2019年 5月 26日 (日)

専業主婦に「主婦手当」ってアリ?! ネットで炎上、専門家に聞いた

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   「最近、働く女性ばかり優遇されている。専業主婦にも支援がほしい」と、「専業主婦手当」を提案する投稿が、インターネットで炎上ぎみの話題になっている。

   「呆れた! 税金も払わないのに強欲すぎ!」という反感が圧倒的だが、なかには大いに共感する声も。このワーキングママと主婦の「分断現象」を、女性の働き方に詳しい専門家に裁定してもらうと――。

  • 育児を楽しむ専業主婦(写真はイメージ)
    育児を楽しむ専業主婦(写真はイメージ)

「ワーママばかり優遇され、主婦に何の恩恵もない」

   話題のきっかけになったのは、女性向けサイト「発言小町」(2018年10月22日付)に載った「ワーキングマザー支援と専業主婦支援」と題する投稿だ。

「昨今、保育園の拡充や長期間の産育休およびその給付金、休暇中の社会保険料免除など女性が働くための環境が整いつつあります。働きたい女性にメリットが増えていく反面、専業主婦には何の恩恵もなく、両者の格差が広がるばかりで、うんざりしています。ワーキングマザー支援ばかりでなく専業主婦も支援してほしい」

と、投稿者は訴えた。

   そして保育園や産育休などの制度を使わない代わりに、ワーキングマザーだったら、使っていたはずの費用を「専業主婦手当」として支給する政策を実現してほしいと結んだのだった。

   これに対して圧倒的多くの人が、「反対」というより「激怒」といった表現がふさわしい投稿を寄せた。

「呆れてモノも言えません! 国は、もっと多くの人に社会に出て働いて税金を納めてほしい。そして将来の働き手、納税者を増やすために子供を産んでほしいわけ。だから女性が子供を産んでも働き続けられる社会づくりを進めている。専業主婦は保育所に預けなくても子育てができます。支援の必要のない人が、その分を寄こせというのは、『健康で医者にかかっていないから、もし病気になっていたら使われていたはずの医療費を支給しろ』と言うのと同じ。日本、早急に破たんします」
「なんとまあ驚きます! ワーキングマザーへの支援が出るのはその先に彼女らが納税をすることにつながるからでは? 専業主婦は自らの意思で納税しないのだから、そこへ税金投入の意味ないでしょう。人間、ここまで強欲になったらおしまい。旦那さんからでも何かもらったら?」

「税金も払わず、どんだけ優遇されてるの!」

   また、専業主婦は税金や保険料などを納めていないのに、十分すぎるほど優遇されているではないかという批判が殺到した。代表的な意見がこれだ。

「サラリーマンの配偶者の専業主婦は、1円も保険料を払わずに年金を満額受給できます(第3号被保険者)。1円も保険料を払っていないのに、医療費は保険料を負担している人と同じ3割です。1円も所得税を払っていないのに、国の制度をタダで使えます。1円も住民税を払っていないのに地域サービスを受けられます。これ全部、金銭的義務を果たしていない専業主婦が受ける恩恵です」

   そして、こんな皮肉の声も――。

「離婚率が高い今の時代、専業主婦という名の無職を選ぶとは先々を考えない人ですね。今のうちにスキルを身につけ経済的自立が出来るようにしたほうがいいですよ。子育ては一時。それが過ぎたら専業主婦は無用です」

「ぶっちゃけ主婦手当を出した方が国のためよ」

   ところが、少数だが、「専業主婦手当」に共感の声が寄せられた。主に保育園をめぐる様々な問題の解決につながるという指摘である。

「保育園の0歳~1歳児は月30~40万円も税金から出ています。2歳児以上は数十万円かかる。それが一軒に2~3人子どもがいるとして、それを上回る税金を払えている人ってどれだけいるの? できないからこそ、全国民で負担するわけでしょう。国としても、子どもが小さいうちは親が見た方が助かるはず。なので、育休制度を作り、『3年間抱っこし放題』政策を打ち出している。主婦に恩恵を与えた方が、保育園利用者が減ってうまくいくと思います」
「待機児童が深刻な首都圏在住です。賃料や人件費が高いので、用地と保育士の確保が困難で保育園を増やすことが難しいです。周辺の住民が保育園を作るのに反対します。そんなに税金使って苦労してまで、保育園必要ですか? どう考えても、ワーママが収める税金より保育園運営にかかるコストの方が大きいじゃないですか。専業主婦に手当出した方が現実的です」

   また、「主婦という生き方」を評価してほしいという意見もあった。

「今の男女平等は、女性に男性と同じ生き方を求めて、男性の生き方で生きる女性を評価して支援をする風に偏っています。古典的な女性の仕事である、家庭内育児や介護に励む女性にも社会保障を与えてほしい。昔は子どもを産んで育てたら、育てた子どもが老後の世話をしてくれることが老後の保障でしたが、今は子どもが老後の面倒をみるとは限りません。血縁による保障ではない社会保障を主婦に充実してくれればいいのに、と思います」

「専業主婦であることへの罪悪感があります」

   J-CASTニュース会社ウォッチ編集部では、女性の働き方に詳しい、主婦に特化した就労支援サービスを展開するビースタイルの調査機関「しゅふJOB総研」の川上敬太郎所長に、この炎上騒ぎの意見を求めた。

   ――投稿者の意見にはかなり多くの反対意見が寄せられましたが、どんな感想をお持ちですか。

川上敬太郎さん「投稿者の主婦業は主婦業で大変だ、という思いはわかります。一方で『個人の思いを汲む』という側面と、手当などの『公的支援の必要性』という側面とは分けて考えた方がよいと感じました。
投稿者の意見からは、何のために『専業主婦手当』が必要なのかという意図までは十分には読み取れませんが、働く女性だけが優遇されているという『不公平感の解消』を目的としているとしたら、専業主婦であることへの罪悪感や後ろめたさのような気持ちが影響している可能性があるように思います。
私たちは以前、『専業主婦である』ことに罪悪感や後ろめたさがあるかどうかを聞く調査を行ないました。約6割の人が何らかの引け目を感じていることがわかりました。若い人ほど後ろめたさを感じる人が多くなり、30代以下では7割近くの人が罪の意識のようなものを持っていたのです。(注:J-CASTニュース会社ウオッチ 2018年11月18日付「専業主婦」って罪な存在?)

