2018年 11月 17日 (土)

その65「異質」な人への「不寛容」 「こんなものいらない!?」(岩城元)

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   写真は、東京都の銀座4丁目の交差点から東銀座の歌舞伎座方面に向かう地下歩道である。端から端まで、長さは100メートルほどだろうか。幅の広い歩道は上り線と下り線のように、ふたつに分かれていて、境目の幅1メートル弱が小高くなっている。

   その上に赤れんがの柱がほぼ3メートルおきにあり、柱と柱の間には石の塊や犬、猿、鶏などの彫刻風のものが置かれている。植木鉢も並んでいて、一見、趣のある地下歩道である。

  • 東京・銀座の地下歩道
    東京・銀座の地下歩道

地下歩道のオブジェはホームレス撃退用か?

   この歩道ができたのはほぼ30年前で、僕が近くの新聞社に勤めていた頃である。最初は石の塊や彫刻風のものは置かれていなかった。赤れんがの柱と柱の間は空間があるだけだった。

   やがて、ホームレスの人たちがやってきた。柱と柱の間の小高い部分は段ボールの住み家を置くのに申し分のない場所である。近くにトイレもある。

   そのうちに、この小高いところには石の塊や彫刻風のものが並べられた。脇には植木鉢も加わった。これらが邪魔で、ホームレスは住み家を置くこともままならず、地下歩道から姿を消していった。

   似たことは、同じ東京都の新宿駅西口と都庁を結ぶ地下歩道でもあった。これも随分と前のことだが、やはり地下歩道の脇は段ボールの住み家を置くにはちょうど良かったので、ホームレスが住み着きだした。やがては、そこにも植木鉢が置かれたりして、連中は追い出されてしまった。

   確かに、街のど真ん中にホームレスが住み着いていたら、景観はよくない。「異質」なものは、別のところへ行ってほしいという役所の気持ちも分からないではない。でも、「嫌がらせ」としか言えない方法で追い出すのはいかがなものか。

   「優しさ」が欠けている。あまりにも「不寛容」である。

百貨店が大事なのは「買い物」してくれる人

   次の写真は東京都内の大手百貨店の入り口付近である。長さ10センチから25センチほど、いろんな長さの鋼の棒が下から上に向かって突き出ている。こんな光景がこの百貨店の1階部分を取り巻いている。

東京都内の百貨店の入り口付近
東京都内の百貨店の入り口付近

   これもさっきの地下歩道と似て古い話だが、この百貨店が大改装した折には、鋼の棒はまったくなかった。ここに腰を掛けられた。ちょっと休みたい折には助かったし、待ち合わせの場所としても、うってつけだった。ところが、いつの間にか、鋼の棒が取り付けられ、座れなくなった。

   百貨店にとっては、店内で買い物をしてくれる人こそが大切で、店の外で、しかも百貨店の建物に腰掛けている連中は「異質」な存在なのだろう。そんな人たちを嫌って設けた鋼の棒だと思うが、「不寛容」が過ぎるのではないか。

   この百貨店に隣接して、おしゃれな店が集まっているビルがある。ここの1階部分の外回りには百貨店のような鋼の棒がないので、腰を掛けられる。ところが、「緊急時にシャッターが降下します。お掛けにならないように」との表示がある。やはり腰掛けがイヤなのだろう。脅されているみたいである。

   「異質」なものを真っ向から拒絶し、排除する。世間にはそんな「不寛容」がはびこっていないだろうか。それが世の中をギスギスしたものにしてしまっている。そういう気がするのである。(岩城元)

岩城 元(いわき・はじむ)
岩城 元(いわき・はじむ)
1940年大阪府生まれ。京都大学卒業後、1963年から2000年まで朝日新聞社勤務。主として経済記者。2001年から14年まで中国に滞在。ハルビン理工大学、広西師範大学や、自分でつくった塾で日本語を教える。現在、無職。唯一の肩書は「一般社団法人 健康・長寿国際交流協会 理事」
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