2019年 4月 19日 (金)

新人たちの「ガラスのハート」にどう対処 「新人を育てて戦力化する」ための心得(大関暁夫)

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   今年も早4月を迎え、1日からフレッシュな新入社員(新人)を迎えた企業も多いことと思います。

   空前の売り手市場のなか、中堅・中小企業で迎える新人は、苦労に苦労を重ねて採用した、まさに「金の卵」ではないでしょうか。私がお手伝いをしている中堅接客小売チェーンT社でも、8人の高卒、高専卒のフレッシュな面々を迎えることとなり、3月の店長を集めた推進会議では、通常の業績進捗の議題に加えて「新入社員の受け入れについて」という議題の下、人事担当の総務部長から注意喚起が出されていました。

  • 不安がいっぱい
    不安がいっぱい

いきなりの繁忙日に「教育」する余裕なく......

   T社はこれまでも毎年10年ほどにわたって、高卒を中心として数人規模の新卒採用を継続しています。採用開始当初は1年以内に大半の新人が退職してしまうなど、受け入れ態勢として由々しき状況にあったのですが、数年をかけて私も協力をして段階的にさまざまな施策を導入して新人受け入れ体制を整備。ここ2年ほどは、ようやく1年以内退職が特殊な事情を除いてゼロになりました。

   「この状況を絶対に元に戻すな」との社長命令で、「新入社員の受け入れについて」という注意喚起が全店長宛に指示されるようになったのです。

   約10年前、大半の新人が1年以内に退職してしまった頃の状況は、こうでした。入社後まず、商工会議所主催のビジネスマナーを学ぶ新社会人研修を2日間受講後、配属先での勤務がスタートします。

   ちょうど春休みから新入学、新入社シーズンを経てゴールデンウィークまでは、T社の店頭は超繁忙期。したがって配属先での典型的な対応は、これといった教育的配慮を施す余裕もなく、先輩の応対を後ろで見て学び必要な手伝いをせよという指示があるのみ。じっと座って先輩の接客を眺めることと、繁忙であふれた補助作業の繰り返しが、ゴールデンウォーク明けまで続きます。

   1か月ちょっともこんな毎日が続くと、その時点でだいぶモチベーションが下がり、ここでやめてしまう新人もチラホラ出始めてしまいます。

   そして、繁忙期がひと段落するゴールデンウィーク明けには、いよいよ接客対応がスタート。確固たる教育もないまま、見よう見まねでの接客対応ですから、当然事務ミスも多く、ここで接客トラブルという大きな難関にぶち当たるわけなのです。

新人が身につけたのに、先輩がなってない!

   トラブルの相手が優しいお客様ならいいのですが、必ずしもそうとばかりではなく、少しご機嫌の悪い荒っぽいお客様に当たろうものなら、何の防御策も持たない新人の精神面は簡単に崩壊します。

   しかも、トラブルが発生しても周囲は我関せず状態。事が大きくなってお客様の声も大きくなり、ようやく店長あるいは副店長が応対に割って入る頃には時すでに遅しなのです。

   大きなトラブルに巻き込まれた新人たちのガラスのハートは、粉々に粉砕され、もう接客に入ることが恐怖以外の何ものでもなくなってしまうのです。ある者は翌日以降、接客が怖いと泣き出し、ある者は翌日以降、二度と出社することがなくなるなどということも。

   運よく大きなトラブルに遭うことなく生き延びた者や、トラブルにも動じない強い精神面を備えた者はごくわずか。大半の新人は1年以内に退職するということの繰り返したのです。

   そこで新人の受け入れ体制の改善で、まず手をつけたことは、自社の独自研修の開催です。業界の説明、起業の精神といったT社にまつわる基本的な話や、仕事や働くことの意味、会社組織とは何かといった会社人としての基本的な心構え、さらには業務に関する基本的な知識とこれから何をどのような姿勢で学び、どのようなT社社員をめざすべきかなどを、オリジナルの新人研修プログラムとして、私も手伝いしながら社内で考え、完成させました。

   この研修そのものは新人から大変好評だったのですが、思わぬ落とし穴が別のところに潜んでいました。

   それは、新人が研修でいろいろなことを教わり、基礎知識や基本動作を身につけて現場に出ても、肝心の迎え入れる側の先輩たちの基礎知識や基本動作がなっていない、ということでした。

   新人がせっかく身につけた知識や習慣も、先輩のそれができていないなら、「先輩は勉強してないじゃん」「先輩はやってないのか」ということになり、せっかく研修で教わったことが水泡に帰してしまうのです。

「新人を絶対に雑用係にしない!」

   そこで続いて手がけたのは、全社員の受講を必須とした社員基礎研修の実施でした。あらかじめ研修案内には「新人研修で新人が何を教わっているのか知って復習しよう」というキャッチフレーズを付して説明し、研修の目的を明確に認識してもらうこととしました。

   この研修は店長の判断で再受講が必要と思われる社員には、新人受け入れシーズン前に受講を指名するというルールで、今でも実施されています。

   受け入れ側の姿勢として最も重視したことは、「新人を育てて戦力化する」という意識を全社員に持たせることでした。

   その具体的な対応として、今回の会議でも総務部長が強調していたことが、「新人を絶対に雑用係にしないこと!」です。そのために総務部は、毎週月曜日に新人を配属した店長宛に「今週の新人教育プログラム」と称して、毎週2~3項目の業務を重点的に取り組ませるよう、具体的な教育課題を指示しています。

   これにより約1か月間で10項目程度の基本業務が身につけられ、それを翌月5月1か月はランダムに復習させることで接客デビューに向けた準備が整うという流れが確立しました。もちろん、店頭でのトラブル発生時はすぐに店長、副店長がヘルプに向かう、これも義務付けています。

   このようにしてT社では新人初年度の退職ゼロを実現しました。「何をしたらいいのか、わからない」「仕事で自分が職場に溶け込めない」「誰も自分に関心を持ってくれない」などが、期待感を抱いて入社した新人のココロが急激に冷めて、退職を考え始める大きな原因なのです。

   新人を迎える中堅・中小企業の皆様、今年も不幸な新人を生まないためにT社の試みを参考にされることをオススメいたします。(大関暁夫)

大関暁夫(おおぜき・あけお)
スタジオ02代表。銀行支店長、上場ベンチャー企業役員などを歴任。企業コンサルティングと事業オーナー(複合ランドリービジネス、外食産業“青山カレー工房”“熊谷かれーぱん”)の二足の草鞋で多忙な日々を過ごす。近著に「できる人だけが知っている仕事のコツと法則51」(エレファントブックス)。 連載執筆にあたり経営者から若手に至るまで、仕事の悩みを募集中。趣味は70年代洋楽と中央競馬。ブログ「熊谷の社長日記」はBLOGOSにも掲載中。
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