保険を選ぶときのポイントは? 人により「損失」の重さが違う(ライフネット生命・出口治明)

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   みなさんが買い物をするときのポイントを考えてみましょう。それも、普段の生活から少し離れた特別な買い物について。今回、次回と僕の仕事である「保険」を取り上げてみたいと思います。

  • 人によって「損失」の重さが違う
    人によって「損失」の重さが違う

紙に書き出して整理してみよう

   保険とは何か、と問われれば「何かが起きて損失が生じたときにそれを補償してくれるもの」と答えます。専門的な言葉でいえば「ロス・ファイナンシング」。

   命を失う、病気になる、けがをする、仕事ができなくなる、火災に遭う、自動車事故を起こす、泥棒に入られる......などなど、さまざまな損失に備えるための保険が用意されています。

   保険を考える上で大事なことは、個人や家族によってそれぞれの損失の重さに違いがあるということです。

   たとえば、一人暮らしであれば、病気やけがで仕事ができなくなると即生活に困ります。ご夫婦のうち1人が働いている家庭であれば、その働き手が不幸にして亡くなったり重い病に倒れたら、少なくともパートナーが働き始めるまでの期間、生活費が必要でしょう。

   お子さまがいる家庭であれば、損失ではありませんが、お子さまの教育費としてまとまったお金が必要になります。大学まですべて公立学校に通わせても1000万円、私立では2000万円以上かかるともいわれています。

   自分にとって、起きたときにダメージの大きい損失は何か、一度紙に書き出して整理してみることをお勧めします。若くて元気のいい人は、あまり思い浮かばないかもしれませんし、心配性の人はたくさん並ぶかもしれません。

   その上で「運転には自信があるから、自動車保険は少なめでいい」とか、「いざ入院となったら個室じゃなきゃイヤだから医療保険を大目に」など、具体的に細かく掘り下げていくことになります。

   もちろん、無限に保険をかけるわけにもいきませんから、上限の目安が必要です。ファイナンシャルプランナーの皆さんのご意見によれば、手取り額の3~5%が一応の目安となるそうです。月収が手取り20万円なら、6000円から1万円を充てる計算です。その範囲内で、自分に必要な保険をいくつか組み合わせて買うのがいい、ということになります。

少なくとも「飢え死に」の心配はない

   なお、「世の中、先行き何が起こるか分からないから、できるだけたくさん保険に入っておいたほうがいい」という考えには、僕は賛成しません。人間、元気で働いてさえいれば、まずまず生活していけるものです。

   「仕事がいつなくなるか分からないではないか」と反論する人がいるかもしれませんが、日本ではその心配はあまりないというのが僕の見方です。なぜなら日本は今後、ものすごい勢いで働き手が減っていく状況にあるからです。団塊世代の200万人以上が毎年リタイアしていきますが、新社会人は毎年100万人ちょっとです。このままいけば、2030年には800万~900万人ぐらい労働力が足りなくなると予想されています。今の若い人にとって「仕事がなくて飢え死にする」心配はいらないと思います。

   ですから、書き出した損失の中から、どれが必要でどれがそれほど必要でないかを判断するときには、働くための健康が損なわれることを最も大きな損失と考えるべきではないかと思います。一人暮らしの若い人なら、難病や大事故、それによって仕事が続けられなくなる事態が最大のリスクとなるでしょう。その場合は、「就業不能保険」がいちばんだと思います。共働きでないカップルの家庭なら、万一に備えて、残されたパートナーの生活費として「死亡保険(生命保険)」を手取り年収の2~3年分用意しておくといいでしょう。お子さまがいれば、それに教育費分を上乗せして保障を用意しておくといいと思います。(出口治明)

出口治明
出口 治明(でぐち・はるあき)
ライフネット生命保険株式会社代表取締役会長。1948年三重県生まれ。京都大学卒業後、1972年に日本生命保険相互会社入社。ロンドン現地法人社長、国際業務部長などを歴任。 2008年、ライフネット生命保険株式会社を開業。著書に『生命保険とのつき合い方』(岩波新書)、『働く君に伝えたい「お金」の教養--人生を変える5つの特別講義』など。
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