2024年 4月 19日 (金)

組織を活性化する「余白」の効 大企業病脱する決め手はこれか

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「管理しつつ行きすぎない管理環境」とは

   企業、組織というものは、規模が大きくなっていく過程において、様々な社内ルールや規則を決めるもの。あらゆる面に管理を行き届かせそれを固めていくことが成長の道筋であるのは、まったく疑う余地のない事実であります。

   しかしこれが完璧過ぎると、どうやら若干の「?」が付くようで。ウォール・ストリート・ジャーナル編集者のアラン・マーレイ氏も、著書『ウォール・ストリート・ジャーナル ザ・マネジメント』で、「正しいマネジメントをしすぎた結果、企業はブレークスルーの力を落とすことになる」と書いています。「マネジメントのされすぎは、いいことばかりではない」と思えてきます。

   では、「管理しつつ行きすぎない管理環境」というものはどのように作り出せばいいのでしょうか。

   S氏がたどった勤務先の変遷は、最初が新興市場上場のオーナー系N社、その次が非上場中小企業のオーナー系M社、そして現在が一部上場の財閥系B社。タイプの違う3つの組織を経験した彼は、その疑問に対する答えも持っていました。

「美大を出て就職した上場企業のN社にいたときは、中小企業のM社のほうがやりたい仕事ができるのではないかと思い転職。ところが、そこはオーナーのフリーハンドが過ぎて管理が不在。中小企業は大半がこのパターンかもしれないが、そのままでは企業として一定水準以上の発展が期待できそうにない。そんな折、大企業B社からオファーをいただき再度転職した。ところがここは大企業病的管理地獄。3社を経験した今、自分が一番いい仕事ができていたのは、実は最初のN社だったかもしれないと思うことも多い。組織のバランスが最もよかったと思っている。その証拠に、N社はその後一部上場企業にまで成長したから」

   彼に言わせると、N社のバランスとは、「適度な管理とオーナー感覚の両立」にあったそうです。すなわち上場企業的組織管理のかたわらで、管理されない「余白」の役割をオーナー社長が果たしていたと分析。2番目のM社は同じオーナー会社でも、管理不在ゆえに「余白」が「余白」として機能しない。大企業のB社は、トップが「管理」一辺倒の立場から指示を出すような「余白」不足状態。「管理」と「余白」のバランスこそ、組織の元気には重要なのだと感じさせられます。

   ある目的のもとに結束して進んでいる管理体制内に、上手に「余白」を設定すると、人はその目的に向き合って、さまざまな角度から、広く、深く考える傾向が強まるのかもしれません。「余白」は、緩やかに「管理の外」にあり、人の思考を刺激する――私の経験からもそんな気がします。N社の社長が自ら「余白」として機能したように、「管理」とともに「余白」を作るのも、実はリーダーの役割なのかもしれません。

   その考えを広げると、会社単位ばかりでなく部単位、課単位、営業所単位で、リーダーによる「管理」と「余白」のバランスから新しい発想を生み出す仕掛けができるハズ。大企業病分析に始まりながら、企業規模に関係なくあらゆる職場の活性化に役立ちそうなヒントを得られたS氏の話でした。(大関暁夫)

大関暁夫(おおぜき・あけお)
スタジオ02代表。銀行支店長、上場ベンチャー企業役員などを歴任。企業コンサルティングと事業オーナー(複合ランドリービジネス、外食産業“青山カレー工房”“熊谷かれーぱん”)の二足の草鞋で多忙な日々を過ごす。近著に「できる人だけが知っている仕事のコツと法則51」(エレファントブックス)。連載執筆にあたり経営者から若手に至るまで、仕事の悩みを募集中。趣味は70年代洋楽と中央競馬。ブログ「熊谷の社長日記」はBLOGOSにも掲載中。
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