2024年 4月 16日 (火)

Uberがもたらした格差 「トゥクトゥク」ドライバー残酷物語(森山たつを)

全国の工務店を掲載し、最も多くの地域密着型工務店を紹介しています

   カンボジアに来た人がみな文句を言うのが、その公共交通機関の貧弱さでした。

   電車はなく、バスの路線も頻度も異常に少なく使いモノにならない。タクシーは走っていない。仕方がないので、バイクの後ろに荷台をくっつけた「トゥクトゥク」か、2人乗りのバイクタクシーを使うしかありませんでした。

  • カンボジアの街を行く「トゥクトゥク」Uberの登場で失業するドライバーも……
    カンボジアの街を行く「トゥクトゥク」Uberの登場で失業するドライバーも……
  • カンボジアの街を行く「トゥクトゥク」Uberの登場で失業するドライバーも……

カンボジアでは、まず「右行け」「左行け」「まっすぐ」の単語を覚える

   この「トゥクトゥク」がなかなか厄介で、「言葉が通じない」「地図が読めない」「値段が意外と高い」の3拍子。英語があまり通じないため、カンボジア在住者が真っ先に覚えるのが、「右行け」「左行け」「まっすぐ」の3つの単語。目的地を言っても平気で明後日の方向に行くのはまだしも、カンボジア人が詳細な行き方を話しても余裕で間違えるので、根本的な理解度に難があると思われます。

   なかでも、一番厄介なのが、地図が読めないこと。多くのカンボジア人は、ドライバーであっても、地図の読み方を習っていません。そのため、地図を見せても住所を伝えても、さっぱりなので、最終的にスマートフォンでGoogle Mapを見ながら、右行け、左行けと指示することになるわけです。

   こんなレベルなのに、値段はそれなりに高く、初乗り料金がその辺のカンボジア料理屋の1食分くらいになります。しかも、悪質なヤツはぼったくり価格を提示したうえで、払わないとキレますから、もう最悪です。

   しかし、2017年夏、この状況が一変しました!

   Uberをはじめとする「配車アプリ」の登場です。アプリを立ち上げ、地図上で現在の場所と行き先を指定するだけで、数分後にタクシーが迎えに来てくれます。

    あとは、何も指示しなくても、勝手に地図を見て、目的地まで連れて行ってくれます。料金は距離と時間で勝手に算出され、クレジットカードから引き落とし。何も指示しなくていい。何も交渉しなくていい。そして、値段はトゥクトゥクと変わらないか安いくらい。 移動のストレスが100分の1くらいに減りました。

   実際にどのように使うかは、こちらの「カンボジアでのUberの使い方」をどうぞ。

Uberでカンボジアの街が一変した

    この配車アプリも、最初はひどいもんでした。地図上にポイントして呼んでいるのに、数分後には「お前はどこにいる?」と電話がかかってきます。どうやら地図が読めないようなのです。

    通りの名前とか、近くにあるランドマークとかで説明するのですが、たどり着けず、何度も電話がかかってきて、その度に説明して、3回目くらいであきらめて先方からキャンセルしてくる。そんなことが頻繁にあったため、しばらく使っていませんでした。

   それが2017年夏に使ってみると、電話がかかってくることは皆無。90%くらいの確率でスムーズに目的地までたどり着ける、という状況になっていたわけです。

   開発途上国に必要なのは、教育とテクノロジー。あと資本であるということが非常によくわかります。テクノロジーは、人々ができることを圧倒的に増やします。そして、そのテクノロジーを使うためにはちょっとの学習が必要になります。もちろん、ローテクの時代よりも必要な学習量は少なくて済みます。

   そして、そのテクノロジーを導入して、教育を行うために必要なのが資本です。Uberをはじめとする海外資本、それがもたらしたテクノロジーと、彼らが行ったであろうカンボジア人ドライバーへの教育が、一気にカンボジアの街を変えたのです。

   半面、この波に乗れなかったトゥクトゥクのドライバーは失業します。残酷ですが、こうした格差は増大していくわけです。

   日本では、Uberは割高のハイヤーしか呼べませんし、Uberのようなタクシーアプリは迎車料金を徴収されます。他の国でも、Uberへのタクシー業界からの反発はものすごく強いものがあります。

   ものすごく便利になったカンボジアを走りながら、今まで以上に暇そうにしているトゥクトゥクのドライバーを見ていると、前に進むことの素晴らしさと残酷さを感じます。

   それでも、我々は前に進んで行かなくてはならないんですが......(森山たつを)

森山たつを
海外就職研究家。米系IT企業に7年、日系大手製造業に2年勤務後、ビジネスクラスで1年間世界一周の旅に出る。帰国して日系IT企業で2年勤務後、アジア7か国で就職活動をした経験から「アジア海外就職」を多くの人と伝えている。著書に「アジア転職読本」(翔泳社)「はじめてのアジア海外就職」(さんこう社)がある。また、電子書籍「ビジネスクラスのバックパッカー もりぞお世界一周紀行」を連続刊行中。ツイッター @mota2008Google+、ブログ「もりぞお海外研究所
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