2024年 4月 19日 (金)

トップに君臨「絶対的権力者」 「辞めればいい」という話じゃないこと、おわかりか!(大関暁夫) 

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   シェアハウス向け融資に端を発した、融資資料の改ざんなどの不正融資問題の拡大を受けて、スルガ銀行のオーナーで会長の岡野光喜氏が辞任する意向を固めたとの報道がありました。

   岡野氏は創業家出身で30年以上にわたって銀行経営を担ってきました。今回の一件が、全83か店中69か店で不正が見つかるなど、組織ぐるみの不祥事であると考えられることから、その責任をとった形になります。

  • 組織運営上のリスクを摘むには、どうすれば……
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トップが「黒い」と言えば黒になる

   オーナー企業におけるトップの影響力は強大なものがあります。しかも、30年という長期にわたり実質的な経営権を持ってトップに君臨してきた人物は、いわゆる組織内で「天皇」と言われるような存在であり、本人の意思に関わりなく結果として絶対的な権力を持ってしまうのは疑いのないところです。

   社員は皆、絶対権力者の顔色をうかがうようになるのは当たり前。よく言われる「白いものでも、トップが『黒い』と言えば黒になる」というような状況になるのも、当然の流れでしょう。

   この問題は組織の私物化とは似て非なるものですが、絶対権力者が率いる組織マネジメントの「陰」の部分とでも言うべき重要な問題をはらんでいます。

   権力者の存在が絶対的になっていけばいくほど、知らず知らずにイエスマンばかりが増え、自分の発言や意向がすべて正しいものとして組織内で闊歩する。中小企業を中心とした大半のオーナー企業は、このような組織管理状態にあるのが一般的ですが、株の全部または大半をオーナーが所有する私的企業であるならコンプライアンスに触れない限り、問題視されるようなことではないのかもしれません。

   しかし、上場企業。しかも公共性の高い銀行となれば、話は別です。

   絶対的権力者の意向を汲んで(直接指示の有無に関係なく)誤った方向に進み、株主や取引先に多大なる迷惑をかけていたという点から、今回のオーナー兼会長である岡野氏の辞任は至極当然のことであると思われます。ただ、この問題。果たして絶対的権力者の辞任で終息に向かうものなのでしょうか――。

新たな独裁者を生み出しかねないワケ?

   同じ不祥事がらみで最近業務改善命令を受けた銀行に、東日本銀行があります。同行はオーナー系ではありませんが、監督官庁である旧大蔵省からの天下りトップが頂点に君臨する絶対権力者がいる組織で、その意向を汲んだ無理な収益増強策が不祥事を生むことになりました。

   監督官庁の元幹部キャリア官僚は第二地方銀行という天下り先においては、誰も面と向かって意見できるような存在ではないからです。その意味では、絶対権力者をトップにいただくスルガ銀行と権力構造や組織風土は似た環境にあったと言えるでしょう。

   東日本銀行の不祥事発覚と業務改善命令の発令を機に、再発防止および組織風土の抜本的改革をはかるために、同行の持株会社であるコンコルディアフィナンシャルグループも含めた旧大蔵省OBの排除と天下りトップ就任の廃止を断行しました。

   監督官庁である金融庁主導による英断であったということは、想像に難くないとことです。

   組織風土を根本から変えることは本当に難しいことです。大蔵省OBを完全排除した東日本銀行においても、果たして思惑どおりの組織風土の改革が進むのかは現時点では何とも申し上げられません。

   仮に絶対的権力者たるトップがいなくなろうとも、長年イエスマンの集まりとして生きてきた組織が、果たしてワンマン管理に頼らない主体的な組織運営に移行することができるのかと言えば、それは未知数だからです。

   また新たな独裁者を生み出さないとも限りません。すべては一人ひとりの意識改革にかかっていると言えそうです。

イエスマンの蔓延が組織をつぶす

   その意味からは、スルガ銀行はオーナー会長が退いただけでは、長年染み付いた組織風土が変えられるとは到底思えません。

   オーナー家が株主として存在し続けるなら、後継トップの指名などに影響力を持ち続けることも可能です。オーナー家を株主からも排除し、経営に関わる一切のフィールドから排除しなければ、組織内で長年絶対的権力者に頼り切ったイエスマンたちが自立できるとは思えないからです。

   そんなことを思うと、スルガ銀行の問題は、根本的な解決までにまだまだ先が長そうな感じがしています。

   ところで中小企業のオーナー経営者は、この事案から何を学ぶべきなのでしょうか。先も申し上げたように、非上場の私的企業であれば、コンプライアンス上で問題ない範囲でのオーナーの独裁経営は問題視されるようなことではありません。しかし、独裁経営下ではイエスマンが増えるということは上場、非上場問わず同じであり、経営者自身の組織内での存在感が強ければ強いほど、その発言や意向が盲目的に組織内で受けられるリスクがあるということは、認識をしないといけない部分でしょう。

   自身の周りにイエスマンが多いと感じられる経営者は、スルガ、東日本の二つの銀行に見るような組織運営上のリスクを認識して、まずは組織内で意見することが褒められ、黙っている者は評価されないという風土をつくるよう自らが動くことが肝要かと思います。

   イエスマンの蔓延が組織をつぶすのは、企業の大小にかかわらないという認識を持つことが何より大切です。(大関暁夫)

大関暁夫(おおぜき・あけお)
スタジオ02代表。銀行支店長、上場ベンチャー企業役員などを歴任。企業コンサルティングと事業オーナー(複合ランドリービジネス、外食産業“青山カレー工房”“熊谷かれーぱん”)の二足の草鞋で多忙な日々を過ごす。近著に「できる人だけが知っている仕事のコツと法則51」(エレファントブックス)。連載執筆にあたり経営者から若手に至るまで、仕事の悩みを募集中。趣味は70年代洋楽と中央競馬。ブログ「熊谷の社長日記」はBLOGOSにも掲載中。
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