リピーター呼ぶ歌って踊れる「応援上映」 まだある! 冷めぬクイーンブームの「秘密」(井津川倫子)
世界中に熱狂の渦を巻き起こしている映画「ボヘミアン・ラプソディ」。日本では、2018年に公開された洋画の興行収入2位にまで浮上してきました!
私の周りでも2回、3回と映画館に足を運ぶリピーターが続出。世界中で、封切りから日が経っても勢いが衰えないという「異常事態」が発生していますが、ある「ヒット企画」の影響と報道されています。
「クイーン」紅白出場か!?
日本では、すっかり「社会現象」になっている映画「ボヘミアン・ラプソディ」。新聞やテレビ、雑誌で特集が組まれたり、クイーンのブライアン・メイとロジャー・テイラーが紅白歌合戦に出演するとウワサになったりと、世代を超えた「お茶の間の話題」になりつつあります。
この、興行収入や動員数が衰えない「異常事態」は、どうやら日本だけではなさそう。ある「ヒット企画」のおかげでリピーターが増えていることがその理由と報道されていました。
Sing-along screening boost ticket sales of 'Bohemian Rhapsody'
(観客が一緒に歌う上映が、「ボヘミアン・ラブソディ」のチケットセールスを押し上げている)
sing-along:歌の集い、一緒に歌う
boost:押し上げる、後押しする
日本では、観客が一緒になって拍手をしたり、歌って踊ったり、コスプレを楽しめる「応援上映」が話題になっています。
報道によると、とりわけアジアや南米で「応援上映」が人気を博しているとのこと。試しにGoogleで検索してみたら、韓国やフィリピンで「応援上演」に熱狂する人々のニュースがたくさんヒットしました。
さらに、「全世界的な傾向」として、「『応援上映』は2回、3回と会場に足を運ぶ『言いわけ』に使える」と分析した記事もありました。確かに、ふだんは同じ映画を2回、3回と観ない人でも、「『応援上映』は別もの」と正当化しやすいかもしれません。
「応援上映」の存在がリピーターを産みだし、興行成績をぐんぐんと押し上げる要因となっているようですが、私も「『応援上映』は別もの」の一人。年末年始にもう一度観ようと思っています。
今なお、クイーンは闘っている!
異常なまでのクイーンブームを受けて、先日NHKがブライアン・メイとロジャー・テイラーの独占インタビューを放送しました。映画公開後、世界で唯一行われた独占インタビューだそうですが、さすが世界のロックスター。数々の名言を残してくれました。
すでに報道で目にした方も多いかと思いますが、せっかくですので二人が語ったメッセージを「生の英語」でご紹介します。
If there is a secret of Queen, that is being about people and not being about Rock star
(もし、クイーンの秘密があるとしたら、それは僕たちがロックスターではなくて人間であろうとしたことだ)ブライアン・メイ
二人は、音楽活動や映画についてだけではなく、現在の世界情勢についてもストレートに発言しています。
It's too many borders and walls and cultural restrictions.
I don't believe in any of that.
We should think freely and everyone is different.
(世界中にたくさんの国境や壁や文化的制約が存在する。でも僕はどれ一つ信じていない。僕たちは自由に考えるべきだし、誰ひとり同じではない)ロジャー・テイラー
I like to build bridges and not walls so I hate what is going on in America
(僕は、壁をつくるのではなくて橋を架けたい。だから、アメリカで起きていることを忌み嫌っている)ブライアン・メイ
そういえば、2016年の共和党全国大会で、ドナルド・トランプ米大統領候補(当時)が自身の入場曲として「伝説のチャンピオン」を無断で使用したことについて、クイーンが激しく非難し、度重なる抗議をしていたことを思い出しました。
ブライアン・メイは、英国のEU(欧州連合)離脱について「イギリスがした最も愚かな出来事だ」と批判をするなど、分断をあおる風潮に対して声高に「NO」を言い続けています。
歌で世界をつないできたクイーン。残念ながら分断が進む世界で、歌からことばに武器を変えて、今でも闘い続けているのでしょう。
ロックスターではなく、ひとりの人間として闘う姿に、国境を越えたクイーンブームの「秘密」を垣間見た気がしました。(井津川倫子)