2018年 12月 15日 (土)

「生まれ変わっても社長を!」中小企業の社長業が病みつきになるワケは?

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   「社長さんはつらいよ」――。と思いきや、意外や意外、社長は一度やったら病みつきになるほどおもしろい職業らしい。ただし、大企業ではなく、中小企業の社長さんの話だ。

   アクサ生命がまとめた「社長さん白書2018」によると、「生まれ変わってもこの会社の社長をする」という人が多いのだ。苦労が多いはずの中小企業でどうしてなのか?

  • 中小企業の社長は幸せ?
    中小企業の社長は幸せ?

後継者難、人手不足...... 悩みがつきないはずなのに

   この「社長さん白書」は、2004年から全国の中小企業経営者を対象に行なっており、2018年で7回目。今回は特に「健康と悩み」と「老後(社長リタイア後)の生活」を中心に調べた。

   近年、社員の健康を重要な経営資源ととらえ、積極的に検診を受診させたり、禁煙対策に取り組んだりする「健康経営」が注目されている。「健康経営」という言葉を知っているか、また「健康経営」に取り組んでいるかを聞くと、「今回初めて知った」が42%、「内容は知らないが聞いたことがある」が20%、「内容は知っているが取り組んでいない」が23%、「内容も知っており、取り組んでいる」が13%だった。

   まだ定着していないが、2017年と比べると、「今回初めて知った」が13ポイント減り、「取り組んでいる」が6ポイント増えているという。着実に浸透しているようだ。J-CASTニュース会社ウォッチ編集部の取材に応じたアクサ生命の広報担当者は、

「中小企業は、人口減少と高齢化で人手不足が深刻になっています。どうやって従業員をつなぎとめ、雇用を確保するかが喫緊の課題です。社長さん白書からは、ホワイト企業として健康経営に取り組まないと事業継続にも支障をきたすのではないかと気づきはじめていることが調査結果からもみることができます」

と指摘する。

   その社長さんたちの悩みで一番大きいのが後継者問題。バトンタッチ(事業継承)時期を決めているかどうかを聞くと、「決めていない」が約半数の48%、「決めている」が52%だった。

   「決めていない」理由で一番多いのが「後継者が見つからない」「育っていない」「継がせたくない」「本人の同意が得られない」のいわゆる「後継者難」で、合計で48%中25%あった。「決めていない」人は5年前の2013年より4ポイント増えており、年々後継者難が進んでいる。

   また、バトンタッチの時期を決めている人でも、その時の自分の年齢が「60~69歳」より「70~79歳」を選ぶ人の割合が、5年前の2倍になった。それだけ高齢になっても社長業を続ける人が多くなっているというわけだ。

   自分の健康問題も悩みのタネ。がんや認知症、心臓病など重い病気にかかって働けなくなった場合、8割以上の81%が「取引先や金融機関からの信用が低下する」「重要な経営決定ができなくなる」「社内が動揺する」など、「経営に深刻な影響がでる」と答えている。おちおち治療に専念できない状態だ。

老後を楽しむ人が日本は世界で最低レベル

   興味深いのは、これだけ社長業に悩みや不安がありながら、社長を勇退した後、何をしたいかを聞くと、「働き続けたい」と答えた人が35%いた=図表1参照。「社長は退いても会社に残って仕事を続けたい」という人が19%、「別な事業を始めたい」、つまり新会社をつくり、また社長をしたい人が10%いた。なかには「勇退したくない。このまま社長を続けたい」という執念を示す人も6%いた。

社長退陣後に何をしたいか(図表1 アクサ生命「人生100年の歩き方」から)
社長退陣後に何をしたいか(図表1 アクサ生命「人生100年の歩き方」から)

   「趣味を楽しみたい」とか「一生懸命働いてきたので、のんびりしたい」「ボランティアをしたい」などと答えた人は62%だった。

   アクサ生命の広報担当者はこう説明する。

「欧米の人は退職を労働から解放されて自由になれる時として、あたかも贖罪から解放されるかのようにリタイア後の生活を楽しみにしている人が多い。それに比べ、日本は働くことを美徳ととらえ、退職するとスイッチが切れて、人生が終わったように悲観的に考える人が多い傾向にあります。特に社長さんは事業一貫という人が多いので、生涯現役という意識がことに高いのではないでしょうか」

   アクサ生命が2008年に世界26か国の「退職の意識調査」を実施したところ、日本人は退職をポジティブにとらえず、マイナスイメージに考える人の割合が一番多かった。

大企業社長より中小社長が長生きするワケは?

   ところで、自分が理想とする退職の年齢から、介護を必要とせず元気でいられる健康寿命までの間を「ボーナスピリオド」(ごほうび期間)と呼ぶ。「退職後に人生を積極的に楽しむ期間」というわけだ。欧米では50代を理想の退職年齢とする国が多いが、日本は68歳前後。このため、15か国で「ボーナスピリオド」を比較すると、日本は最も短い9年間しかなく、一番長いオーストラリアの23年間の半分以下だったという。

   老後を楽しもうという社長さんが少ないのだ。調査では、面白い質問を全国の社長さんに発している。「もし、生まれ変わったら、また社長をしますか?」だ。すると、「この会社の社長をする」が36%、「別の会社の社長をする」が22%と、6割近くが「また社長をしたい」と答えた=図表2参照。安定した「公務員になる」が13%、社長より気楽な「サラリーマンになる」が10%だった。

もし生まれ変わったら何をしたいか(図表2)
もし生まれ変わったら何をしたいか(図表2)

   「○○と社長は一度やったらやめられない」というほど魅力的なのはなぜか。アクサ生命の広報担当者はこう語る。

「大企業の社長は、内部から上がってきたサラリーマン社長が多いですが、中小企業の社長さんは、苦労して家業を継いだり、自分で創業したりした人が多い。一国一城の主としてプライドと事業に対する思い入れが非常に強いのではないでしょうか」

   また、社長は苦労が多い割に長生きするという研究があるそうだ。1967年からロンドン中心部で働く約2万8000人を追跡している疫学調査「ホワイトホール研究」によると、企業のトップの方が、一般社員より長生きであることがわかった。カネがあるから健康を維持できるというわけではない。同じ企業のトップでも、サラリーマン社長よりオーナー社長の方が長生きするからだ。

   この研究を分析したコロンビア大学のシーナ・アイエンガー教授によると、「オーナー社長は、責任が重大であるというストレスがある半面、自分で決定できる自由度が大きいため、仕事がおもしろくて仕方なく、ストレスにならない」という。

   ドラマ「下町ロケット」でもアツ~い中小企業の社長たちが次々に登場。確かに、中小企業の社長は大企業社長より地位や年収が低いかもしれないが、はるかに権限が強く、経営判断の自由は大きい。その快感がたまらないから、「生まれ変わっても自分の会社の社長をしたい!」となるのだろう。

   なお調査は、2018年4~6月にアンケートを実施。全国47都道府県の6685人の社長を対象に聞いた。10月24日の発表。

(福田和郎)

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