2024年 4月 27日 (土)

ブロックチェーンが「ネット誕生以来のイノベーション」といわれる理由(気になるビジネス本)

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   「ブロックチェーン」というと、仮想通貨の運用の仕組みとして知られる技術だが、用途は広く、ビジネス界や産業界では、AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)などとともに、今後の社会で重要な機能を担うとされる。ポテンシャルを秘めたテクノロジーだけに、その入門書や解説書が数多く出版されている。

   ブロックチェーンは、それらに共通した説明では、取引ごとの台帳がチェーンでつながれたように関連づけられており「ピア・トゥ・ピア(P2P)」ネットワークで参加者全員により共有されるもの。もちろん、他のさまざまなテクノロジーが組み合わされ機能が高められているわけだが、なによりのウリは、中央に管理者がいて台帳の管理・運営を行う中央集権型ではなく、だれもが対等の立場で参加する、オープンで民主的なシステムであることだ。

「ブロックチェーンという世界革命 価値観を根本から変えるテクノロジーの正体とは」(神里達博著)河出書房新社
  • 仮想通貨「ビットコイン」は、ブロックチェーンを使うことで可能になった
    仮想通貨「ビットコイン」は、ブロックチェーンを使うことで可能になった
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「複合的な視点で肉薄」

   ブロックチェーンの解説本「ブロックチェーンという世界革命」は、その思想的背景や、文明的視点からみた意義などについて丁寧な説明を盛り込んでいて異彩を放つ。

   「はじめに」に、「ブロックチェーンが社会を変えてしまうのか、それとも社会がブロックチェーンをコントロールし、活用するようになるのか。いずれにせよ、技術的な観点のみならず、また社会経済的な観点からだけではない、複合的な視点で、この新しいテクノロジーに、しっかり肉薄することが重要であるに違いない」とある。

   著者の神里達弘さんは、千葉大学国際教養学部教授。科学史や科学技術社会論のほかリスク論が専門で、民主主義と専門主義の関係や科学技術に伴うリスクなど幅広いフィールドをカバーしている。朝日新聞客員論説委員でもあり、エピソードや史実を織り込んだ各論の展開は親しみやすくわかりやすい。

軍事技術~オタクの系譜

   現代ではインフラとしてわたしたちが享受している情報技術などのテクノロジーの多くは、第二次世界大戦から冷戦時代にかけて、軍事技術として米国で開発されたものがベースになっている。レーダー技術の副産物として電子レンジが生まれ、自動車のナビゲーションのGPS(全地球測位システム)はミサイルの命中精度を正確にするため開発されたものだ。インターネットも国防総省の機関である研究所で誕生した。

   これら軍事研究で生まれた高度な技術はその後、大学などの研究機関などで急速に発展。「コンピューターが好きで、プログラミングに没頭し、楽しむ人」である、現代ならオタクと呼ばれるであろう「ハッカー」たちにより実用度があがり、生活のハイテク化を促すことになる。ハッキングに取り組む人たちの間には時代が進むにつれ、技術が社会を決めるという考えも現れるようになり、反戦運動、エコロジー運動ともかかわるようになる。

   そうした流れのなかから現れたのが仮想通貨だ。「サトシ・ナカモト」を名乗る人物の同好の士の間をつなぐメーリングリストに投稿した論文が元となってビットコインが誕生。それを支えるテクノロジーの一つがブロックチェーンだ。機密情報公開サイト、ウィキリークスの影響も受けたとされ、投稿されたメーリングリストのメンバーは、暗号技術が政府などに独占されることに異を唱え、その広範な利用を推進する活動家らだった。

アンチ中央集権

   銀行などが使っている従来のネットワークである「クライアント・サーバー型」だと、中央のサーバーに台帳を置き、それを管理者が管理する。この場合管理はしやすく、管理者は特権的に情報にアクセスできることになる。仮想通貨の考えは、こうした中央集権的なシステムを嫌い「国家という中央の権力に支配されない『真に民主的な』通貨制度を構築したい」というのがそもそもで、そのための「P2P」によるネットワーク化を可能にした管理方法がブロックチェーンなのだ。

   情報のデジタル化が進んだ昨今、その情報を元にサービスを提供するプラットフォームを持つ企業が市場を独占する傾向を強めており、それに対して同時に警戒感も高まっている。インターネットの世界はそもそも、中心を持たないフラットな世界として誕生した。ところが技術開発が進み、その結果の現状は巨大企業による寡占化が著しい。まだ途上のブロックチェーンだが、著者は、その普及が進めば「ネット世界での再・民主化が進むかもしれない」という。ブロックチェーンは、そうした特質から「インターネット誕生以来の最も重要なイノベーション」ともいわれている。

「ブロックチェーンという世界革命 価値観を根本から変えるテクノロジーの正体とは」
神里達博 著
河出書房新社

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