2018年 12月 14日 (金)
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今、社長が最も認識すべき言葉「教科書を信用するな!」 その真意はどこに!(大関暁夫)

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   本庶佑京都大学名誉教授がノーベル医学生理学賞を受賞しました。注目を集めているのは当然、免疫療法によるガン治療という本庶氏の研究成果であることに間違いないのですが、同時に大いなる研究成果を得るに至った氏の哲学、あるいは信念を表す言葉もまた大変注目を集めているように思います。

   なかでも、特に注目を集め各所で取り上げられている「本庶語録」が、「教科書を信用するな!」という一言です。ノーベル賞報道直後にお目にかかった、大手企業の下請けとして長年技術開発に携わっている中小製造業のM社長も、この言葉を大絶賛していた一人です。

  • 教科書的な既成概念を捨てることは大切だけど……
    教科書的な既成概念を捨てることは大切だけど……

開発者を「勇気づける」ノーベル賞・本庶氏の一言

「素晴らしい一言です。学校で教わることにばかりこだわっていたら、未知の領域には決してたどり着くことはない、ということ。我々ごとき中小企業でも、開発業務の端くれにいる立場からは、本当に勇気づけられる思いです。この視点は、現代の研究開発の世界ではもとより、ビジネス領域全般においても当てはまることなのではないでしょうか。氏の言葉を聞いて改めて、このIT化時代においては技術領域に限らず新しいビジネスモデルを携えてビジネスシーンに登場する若手起業家は皆、既成概念に囚われない新たな発想の持ち主ばかりであると痛感させられます。今こそ最も認識すべき言葉かもしれません」

   確かに、過去に日本の技術が世界に認められるようになった背景には、既成の技術力を日本人的な勤勉性を武器に磨きに磨いて世界最高峰を極めてきた。そんな歴史があるように思います。

   しかし、現在世界を席巻する代表格である「GAFA」と呼ばれる、Google、アップル、フェイスブック、Amazonは皆、教科書的な既成概念を捨てて新しく自由な発想からスタートすることで新たなビジネスモデルを生み出し、四半世紀前には考えもしなかった生活プラットフォームを生み出すことで、人々の生活に潤いを与えるビッグビジネスをつくり出したと言えるのではないでしょうか。

言葉が曲解されることもある

   本庶氏のノーベル賞受賞は医学の世界における偉大なるチャレンジでしたが、その信念の根底にある考え方は、まさに今の時代を生き抜くための大いなる真理を教えてくれているかのように思えます。

   そんな話の展開でM社長とやりとりしていると、突然社長は賞賛から離れて一抹の不安を投げかけてきました。

「ただ少し心配なのは、若い連中がこの話を聞いて自分の都合のいいように解釈しはしないかということ。それで、まだ社員には『みんな、本庶先生に学んで、教科書に囚われず自由な発想で仕事に臨もう!』とは言い兼ねているのです。どう思いますか?」

   社長が言っていることは、本庶氏の「教科書に囚われるな!」という言葉は曲解されると、ルールやマニュアルになど無視してでも自由な発想を優先して仕事に取り組めと言っているかのように誤って捉えられかねない、ということのようでした。

   誤解を生まないためのポイントは、本庶さんの言葉にある「教科書」は決して否定されるべき存在はないということを、しっかりと理解させることにあるのではないか、と私は思いました。

   すなわち、「教科書」や会社でそれにあたるルールやマニュアルは、基本を身に付けるうえで大切なことであるというのは、厳然たる事実に相違ありません。問題は、「囚われるな」と言っている、この扱いをどのように理解するか、なのです。

   ようするに、「教科書」はバカにしないでしっかり身に付けることが大切。でも、いつまでも「教科書」にばかり頼っているのではなく、その内容をマスターしたらそれをベースにして自分なりの発想でアドリブを試みてみなさい、ということになるのではないでしょうか。

「本庶語録」は世阿弥の教えにも相通じる真理

   室町時代の能の大家である世阿弥は、弟子たちに自分の力量の磨き方、自己成長のさせ方に関して、「守・破・離」という言葉で教え説いたと言われています。

   「守」とは、師匠の教えをそのまま守り、基礎をしっかりと身に付ける第一段階のこと。すなわち、ここが「教科書」どおりに学ぶ段階です。第二ステップが「破」。「破」とは、「守」で基礎固めができたらそれをただ繰り返すのではなく、教えにはない自分なりのやり方を加えていけと教えました。

   それがうまく機能し、基礎の上に自分なりのやり方を加えて成長できたならば、「離」として師匠の下を離れ、一本立ちして自分が弟子を指導する立場になれるのだと。

   まさしく「教科書を信じるな!」の精神は、古く世阿弥の教えにも相通じる真理なのでないかとも思えるところです。

「なるほど、世阿弥もいいことを言っているのですね。そうなのですよ。うちの若い連中はマジメで素直で、指導や教えにはしっかり従うのだけど、冒険しないというのかそこから脱皮しようという向上心がないのですよ。だからこそ、この機会に本庶先生の言葉を皆に意識させたかったわけで。とてもいいヒントをいただきました。世阿弥の教えを加えて、若い社員にハッパをかけさせてもらいます」

   「管理職になりたくない」という人が爆発的に増えているという、あらゆる面で恵まれすぎた今の時代。M社長と同じくマジメで素直だけど決して冒険をしない、そんな若手社員を抱えた会社はけっこう多いのではないでしょうか。

   本庶氏の一言は、今の世の若者に対する厳しい叱咤だったのかもしれません。
(大関暁夫)

大関暁夫(おおぜき・あけお)
スタジオ02代表。銀行支店長、上場ベンチャー企業役員などを歴任。企業コンサルティングと事業オーナー(複合ランドリービジネス、外食産業“青山カレー工房”“熊谷かれーぱん”)の二足の草鞋で多忙な日々を過ごす。近著に「できる人だけが知っている仕事のコツと法則51」(エレファントブックス)。 連載執筆にあたり経営者から若手に至るまで、仕事の悩みを募集中。趣味は70年代洋楽と中央競馬。ブログ「熊谷の社長日記」はBLOGOSにも掲載中。
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