2018年 12月 14日 (金)

外国人労働者の受け入れ拡大 新聞社説が総スカンするワケ

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   「移民を入れるつもりか!」と与党の中にも反対の声があった外国人労働者の受け入れ拡大問題。人手不足解消を狙って安倍政権は来年(2019年)4月スタートを目標に入国管理法改正案を国会に提出した。

   ところがこの法案、あの安倍政権応援団と目される産経新聞をはじめ、新聞各社の評判は極めて悪い。いったいどこが問題なのか。各紙の社説からさぐると――。

  • 外国人と共生する時代だが……(写真はイメージ)
    外国人と共生する時代だが……(写真はイメージ)

「移民」なのに「移民ではない」と言い張る無理

   入国管理法改正案のポイントと主な争点を整理すると、次の5点だ。

(1)従来の技能実習生の制度を残したまま、新たに「特定技能」という在留資格を設ける。

(2)特定技能は、一定の日本語能力と技能を条件に就労を認める「1号」と、さらに難しい日本語能力と熟練した技能を求められる「2号」に分けられる。

(3)「1号」の在留期間は最長5年で、家族の帯同は認めない。若い労働力を入れようというのが目的だが、家族の帯同は認めないことに対して、人権侵害の批判が出ている。

(4)「2号」になると家族の帯同が認められ、定期的な審査を受ければ事実上の永住が可能だ。安倍晋三首相は「移民政策ではない」としているが、「2号はまさに移民そのもの」という批判が根強くある。

(5)祖国に日本技術を持ち帰ることが役目の技能実習生は、最長5年の実習を終えると、無試験で「1号」の資格を得られる。その場合、累計10年間も単身で働くことになり、「人権侵害」の批判があがっている。

   今回の入国管理法改正案では、主要紙の中では唯一、日本経済新聞が「少子高齢化を克服する具体策が聞きたい」(10月25日)が「介護、農業、建設分野などの人手不足を緩和して、成長力を底上げしていく方向性は正しい」(10月25日付)とほぼ全面的に賛成している。11月3日付「外国人の就労拡大は生活の安定が前提だ」でも「人口減少下で日本が成長するには外国人材の積極的な受け入れが不可欠だ」と述べている。ともに、「与野党は議論を深めるべきだ」という条件付きながら、こうした積極的な賛成意見は珍しい少数派だ。

「人」として迎えようとする朝日・東京・毎日

   朝日新聞「外国人労働者 『人』として受け入れよう」(10月29日付)は人道的な面から「虫のいい政府案」と批判する。

「これまで日本は、外国人の単純労働者を認めない立場をとってきた。だが現実は、『技能実習生』や留学生アルバイトが、単純作業を含むさまざまな現場で働く。外国人労働者は128万人と、55年間で倍増した。外国人に頼らなければ、もはやこの国は成り立たない。その認識の下、同じ社会でともに生活する仲間として外国人を受け入れ、遇するべきだ」
「だが政府が進める政策は、こうした考えとは異なる。根底にある発想は旧態依然のままで、『共生』にほど遠い。......(特定技能2号は)永住につながるもので、国際基準に照らせば移民に他ならない。だが安倍首相は、外国人受け入れに消極的な自民党内の声に配慮してか、『移民政策はとらない』と繰り返す。つまり思い描く労働者像は『単身で来日し、決められた期間だけ働き、そのまま帰国してくれる人』ということになる。ずいぶん虫のいい話ではないか。相手は生身の人間だという当たり前の視点が、欠けていた」

   そして最後に移民国家スイスの作家マックス・フリッシュのこんな言葉を引用して締めくくった。

「我々は労働力を呼んだ。だが、やってきたのは人間だった」

   東京新聞「外国人労働者 差別のない就労条件で」(10月29日付)も、「人間として扱え」と訴える。

「人手のために単純労働者の受け入れ制度を―との考えは発想が単純すぎる。一定の技能を持つ『特定技能1号』の在留資格の外国人は、在留期限が通算5年で、家族の帯同は認められない。人権保障の観点から大問題である。日本にいる限り憲法や国際人権法などの光に照らされる労働者でなければならない。長期間の家族の分離を強いる仕組みであってはなるまい」
「職場移転の自由があっていいし、日本人の労働者と同様の労働条件にすべきだ。賃金や労働時間などで国籍や民族を理由とした差別を認めてはいけないはずだ」

