その13 死後につける「戒名」 【こんなものいらない!?】

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   僕はまだ生きているけど、「釋宗道」という「戒名」をすでに持っている。

   わが家は浄土真宗なので、正しくは戒名ではなく法名と呼ぶのだが、生きているうちからこれがあると、死んだ時に慌てなくてもいいからだ。

  • 僕の法名。「まことに味わい深い法名です」との注釈がついている。
    僕の法名。「まことに味わい深い法名です」との注釈がついている。

家族に不愉快な思いをさせたくない

   「戒名」は、仏門に入った人に与えられる名前をいう。僕は10年ほど前、京都の西本願寺で仏弟子になる帰敬式(ききょうしき)に出てつけてもらった。寺に払ったおカネは1万円。今も代金は同じだそうだ。

   とはいえ、僕が死んだ時、この法名をぜひ使ってほしいとまでは思っていない。法名なしの無宗教の葬式でもいい。ただ、僕の死後、家族が法名料に何十万円も使ってほしくはない。金額をめぐる僧侶とのやりとりで家族に不愉快な思いもさせたくない。そこで、生きているうちに、安くつけておいたのである。

   四半世紀前、大阪に住んでいた僕の父親が死んだ。駆けつけると、喪主である僕の前に僧侶が二人、現れた。一人は父親の故郷である和歌山の寺から飛んで来た。もう一人は地元の寺の僧侶である。それぞれが言った。

「こちらの家は先祖代々、和歌山の私どもの寺の檀家です。法名は私がつけます。西本願寺から院号ももらってきています」
     「いえ、こちらが大阪に出てこられてからは、私どもの寺の檀家になられました。法名は私がつけたいです」

   二人は命名権? を譲らない。ちなみに、院号というのは、法名の上につき、これがあると、さらにカネがかかる。先走ったことをされて不愉快だったが、仕方がない。

   僕は二人に提案した。「じゃあ、上半分の院号は和歌山、下半分の法名は大阪のお寺がつけて下さい。予算はこれこれですから、折半して払います」。二人の僧侶は即座にOKした。向こうも落としどころを考えていたらしい。

戒名に地方相場、100万円近くかかった人も

   戒名、法名、そして宗派によっては法号と呼ばれるこの種のものは、死んでから慌ててつけると、とにかく高いものになる。

   母親を亡くした地方在住の知人女性に「戒名料はいくらでしたか」と尋ねたら、「この地方の相場ってものもありますしねえ」と、言葉を濁す。立派な戒名で、100万円に近かったらしい。寺からはあからさまには要求されないが、その地の「相場」からは逃れられないようだ。

   以下は全日本仏教会のホームページからの抜き書きである。

「高い戒名料をとられた、などという疑問や不満がお寺に対する不信感につながり、それが社会問題化しているのではないかと危惧しています」
     「なお、生前に戒名をいただくことも良いことです。その場合には、菩提寺の住職にお問い合わせください」

   全日本仏教会も戒名の不評は承知なのだ。生前に戒名をもらうようにも勧めている。ただ、それでどの程度、安くつくかは、まったく触れていない。日本の年間の死者数は130万人だから、一人当たりの戒名料が30万円なら年3900億円、50万円なら年6500億円の戒名市場である。仏教界も「死後の戒名」をできれば手放したくないのかもしれない。(岩城元)

岩城 元(いわき・はじむ)
岩城 元(いわき・はじむ)
1940年大阪府生まれ。京都大学卒業後、1963年から2000年まで朝日新聞社勤務。主として経済記者。2001年から14年まで中国に滞在。ハルビン理工大学、広西師範大学や、自分でつくった塾で日本語を教える。現在、無職。唯一の肩書は「一般社団法人 健康・長寿国際交流協会 理事」
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