2019年 5月 23日 (木)

「オープンイノベーション」意味知ってんの? オエライ社長様はベンチャーの話を聞く耳ない(大関暁夫)

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   現在隔月で、私個人が主宰する企業交流フォーラムを開催しています。その目的は、やや使い古された言い方にはなりますが、企業間におけるオープンイノベーションの実現です。

   オープンイノベーションとは、大企業から中小、ベンチャー企業までが分け隔てなく事業協力を展開すること。特に大企業が、ベンチャー企業の新たな開発技術や独自のビジネスモデルを、自社の新たな事業展開に転用するというようなケースをもって、オープンイノベーションの典型的な成功事例をするムキが強いようです。

  • 企業交流会を生かせる社長は案外少ないかも……
    企業交流会を生かせる社長は案外少ないかも……

名刺交換後のアポイントに「音沙汰なし」

   先日、会員の紹介で当会に何回か参加されたITベンチャー企業経営S社長が、懇親会の席上で、こんな話をしていました。

「これまでも、いろいろな企業交流会に参加しています。最近は、同じようにオープンイノベーションをうたった集まりも多いのですが、実際には意外なほどに敷居が高いのです。確かに集まりによっては、ふつうではなかなか名刺交換できない方々と交流はできます。でも、話が弾むなんてことはまずありませんし、その後連絡を取ってみても大抵はなしのつぶてです。こちらは、敷居が低くて本当にありがたい。大企業のトップや幹部の方々も、皆さん非常に気さくで、お陰さまで何件もビジネスの話が進行しています」

   このような話は必ずしもS社長に限った話ではなく、多くの参加者の方々から似たようなお話が出ています。じつは交流会とは名ばかりで、中小企業やスタートアップ・ベンチャーにとっては、なかなか他社交流、特に大手企業との交流が図れないというのは、世の経営者が集まる企業交流会あるある、オープンイノベーション会合あるあるのようなのです。

   そのような経験が原因で、企業同士の交流会と名が付く集まりは「おカネと時間の無駄」と一切参加しないという経営者も少なくありません。

   私自身、交流会を立ち上げる前にたくさんの交流会に参加して、この手の集まりの研究を重ねました。当然、S社長と同じような経験も多々しています。すなわち、会合で著名な企業経営者との名刺交換後にメールでアポイントの連絡をとらせてもらっても、一切返事が来ないなどというのは、日常茶飯事なのです。

エライ社長の話は上流気取りの奥様の会話と一緒だ!

   私が自らの経験で分析をしたところ、入会資格が厳しい集まり(たとえば会合の役員企業の推薦が必要など)や、入会金や会費・参加費などが高額な集まりほど、その傾向が強くなるようです。

   それもあり、拙交流会は、「敷居も会費も低く」(「荒らし」排除で一応紹介制ではありますが)をモットーに始めることにしたのです。

   確かに、格式や会費の高い集まりほど、基本的に社会的地位が高い、いわゆるエライ経営者や成功した経営者が集まってくる傾向が強いのですが、彼らはそもそも交流とかオープンイノベーションとかの精神を持って会合に参加していないのです。

   会合の目玉である著名人らの講演を聞くついでに懇親会にも顔は出すものの、自社の話や自分の成功体験を機会があれば話してやろうという態度が基本であり、自分から他の参加者の話など聞き出そうなどとはこれっぽちも思っていない、そんな方々が大半なのです。

   よく見る光景は、ある社長が自社の取り組みを話し、それが終わると別の社長が「うちは今こうです」と話す。

   そこに話の発展はなく、会話は自然と途切れがちに。漫画の世界にありそうな、「タクの主人は大手商社勤務なもので、海外出張ばかりで『日本が一番』が口癖ですの」という話に、「タクは都市銀行の支店長。毎日接待、休日はゴルフ。偉くなるもの考えもの。健康が心配ですわ」と上流階級を気取る奥様同士の噛み合わない会話のよう。言い方は悪いですが、エゴとエゴのぶつかり合い。経営者の会話もこれと同じなのです。

「エゴ」むき出しの残念な経営者は少なくない

   米国のベストセラー作家として有名なストラテジストのライアン・ホリディ氏は、その著作「エゴを抑える技術」で、「エゴ」を「自分が重要な存在だという不健全な思い込み、尊大さ、身勝手な野心」と定義しています。

   地位や実績のある自信家は、「人の話を聞く必要もない。自分の考えでなんとかなる」と、「エゴ」を心の奥に潜ませた行動をとりがちになってしまうというのです。すなわち、格式ある会合での著名企業の社長方は、「自分の正しさ」にこだわって主張し、お互いから学ぼうという姿勢にはなからないのです。

   彼らはおそらく、社内でも同じなのでしょう。自分で判断できることは、人の意見は聞かない。そんな社長の「エゴ」を周囲に感じさせる仕事を、しているに違いありません。

   自分でもできるかもしれないことであっても、あえて他者の新しい力や若い力を借り自分は他のことに注力する。あるいは、自分で考えて前に進むことができると思うことでも、あえて他者の意見を聞きそれを取り入れてやり方を工夫してみる、それがオープンイノベーションの精神であり、これからの時代に必要な姿勢ではないかと思うのです。

   拙交流会に会員企業様のご紹介で参加された著名企業のオエライ様でも、名刺にある連絡先に参加御礼のご挨拶を兼ねたアポ取り連絡を入れても、お断りあるいは反応なしという方が時々いらっしゃいます。

   オープンイノベーションの精神のない方が間違って、参加されてしまったのだと受けとめることにして、それ以上の催促は一切しないとことにしています。またそういう方はオープンイノベーション目的の拙交流会には合わないので、まず二度と参加されません。

   ご自身の「エゴ」を取り除かれたら、もっと新しい展開があるかもしれないのにと思うにつけ、世に残念な経営者の方は意外に多いと実感させられる次第です。

   ちなみに、ライアン・ホリディ氏は「エゴそのものは悪でなく、コントロールして上手につきあうもの」と言っています。(大関暁夫)

大関暁夫(おおぜき・あけお)
スタジオ02代表。銀行支店長、上場ベンチャー企業役員などを歴任。企業コンサルティングと事業オーナー(複合ランドリービジネス、外食産業“青山カレー工房”“熊谷かれーぱん”)の二足の草鞋で多忙な日々を過ごす。近著に「できる人だけが知っている仕事のコツと法則51」(エレファントブックス)。 連載執筆にあたり経営者から若手に至るまで、仕事の悩みを募集中。趣味は70年代洋楽と中央競馬。ブログ「熊谷の社長日記」はBLOGOSにも掲載中。
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