   差別問題に関しては、政権に近いとみられがちな産経新聞の「主張」(社説)の「外国人労働者 拙速な拡大は禍根を残す」もこう指摘する。

「1号について家族の帯同を認めないというのは、人権侵害になる恐れはないのか」

   そして、差別によってこんなういう問題が生じると懸念する。

「1号の在留期間は最長55年である。若い労働力を循環させようという発想だが、外国人労働者を必要としている国は日本だけではない。そんなに都合よくいくとはかぎらない」

   もっといい条件の国に流れてしまうのではないかというわけだ。

「社会不安」「治安問題」を心配する産経・読売

   一方、朝日、東京、毎日などが主に「外国人労働者への人道的な面」から反対している傾向が強いのに対し、産経新聞や読売新聞は、外国人労働者が増えることに対する「社会不安」をに対して問題視する傾向が強いようだ。

   先の産経新聞も、1号の人権問題を指摘しておきながら、2号の新たな人権問題をこう不安視している。

「2号ともなれば、事実上の永住や家族の帯同も認められる。これが移民とどう違うのか。定住者なら職業を自由に選べる現行制度との整合性をどうするつもりなのか。1993年に永住者は4万8000人だったが、2017年には74万9000人に達した。さらに増えてくれば、地方参政権を求める声も高まるだろう。これを認めれば、人口が激減する地域で永住者の方が多くなる危うさもはらむ」

   そして、治安の悪化を招くのではないかとこう指摘する。

「外国人労働者への依存度が高まった段階で、人材を送り出している国との外交上に衝突などがあり、一斉に引き揚げてしまう事態も考えておかなければならない。日本人がほとんど就職しない業種があれば、社会機能は麻痺してしまう。多くの国で社会の分断や排斥が起こっている現実もある」

   読売新聞「外国人就労拡大 不安払拭へ政府は説明尽くせ」(11月3日付)は、国民の不安解消に丁寧な説明をせよ、と政府にハッパをかけた。

「新資格の就業は、農業や建設、介護など14業種を検討しており、さらに増える可能性がある。受け入れ人数が野放図に増えるのではないか。業種ごとに想定している人数と全体の規模を早期に示すべきだ」
「安倍首相は『即戦力となる外国人材を、期限を付して受け入れる』と強調する。改正案は、人手不足が解消されたときの受け入れ停止を盛り込んだ。こうした措置だけで、『移民政策』と異なると言えるのか。法務省の外局として『出入国在留管理庁』を創設する方針だ。在留外国人の管理や、受け入れ企業の指導など、適切な態勢を整えることが大切である」

   新設される「出入国在留管理庁」にしっかり外国人を管理してもらいたい、と強調している。

   この点、毎日新聞「就労外国人 入管法改正案 これで支援できるのか」(11月3日付)は、「出入国在留管理庁」に対して、読売新聞の期待とはまったく逆の心配をしている。

「(就労外国人の生活支援は)どこが担うのかにも疑問符がつく。『出入国在留管理庁』が担当するのか。出入国の管理に目を光らせてきた官庁が、外国人労働者の立場で支援に当たれるだろうか。制度上、無理がある。共生社会実現への政府の姿勢が疑われるのは、外国人の受け入れ態勢の整備を地方自治体に丸投げしてきた歴史もあるからだ」

   として、在留外国人の住宅や日本語教育などの生活支援を、これまで群馬県太田市など外国人が多くすむ市町が行なってきたことを明らかにしている。

   いずれにしろ、安倍政権は2019年4月からの改正入国管理法実施を急いでおり、国会の論戦から目を離せない。(福田和郎)

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