2019年 10月 16日 (水)

大坂なおみ選手の「怒り」制御術に学ぶ 精神年齢「3歳」社長を「5歳」にする方法(大関暁夫)

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   女子プロテニス・全豪オープンの決勝で、大坂なおみ選手が2018年の全米オープンに続いて4大大会を連覇し、アジア人初の世界ランキングトップに立つという快挙を成し遂げました。

   全米オープンは相手選手の自滅にも助けられた形でのグランドスラム初制覇でしたが、今大会で感じられたものは、前回にはなかった安定感。それを支えたのは彼女自身の「成長」であったと、本人も認めるところでした。

  • 「怒り」を制して、大坂なおみ選手は世界一に輝いた!(2018年9月13日撮影)
    「怒り」を制して、大坂なおみ選手は世界一に輝いた!(2018年9月13日撮影)

流れを引き戻したトイレットブレイク

   試合後のインタビューで彼女はこう話しています。

「負けていても意志があれば挽回して勝てること、ブレイクポイントも防げること、それを示せたと思う。開幕前3歳だった私の精神年齢は、5歳に成長したかな」

   3歳の精神年齢が5歳に成長したというのは、いささか謙遜が過ぎるにしても、彼女の今回の成長、特に精神面での安定は本当に特筆すべきことだと思いました。

   恐らく、テレビの生中継で試合を見ていた誰もが最初に彼女の勝ちを確信したであろう場面、1-0のセットカウントでリードした第2セットゲームカウント5-3で、あと一打決めれば優勝というところから、あれよあれよ連続4ゲーム落として5-7で逆にセット負けを喫しました。

   これでセットカウント1-1のタイに。いわゆる逆王手です。今度はこの場面で、多くの観ている人が「このまま相手のペースで負けるかも」と思ったことでしょう。

   誰が見ても完全に流れは相手の選手に有利でした。ここで彼女がしたことは、最終セットを前にトイレットブレイクをとることでした。そして驚くべきことに、コートに戻った彼女は、精神的な落ち着きを取り戻し、最終セットを第1セット同様の安定感あるプレーに戻すことで、見事に勝利を繰り寄せたのです。

   彼女がトイレットブレイクというわずかな時間で、冷静さを取り戻したその秘密は何なのでしょうか。

欧米のスポーツ選手はもはや常識「怒り」のマネジメント

   競技を問わず、欧米のスポーツ選手のあいだで、もはや常識となっているといってもいい身につけるべきスキルがあります。それは、アンガーマネジメントです。アンガーとは「怒り」。すなわち、突然沸き起こる「怒り」の感情をいかにコントロールするか。自らの「怒り」を制した者が戦いをも制することができる、というのがアンガーマネジメントの基本的な考え方です。

   このアンガーマネジメント、いわゆる「怒りの負の影響力」に関しては、紀元前から哲学者たちによって研究されてきたと言われ、現代では主に心理学者たちによってその悪影響と制御法、解消法について、さまざまな研究がなされています。1970年代頃からはアンガーマネジメント・プログラムとして形成され、多方面で活用されています。

   ちなみに、世界の一流プロテニス選手の多くはアンガーマネジメントを学んでおり、またアメリカンフットボールチームなどでは全選手にアンガーマネジメントの研修の受講が義務付けられているなど、スポーツ競技においてその効果は一般的に知られ、高く評価されているのです。

   私は、大坂なおみ選手の「トイレットブレイク」での精神的立ち直りを見て、これはアンガーマネジメントの力に相違ないと確信しました。

人間の感情の中で最も激しいものが「怒り」

   「怒り」は、人間の感情の中で最も激しいもの。その発生を許して表に出すなら、相手に不要な悪感情を及ぼすことになりかねませんし、自らの中に留めるなら、それはストレスに形を変えて、まともな思考や判断を妨げ、誤った行動に導きかねない要因にもなるのです。

   すなわち、「怒り」の感情の発生を抑えることが、周囲にとっても自らにとっても力を発揮するために大変な重要なカギを握っているわけなのです。

   大坂選手は、第2セットの逆転負けで自分に対して生じた「怒り」から転じたストレスを、アンガーマネジメントの力によって解消し、力を十二分に発揮できるよう制御したことで勝利したと言っていいでしょう。

   さて、企業マネジメントに目を転じれば、何かとすぐ怒る、怒鳴る、そんな怒りっぽい社長さん、かなりいますよね。

   社長はその立場的な強さもあって、部下に対して感情の遠慮がないことも多く、「怒り」を抑えるということに無頓着になりがちです。

   しかし、自分の「怒り」の感情がどれだけマイナスを生んでいるのか、考えたことのある社長は意外に少ないのではないかと思うのです。

   自分が冷静さを失うことのマイナスもさることながら、周囲を萎縮させたり、不機嫌にさせたり。「経営者の感情的な姿勢」というものは、一歩間違えればパワハラであり、転職者の離職理由の上位にも顔を出しているのです。

   そこで、アンガーマネジメントのコツをひとつだけ、お話しておきます。

   「怒り」を感じそうになったら、他の事を考えること。たとえば相手の顔を見ず、時計に目をやったり、壁に掲げられた絵やポスターに視線を移したりして、別の世界に思考を持っていくのです。とっさに100から7ずつ連続で引き算をするのも効果的であると、アンガーマネジメントの専門家は話していました。

   アタマをもたげかけた「怒り」の感情が消え去るのは、6秒後と言われています。この6秒をやりすごせば、落ち着いて冷静な物言いや判断ができるわけなのです。

   大坂なおみ選手流に言えば、すぐ怒る社長の精神年齢は3歳。アンガーマネジメントを身につけて、これを5歳にまで成長できれば、今までにない業績の伸展や社員の成長に出会えるかもしれません。(大関暁夫)

大関暁夫(おおぜき・あけお)
スタジオ02代表。銀行支店長、上場ベンチャー企業役員などを歴任。企業コンサルティングと事業オーナー(複合ランドリービジネス、外食産業“青山カレー工房”“熊谷かれーぱん”)の二足の草鞋で多忙な日々を過ごす。近著に「できる人だけが知っている仕事のコツと法則51」(エレファントブックス)。 連載執筆にあたり経営者から若手に至るまで、仕事の悩みを募集中。趣味は70年代洋楽と中央競馬。ブログ「熊谷の社長日記」はBLOGOSにも掲載中。
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