2024年 4月 19日 (金)

経営者の意識希薄!「弱者保護的」な姿勢が日本のダイバーシティをダメにする(大関暁夫)

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中小企業で成功する「女性登用」そのヒケツは......

   一方で、それとは正反対の事例も現実には存在しています。ローカル中堅不動産デベロッパーのK社のHさんは40代半ばの女性取締役です。不動産業界は古くから男性社会で知られていますが、Hさんは開発企画、地権者折衝、営業、施工会社管理等々、あらゆる面で社長の右腕として活躍されており、一部では次期社長の呼び声も聞かれるほどの存在です。もともと事務職で入社した彼女を、大抜擢したのは同社T社長でした。

「最初は人手不足からやむにやまれず彼女を説得して営業に出したのです。女性特有の人当たりのよさがあるので、うまくいったら儲けものという程度の考えでした。ところがびっくり。彼女が表だって行動することで、会社としての交渉事は以前よりもうまくいくは、難攻不落の相手がこちらの申し出にOKを出してくれるは、素晴らしい力を発揮してくれました。今や当社の大黒柱です。彼女という手本ができたので、その後採用した女性社員も現場で活躍中です。おかげさまで、業績も右肩上がりに伸びています」

   じつはダイバーシティとは、本来は大企業が取り組んでいるような弱者保護的な消極的姿勢ではなく、「多様な人材の特性を活かして積極的に活躍させよう」ということにあります。つまり、T社長が考えた「女性特有の人当たりのよさを活かす」という考え方は、まさしくダイバーシティ的発想そのものなのです。

   女性の活用はあくまで入口かなと。経営者もあるいは本人も気がついていない適材適所の人材運用は、まだまだあるのだと思います。出発点は人手不足の中小企業だからこその苦し紛れであったかもしれませんが、社内人材の埋もれた特性に気が付く大切さを痛感しました。

   本来のダイバーシティは、意外なところで実践されていました。T社長の言葉は、超売り手市場に苦しむ中小企業の人手不足解消のヒントであると同時に、ダイバーシティ実践を標榜しつつも「男性並み活躍期待」という暗黙の基準で形式的な女性登用に終始しがちな大企業にもぜひ聞いてほしい一言です。(大関暁夫)

大関暁夫(おおぜき・あけお)
スタジオ02代表。銀行支店長、上場ベンチャー企業役員などを歴任。企業コンサルティングと事業オーナー(複合ランドリービジネス、外食産業“青山カレー工房”“熊谷かれーぱん”)の二足の草鞋で多忙な日々を過ごす。近著に「できる人だけが知っている仕事のコツと法則51」(エレファントブックス)。連載執筆にあたり経営者から若手に至るまで、仕事の悩みを募集中。趣味は70年代洋楽と中央競馬。ブログ「熊谷の社長日記」はBLOGOSにも掲載中。
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