2019年 10月 20日 (日)

米中に後れをとったAI技術 日本が巻き返すヒントは?(気になる本の散歩道)

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「AI白書 2019」(KADOKAWA)独立行政法人情報処理推進機構 AI白書編集委員会編

   近年の深層学習(ディープラーニング)研究の成功で、人工知能(AI)の進化のステージが10年ほど前倒しとなり開発がさらに加速している。

   AIはいまでは囲碁のプロ棋士に勝つほど学習上手となり、機械翻訳ではそのまま文書に使えるほどに精度が向上。スマートフォン、スマートスピーカーなしでは生活ができないという人たちが現れているばかりか、クルマの自動運転もすでに実現レベルに達しているという。

   「技術大国」とされる日本だけに、AIでも国際的には世界をリードしている立場にいるに違いないと思いきや、1、2位を走る米国や中国に、はなはだしい後れをとっているのが実情であることもわかった。

  • 日本のAIの研究・実用化は、米国や中国に大きく遅れている
    日本のAIの研究・実用化は、米国や中国に大きく遅れている

日本は「周回遅れどころか、何周回も遅れ」

   2017年版以来1年半ぶりに刊行された『AI白書 2019』は、AIの導入企業や実用化事例を数多く紹介して、17年版発行後からの短い間に幅広い領域でAI技術の応用が加速度的に進んだことを示した。

   その一方で、世界的なAIの研究・実用化では米国と中国が先行し、日本が遅れていることを合わせて指摘している。

   企業再生のスペシャリストとして知られる経営コンサルタント、冨山和彦氏は、白書編集委員会の中島秀之委員長(札幌市立大学学長)との本書の巻頭対談で「(日本は米中から)周回遅れどころか、何周回も遅れている」と指摘。その原因を、二本の社会・産業構造に求め、わが国の目指すべき「AI経営」についてガイダンスを提示する。

   スタートアップ企業やベンチャーキャピタルなどの動向を調べている調査会社、米CBインサイツが2017年12月に発表したAI分野で活躍する世界のスタートアップ企業100社のリストによると、国別では米国が76社と最も多く、2番目が中国の8社で、日本からは2社が選ばれていた。

   世界的にみて今後の社会・経済の競争力強化の支えとなるのはAIとみられるが、日本は、企業ではAIへの関心が高いものの、理解不足もあって利用率は3%にすぎないという。

   こうした現状を憂いながら、白書は「先行する海外企業の技術やサー ビスを積極的に利用しながら、日本の強みを発揮できる分野で社会実装を加速させることが不可欠」と提言。「少子高齢化が進む日本では、AIは労働力不足への対応、労働生 産性の向上、高齢者のサポートなどの課題解決に向けた切り札となり得る」と記している。

50年に一度のチャンス

   AI白書によれば、中国が台頭してきた背景には、スマホによる決済やネット通販、監視 カメラネットワーク、音声などビッグデータの活用、多くの若手AI技術者の育成などをめぐる政府による積極的な政策の推進や支援がある。

   たとえば、中国ではキャッシュレス化が広く普及しており、支払いばかりでなく、スマホがさまざまな場面で活躍。スマホなしでは始まらないとされ、政府と「BAT」と呼ばれる3社、「Baidu=百度(バイドゥ)」「Alibaba=阿里巴巴(アリババ)」「Tencent=騰訊(テンセント)」がけん引して、AIの導入が進められている。

   AIの分野では「ベンチャーのインキュベーション、人材育成など課題は多い」とし、海外の動向を参考にして官民をあげた取り組みを推進すべきと、白書は訴える。

   日本では「便利だから」とスマホが手放せない人がいるが、すでに中国ではスマホがないと生活できないと言っても大げさではないらしい。日本との「差」は大きい。

   一方、AIの普及や導入が加速した背景には、ディープラーニングの成功があった。人間の行動には「暗黙知」と呼ばれる言葉や形式によらない、たとえば徒弟制度の中だけで受け継がれる技のようなものがあり、これをプログラミング言語で表すことが困難だった。そのため、プログラミングだけで動作するロボットは単純な動きの繰り返ししかできなかったが、ディープラーニングがこのことを克服した。

   さらに、今後に向けてさらに期待されているのが画像認識の進歩。画像認識でコンピューターが人間の精度を上回る時代は、すぐそこまで来ている。コンピューターやマシンでは人間の代わりができないと考えられている仕事の中に、視覚を使って認識、判断しているものはたくさんあるが、それらのほとんどが自動化できる可能性が生まれ、今後の活用に期待が高まっている。

   AI研究においてディープラーニングは50年来のブレークスルーであり、企業にとっても業種にかかわりなく、「50年に一度のチャンス」という。

「AI白書 2109」
「AI白書 2109」

AI白書 2019
独立行政法人情報処理推進機構 AI白書編集委員会編
KADOKAWA
3600円(税別)

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