2018年 11月 22日 (木)

転職理由はさまざまあれど、「やりたいことがない」では話にならん!(大関暁夫)

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   40代半ばになる家内の甥Kくんが、転職を考えていると私のところにはじめて相談に来たのは3年半ほど前のことです。

   その折に転職希望の理由を聞くと、

「今の会社の殊遇に不満がある」
「都内の嫁さんの実家の敷地内に引越しをする予定があり、勤務地をその近くに移したい」
「待望の子供が生まれて、学校にあがるまでにある程度名の通った企業に勤務したい」

など、どれも40代半ばの転職に納得性を持たせるには貧弱なものばかりでした。

  • 「まかせてください」!と胸を張れること、ありますか?
    「まかせてください」!と胸を張れること、ありますか?

後戻りできない40代の転職

   「やりたいことは何?」という質問を投げかけてみると、「うーん。特に思いつかない...... ですねぇ」と、これといってやりたいことがあってその方向に進みたい、という意志は感じられなかったのです。

   若い頃の転職なら後先考えずとも何事も経験と捉えることも可能ですが、40代ともなれば話は別です。

「40代の転職は難しい。転職してしまってから自分に合わない仕事だと気がついても後戻りはできないし、仮にその先に次を探すのだって至難の業。自分がやりたいことがやれるなら、多少のことは我慢もできる。その意味では、まずは自分のやりたいことが何なのか、よく考えたほうがいい」

とアドバイスしました。

   世界規模の世論調査機関として知られる米国のギャラップ社は、働く人たちの幸福度に関する調査を50年にわたって世界150か国で継続的に行っています。

   それによれば、人の幸福度に最も大きな影響を及ぼしているのは報酬や勤務先企業の知名度ではなく「仕事に情熱をもって取り組んでいるかどうか」だそうで、「仕事の幸福度が高いと人生の幸福度が2倍になる」との衝撃的なレポートがなされています。

   じつは仕事選びは、日々の生活やその人の人生の満足度において、とても重要なことであるとわかります。

「幸せです」と、転職後に胸を張っていますか!

   私自身、40代半ばで22年勤めた銀行を辞めて独立したわけですが、その最大の理由となったものは「やりたい仕事へのシフト」でした。

   銀行員としておカネを融資するという形ではなく経験・知識を活かしてもっと企業の本業部分のお手伝いをしたいというのが、その当時、感じていたフラストレーションであり、収入や将来にわたる安定性といったことを最優先で先行きを考えていたなら、決して独立を決心することはなかったでしょう。

   結果的には、あの時に銀行を辞めてよかったことは間違いなく、私自身も先の調査のとおり、「やりたいことをやれているから、今のほうが断然、幸福度が高い」と胸を張って言えます。

   私がそんな結果オーライな転職経験者(表向きは独立ですが、自分で立ち上げた会社への転職ではあります)であることから、Kくんは私のところに転職相談に来たわけで、彼はもしかすると私が「今の会社が嫌ならすぐにでも辞めたほうがいい」といった感じに、無条件に転職の背中を押してくれることを期待していたのかもしれません。

   しかし、結果的に「やりたいことをハッキリさせて、それを実現できる方向で転職は考えるべき」という、彼にとってややハードルの高いことを私に言われて、少し戸惑った様子も感じられました。

   その後、彼は折に触れ、転職活動の報告やら「やりたいこと探し」の一環として資格や特殊技能の勉強をしている話やらをしに、私のところに遊びに来るようになりました。

   その間、彼の話を聞く限りにおいては、まだまだ「やりたいこと」が見えないようで、時々応募してみていた転職応募も思うような結果は得られていない様子でした。

   そんなある日、私自身の先生でもあるコーチングのベテラン指導者Mさんと人材活性化について意見交換する機会があり、「ミッションは心を喜ばせ、人をやる気にさせる」という話をうかがいました。

   内容をかいつまんで言うと、人それぞれには持って生まれたミッションがあり、それを知りそれをおこなうことが自身を最大限に活かし、充実感や幸福感を味わうことにつながるのだということでした。

アナタが頼られてうれしいことはなんですか?

   なるほど、と私自身にも十分思い当たることがあったので、さっそくこれをKくんにぶつけてみようと思いました。自分がやったことで人から頼られることが嬉しかったことや、この仕事は自分じゃなくちゃダメだなと胸を張れるようなこと、などがじつはミッションに繋がる仕事なのだとMさんから聞いていたので、Kくんに自分が嬉しかったり誇らしかったり自分の存在感が感じられた仕事ってなんだろうか、と簡易コーチングをしてみたのです。

   「やりたいこと」の質問には答えに窮していた彼が、この問いかけには驚くほどすんなり「機械の整備とか修理とかそういうの、けっこう得意だし、そのことで周囲から頼りにされたりするのはすごく嬉しいです」と返答してくれました。

   彼の転職のポイントが明確に見えました。彼にMコーチの話をじっくりしたうえで、機械整備、機械いじりを自身のミッションにおいて転職活動を再展開してみるようにアドバイスしたのです。

   これまで、どうしても勤務地や会社の知名度などにしばられて3年以上もうまくいかなかった彼の転職ですが、「機械整備、機械いじり」が得意ということを前面に工場などでの勤務にしぼって活動を再展開したところ、半年もしないうちによい先が見つかったようでした。知名度は低いですが上場企業で、給与は今より若干低くなりますが、「現場の複数セクションから、あなたのような人材のニーズがあります」と言われ、「今までにないやりがいが感じられる」と転職を決めたと、先日イキイキとした表情で報告がありました。

   Kくんの場合はミッションの認識が思うように進まない転職活動というシーンで役立った例ですが、職場の中でも個別社員の適材適所に疑問を感じるような場面では、ミッションを聞き出す「簡易コーチング」による配置替えが、本人および組織の活性化に役立つのではないかと思います。

   あなたは、どんなことで人に頼られると嬉しいですか?(大関暁夫)

大関暁夫(おおぜき・あけお)
スタジオ02代表。銀行支店長、上場ベンチャー企業役員などを歴任。企業コンサルティングと事業オーナー(複合ランドリービジネス、外食産業“青山カレー工房”“熊谷かれーぱん”)の二足の草鞋で多忙な日々を過ごす。近著に「できる人だけが知っている仕事のコツと法則51」(エレファントブックス)。 連載執筆にあたり経営者から若手に至るまで、仕事の悩みを募集中。趣味は70年代洋楽と中央競馬。ブログ「熊谷の社長日記」はBLOGOSにも掲載中。
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