2024年 4月 27日 (土)

「縁故」採用のなにが悪い! 社長、問題はそこじゃない(江上剛)

来店不要なのでコロナ禍でも安心!顧客満足度1位のサービスとは?

   中小企業で、採用担当をしています。ここ数年、大学や高校に求人情報を提供しながら人材を確保してきましたが、昨今の人手不足でなかなか応募がありません。待遇面もそれほど悪くないと思っています。そこで最近、縁故採用を考えるようになったのですが、これまでの経験やノウハウがありません。また、「縁故」のイメージがよくないせいか、社長も嫌っています(理由はよくわかりません)。江上さんは縁故採用について、どのようにお考えですか。

   縁故採用は悪くはないと思います。昔の企業はみんな縁故採用でしたからね。

  • 縁故採用は悪くない
    縁故採用は悪くない
  • 縁故採用は悪くない

ええっ!という有名人の子弟が働く、あるテレビ局

   どんな会社も表向きは「そんなことはしていない」と言っていますが、今だって中小企業、大企業を問わず、縁故採用はまかり通っているでしょう。

   以前、老舗出版社が、採用に関わる労力や費用の面を考えて、募集条件を縁故採用に限るとして話題をよんだことがありましたが、縁故採用の場合、その会社にあった水準の人材を集めやすいのです。紹介してくれる相手が、その会社のことを知悉していますからね。

   おそらく、イメージがよくないのは縁故採用だからではありません。問題は「縁故昇進」ですよ。

   入社してから能力もないのに縁故の影響で出世していく人がいます。これは最悪ですね。会社が内部から腐ってしまいます。

   私はあるテレビ局で仕事をしていますが、多くの有名人の子弟が働いていますね。ええっ! と思うような人の息子さん、娘さんがいます。

   たしかにある程度のチャンスは、他の一般の人より与えられるかもしれませんが、親の縁故を鼻にかけているような人はいません。皆、実力勝負で真剣に仕事に取り組んでいます。

   縁故には縁故なりのプレッシャーがありますから、仕事にも熱が入るのです。ところが、そこにさまざまな「評価」が加わり、その人の仕事ぶりを左右しはじめます。なかには、当然のように「勘違い」する人が出てくるわけです。

「縁故上司」にぶち当たった悲劇、ところが......

   以前、勤めていた職場の銀行でイヤな上司がいました。本当にイヤな奴で、いま思い出してでも虫唾が走ります。

   彼は、仕事はまったくできない、ケチ、部下を追い詰めるなど最悪で、取柄はいつも自分で自慢する「過去のA頭取の親戚」ということだけでした。

   周囲は、その言葉を忖度して、彼の無能を放置したものですから、ますます図に乗ってどうしようもありませんでしたね。

   順調に出世していたのですが、あまりにひどいものですから、支店で彼の部下であった私は、彼を夜の食堂に呼び出して文句を言い、怒鳴り合いの喧嘩をしました。彼は、驚き、慄き、私の人事評価を最低に引き下げましたが、私のことを理解してくれた支店長などに助けられたお陰で私は事なきを得ました。彼はその後転勤して行きましたが、結局のところ、やはり行く先々で問題を起してダメになりました。

   そんな経験があります。その時は、「縁故採用」の被害をまともに受けました。しかし、このようなことは例外でしょう。人手不足の今日、あなたの会社の仕事を理解してくれる人なら、縁故だろうが公募だろうが気にすることはありませんよ。

   いっそのこと、縁故大歓迎とでも打ち出せば、評判を呼ぶかも知れません。(江上剛)

江上 剛
江上 剛(えがみ・ごう)
作家。1954年兵庫県生まれ。早稲田大学卒業後、第一勧業銀行(現・みずほ銀行)入行。同行築地支店長などを務める。2002年『非情銀行』で作家としてデビュー。03年に銀行を退職。『不当買収』『企業戦士』『小説 金融庁』など経済小説を数多く発表する。ビジネス書も手がけ、近著に『会社という病』(講談社+α新書)がある。
姉妹サイト

注目情報

PR
コラムざんまい
追悼
J-CASTニュースをフォローして
最新情報をチェック
電子書籍 フジ三太郎とサトウサンペイ 好評発売中