   ――「専業主婦手当」批判派の大多数は、主婦は3号年金や配偶者控除などで恩恵を受けており、もう十分に優遇されている、それに税金も払っていない。それなのに手当を要求するのは強欲すぎると攻撃しています。こうした主張は正しいのでしょうか。専業主婦側に擁護される要素はありませんか。

川上さん「これらの意見で指摘されている通り、税制・保険を含めてすでに専業主婦への配慮はなされていると思います。しかし、それを十分ととらえるか否かは人それぞれです。主婦業の大変さの感じ方には個人差があるし、各家庭によって事情も異なります。 『専業主婦には何の恩恵もない』という言い分を言葉通り受け取ってしまえば、事実と異なると言わざるを得ませんが、手当を求めることを強欲と決めつけるのは、適切ではないように思います。負担の感じ方が人それぞれだからです。現実として完全な公平は難しいとしても、あらゆる立場の観点に立った上で、より適切なサポートのあり方を検討することは必要です」

「働き方に対する思いと事情の違いは、人の数だけある」

   ――負担の感じ方が人それぞれに違うとはどういうことでしょうか。

川上さん「同じ働く女性の間でも考え方・感じ方が全く異なるということです。例えば、2017年10月、育休を最大2年に延長する雇用保険関連法の改正が成立しました。私たちは、その前に働く主婦に『育休延長についてどう思うか』を聞く調査を行ないました。育休の延長は働くママさんに配慮した施策なので、多くの女性が賛同するだろうと思っていました。
ところが、確かに賛成意見が多かったのですが、反対意見が10数%ほどあり、フリーコメントに寄せられた主張は賛成派を上回るほど強いものでした。その多くは、育休取得者がいることで自分に仕事の『しわ寄せ』がくることへの反発ですが、中には育休そのものに反対する厳しい意見もありました。
『たったの2年で子育てを他人に任せること自体が、子を育てるという大切な仕事を成し遂げられないと思う』(50代・子持ち)、『そもそも育休に疑問。育休は甘えとしか思わない』(40代・子持ち)などです。働くママさんの間にさえ、子どもが小さいうちは育児に専念すべきという意見があるのですから、専業主婦からみると、育休は優遇されすぎだと思うのも無理はないかもしれません。
これらのコメントを読むと、働き方、子育て、家事に対する考え方は人の数だけ存在し、また人の数だけ事情があることがわかります。そこには必ずしも正解はなく、またそれぞれの意見に『思い』があるため、異なる意見同士の間に感情的な対立が生じやすいことが、この調査一つとってもよくわかりました」

   ――なるほど。投稿者の「思い」も汲み取るべきだということですね。ところで、投稿者に共感する側は、保育園にかかる国の税金が多すぎて、保育園利用者が支払う税金分をオーバーしている、それならば専業主婦に「手当」を出して、自宅で子育てしてもらった方が国家のためになるといった論理を出していますが......。

川上さん「何が国のためになるのかは、保育園の運営にかかる費用の損得だけでは測りきれない面があります。労働力不足が取りざたされる中、安倍政権は『世界で一番企業が活躍しやすい国』を目指すと公言しており、より多くの労働力を確保する方向に施策を打っています。
専業主婦も含め、国民一人一人の思いを汲むというスタンスは大切ですが、手当支給などの公的支援を行なうか否かは、国の施策に沿っているかどうかが大きく影響します。手当を出して自宅で子育てをする人が増えると、今必要な労働力が減るわけですし、企業が人手不足で苦しんでいる現状も考えると、現実として専業主婦に手当を出すのは難しいでしょう」

「抱っこひもを付けた男性の通勤姿が普通になれば」

   ――投稿者に共感する側は、そもそも昨今の働く女性優遇策は、女性に男と同じ働き方を勧め、古典的な女性の仕事を否定するものだとも批判しています。

川上さん「『男と同じ働き方』や『古典的な女性の仕事』という表現は、そう表現している時点で性別によるイメージの決めつけになっていると思います。いま社会は性別に関係なく、働き方そのものを見直そうとしています。そう考えると、女性に男性と同じ働き方を勧めるということ自体が意味をなさなくなるはずです。
しかしながら、女性に男性と同じ働き方を勧めているように受け取ってしまう人が存在していることを認識するべきだと考えます。政府が行おうとしている女性活躍推進のあり方が十分に伝わっていない、あるいは今の施策では不十分だというメッセージではないでしょうか。
先日、駅で抱っこひもを付けた男性が通勤する姿を見て微笑ましく思いましたが、そんな光景が極めて珍しいという現状に違和感も覚えました。共働き世帯の数は増える一方ですが、女性の家事育児の負担は減っていません。となると、仕事に就いた分だけ単純に女性の負担が増えただけになります。その状況で政府が女性の活躍を推進し続ければ、働く女性の負担は増え続け、働けない女性はより肩身の狭い思いをしてしまうという悪循環が生まれます。社会の働き方や家事負担のあり方が現実的に変わっていかなければ、女性は働いても働かなくても、より窮屈な方向へと押し込められてしまうということだと考えます」

(福田和郎)

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