中。趣味は70年代洋楽と中央競馬。ブログ「熊谷の社長日記」はBLOGOSにも掲載中。
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