2018年 8月 20日 (月)

天下りトップの発言に「へへえぇぇ」 不祥事「体質」の解消に必要なこととは?(大関暁夫)

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   地銀最大手の横浜銀行とともにコンコルディア・フィナンシャルグループの傘下にある第二地銀、東日本銀行に業務改善命令が出されました。

   つい3か月ほど前にも福島銀行に、同じく業務改善命令が出されていますが、こちらは業績不振を理由としたもの。東日本銀行へのそれは、大量の不適切融資が発覚したことを理由とするもので、免許業務である銀行にとっては最も由々しき事由であると言えます。

  • 組織では「ヨコ」のコミュニケーションが大事です!
    組織では「ヨコ」のコミュニケーションが大事です!

鶴のひと声!「利益優先」のなれの果て

   東日本銀行は法人融資に際して、必要資金以上の金額を融資し余剰分を強制的に定期預金で預けさせていたほか、さらに問題なのは融資に際して理由のない不適切な取扱手数料を徴求していたことです。

   その手数料金額たるや、総額43億円超。それが1、2か店でのことではなく、大半の支店で同じような事例が見つかったのだと言いますから、完全に組織ぐるみの悪事であると判断され、今回の発令に至った模様です。

   これらの不正融資案件は2015年以降に集中しているそうで、これは14年11月に横浜銀行との経営統合が合意に至り、16年のコンコルディア・フィナンシャルグループの発足に向けて動き出した時期と符合します。

   新聞報道によれば、「規模、収益で横浜に見劣る同行が、統合計画を自行に有利にすすめるために、無理な利益の積み上げをはかった」と言われており、組織ぐるみの不正融資は当時の同行トップを含めた経営幹部の「利益積み上げ最優先」指示によって行われてきた、と捉えることができそうです。

   経営トップが自己のプライドや保身のために、計数目標として無理な数字の達成を部下に押し付け、それが結果的に組織ぐるみの不正につながるという例は、オリンパス光学、東芝、さらには直近で今回の件と同じ銀行界でのスルガ銀行の例など、トップがワンマン気質で組織内発言力が強い組織に多い不祥事の原因であるように思えます。

   オリンパス光学や東芝のような名門企業では、組織サイズの大きさや自社の栄光の歴史に裏打ちされそれ相当にトップの発言が持つ強制力は強くなります。スルガ銀行は、銀行には珍しいオーナートップが指揮を執る企業であり、当然その発言力は強いです。

   今回の東日本銀行はどうかといえば、問題融資発生時のトップは旧大蔵省幹部の天下りです。監督官庁出身のエリートトップと第二地銀の叩き上げのプロパー行員とでは力の差は歴然であり、やはりトップの発言が持つ強制力はかなり強いと考えられます。

「タテ」と「ヨコ」のコミュニケーション

   一方、組織内におけるコミュニケーションは、その種類の違いによって強制力に差があります。すなわち組織コミュニケーションにはタテの関係とヨコの関係、すなわち上司と部下の関係と、職位に上下に違いはあっても直接指示命令のやりとりをする間柄ではない同僚の関係があり、それぞれのコミュニケーションが持つ強制力は当然異なります。

   ヨコの関係におけるコミュニケーションでは、何か依頼事項を受けた場合には、「この依頼を自分がなぜ受けるのか」「この依頼内容に正当性はあるのか」などを考えたうえで、依頼を受けるか否かを判断し、受けるあるいは断るの判断を返すことになります。

   一方、タテの関係におけるコミュニケーションでは、上からの依頼事項に関してはほぼ無条件に受け入れるのが常であり、それが「命令」という呼び名になるわけです。

   「命令」は組織統制上従うことが大原則であり、上司の立場が強ければ強いほど、その効力は増して逆らうことが難しくなります。結果として、前述のような発言力の強い上司から間違った「命令」が出された場合にもその「命令」にも従わざるを得ず、この間違った「命令」に基づく不祥事が後を絶たない、ということになるのです。では、どうしたらそれを防止することができるのでしょう。

ワンマン経営ほど大きい「命令型」不祥事のリスク

   米国でシリコンバレーを拠点としてEV(電気自動車)に特化した新世代の自動車メーカーとして発展を続ける、テスラ社のイーロン・マスクCEO(最高経営責任者)が、インターネットで公開した社員に送ったとされるメールに次のようなくだりがありました。

「テスラでは、会社全体の利益のために働くことがすべての社員の義務だと思ってほしい。そのためには、誰が誰にコンタクトをとっても構わない。もちろん私に直接でも構わない。他人の許可を待つことなく必要な相手にコンタクトしてほしい。確実に仕事を正しい方向進めるために、コミュニケーションを阻害するサイロをつくってはならない」

   すなわち、マスク氏は従来のタテのコミュニケーションを中心とした大企業的組織管理を否定こそしないものの、その命令者が過ちを犯す危うさも認識したうえで、ヨコのコミュニケーションの重要性を確実性という観点から強調しているのです。

   タテのコミュニケーションの確実性を高めるのは、取りも直さずヨコのコミュニケーションによるチェック機能の発動に他なりません。ヨコのコミュニケーションの有効性を重視した、新世代経営者ならではの新世代の組織管理であると言えるでしょう。

   まずリーダーが理解すべきは、自身も含め「タテのコミュニケーション=命令」は組織において決して万能ではなく、ワンマン体質が強くなればなるほどリスクも大きくなる、ということ。

   東日本銀行のような命令型不祥事の再発を予防する観点のみならず、あらゆる誤った経営判断を回避する観点から、組織におけるヨコのコミュニケーションを活発にしかつ重視するステラ社の管理に学ぶべき企業は多いのではないかと思います。(大関暁夫)

大関暁夫(おおぜき・あけお)
スタジオ02代表。銀行支店長、上場ベンチャー企業役員などを歴任。企業コンサルティングと事業オーナー(複合ランドリービジネス、外食産業“青山カレー工房”“熊谷かれーぱん”)の二足の草鞋で多忙な日々を過ごす。近著に「できる人だけが知っている仕事のコツと法則51」(エレファントブックス)。 連載執筆にあたり経営者から若手に至るまで、仕事の悩みを募集中。趣味は70年代洋楽と中央競馬。ブログ「熊谷の社長日記」はBLOGOSにも掲載中。
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