2019年 12月 15日 (日)

「会社はゲーム、新入社員はレベル1だ」古市憲寿さんが説く処世術(気になるビジネス本)

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「新入社員に贈る言葉」(経団連出版編)

   4月、新生活がスタートする。そんな新社会人の門出に当たり、著名人が「激励」を寄せた。

   「新入社員に贈る言葉」をテーマに、50人ものメッセージが読める書籍はなかなかない。しかも、1973年から続いている。2019年版は、ここ数年話題になっている、新社会人の高い離職率にふれたものが多いようだ。

   厚生労働省(2018年10月23日発表)によると、15年3月に卒業した新規学卒就職者の就職後3年以内の離職率は、大卒者で31.8%、高卒者が39.3%だった。

  • 「レベル1」からスタート(写真はイメージ)
    「レベル1」からスタート(写真はイメージ)

会社はゲームより奇なり

   大卒新入社員が3年以内に離職する割合が3割超える傾向が続くなか、その原因が日本独自の、新卒者の一括採用というシステムに、なんらかの問題がある可能性が指摘されている。

   とはいえ、熱心に就職活動をして内定をもらい、入社した会社だ。不安はあっても、「明日、辞めます」という人はそんなにいないと思いたい。会社も「そう簡単には辞めてほしくない」と思っているはずだ。

   テレビの情報番組などの出演も多い社会学者、古市憲寿さんは会社組織をRPGの構造に近いと解説する。

   新入社員は、ゲームでいえばレベル1のビギナーであり、そこからミッションをこなしてレベルを上げていくことになる。「ゲームもルールを覚えることが大変なように、『新入社員』も初めはレベル上げを意識するどころか、毎日のタスクをこなすのが精一杯でしょう」。

   そんな新入社員でも要領を覚えて困難を克服できるようになり、レベルは自然に上がるもの。「しかし」と、古市さん。「現実世界では残念ながらそうはいきません」と注意を促す。

   苦労してクリアしたミッションも徒労に終わるなど、会社生活は「優秀なゲームデザイナーが設計したRPGと違い、時に不条理、時に無慈悲」という。

   だからといってがっかりしてはダメ。「現実のほうがゲームよりおもしろいこともある」からだ。「それは、プレイするゲーム自体を変更できるということ、そしてゲームを変えても経験値の一部を引き継げること」。転職や独立という、別のゲームのほうが、もっとおもしろいかもしれない。「なにも自分が向いていないと思ったルールでいつまでも戦い続ける必要はありません」。

   古市さんがそうアドバイスを送るのは、いまはかつてのように「社長になること」「昇進すること」が会社ゲームの一番の目標だった時代ではないから。いまや転職や起業は珍しいことではない。ひとつの会社で勤めあげることだけが道ではないということだ。

目標に対して、どのルートで行くか

   エッセイストの岸本葉子さんは、大学卒業後に生命保険会社に就職した経験を持つ。そこでわかったことは「社会が不合理なこと、非効率的なことをひっくるめ、さまざまな雑事でなりたっている」ということ。そのなかをくぐりぬけこそ幹部候補生になれるそうだが、岸本さんは「2年ちょっとしか続かず、完全に落ちこぼれ」に。しかし、その2年間は「頭でっかちの自分を修正するターニングポイントになった」と、振り返る。

   「グローバル化の渦の中で、日本の新入社員も積極的に自分の人生を考えなければいけない」というのは、ハンガリー出身の数学者で大道芸人のピーター・フランクルさん。「会社のために最大限に尽くすけれど、その中で自分も伸びるように努力する」という「伸私奉仕」の勧めを説き、「そうした努力が報われないと感じたときは『転職時期がやってきた』と思うべき」とアドバイス。

   元ラグビー日本代表で、9月に日本で開かれるラグビー・ワールドカップ2019大会のアンバサダーを務める大畑大介さんは、「私は以前、希望しないポジションを指示されたことがあるが、やってみたら異なる角度からの景色をみることができた。それまでと違う視点がうまれた。自分自身が思ってもいない、望まない経験をしたことは、振り返ってみると、とてもプラスになっている」という。

   とっさの判断が必要とされるラグビー。大畑さんは「人間はみな、それぞれが違うように、目標も、そこへ到達するルートも異なる。いま置かれている状況だけがすべてではない。自分の目標に対してどのルートで行くのかを考え、たどり着かなかったら別の道を探せばいい」とも。

   編集者、評論家の山田五郎さんは「一中間管理職として新入社員と接してきた経験」から「すぐに辞めてしまう人のほとんどは、じつは自分が何をやりたいのかもわかっていない」と指摘している。

   「石の上にも3年というが、今は世の中のスピードが早くなっているから、1年でいい。他の可能性は考えず、自分にはいまの仕事しかないと思い込んで、全力で取り組んでみてほしい。1年後には、仕事というものに対する考え方自体が、驚くほど変わっているだろう」と、アドバイスする。

有働アナ、「逃げよう」と思ったNHK新人時代

   2018年3月末に、それまで27間在籍したNHKを退職、フリーのジャーナリストに転じた有働由美子さんは、就職後まもなくは失敗を重ねて「この仕事に向いていない」と逃げようとした経験を告白。それでも続けられたのは「学生時代と比べものにならない充実感」と、取材対象を含めて人間関係ができてくるから」だったという。

   そして、「お金をもらってやってるんだから、つらいこともあるさ」という割り切り。こちらは「大阪人的発想でせこいですかね?」と、有働さんらしい自虐を交えている。

   会社をめぐる時代の進化にあえて挑戦するかのように「徹底した会社人間をやってみろ」というのは、京都大学名誉教授の佐伯啓思さん。「いまや、わが国では、日本企業の集団主義や会社主義が批判の的になっていて、会社を主にするのはやめよう、自分の生活や創意を大事にしよう。会社人間にはなるな、自分の人生を大事にしろ、といった声があっちこっちから聞こえる。そこでいささか天の邪鬼なわたしとしては、むしろ、まずは徹底した会社人間をやってみろ、といっておきたい」。

   そして...... 会社という圧倒的な現実を前に、自分を試し、できるだけのことをしてみたうえ、そのあとで「本当にいやだと思えばまた次の人生を考えることもできる」。

   ふだん働いていると、「ことば」との出会いを大切に思うときがある。ひとかどの人物による、いくつもの「アドバイス」は新入社員でなくても、グサッと刺さる。

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「新入社員に贈る言葉」
監修・編集・著者  経団連出版編
経団連出版
税別1080円

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