2024年 4月 19日 (金)

【企業のためのSDGs 】「ブラック企業排除」の背景にSDGs 企業は「本業」の力で課題可決に臨め

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   SDGs(持続可能な開発目標=Sustainable Development Goals)にある「17の目標」には、平和や貧困、地球環境などのキーワードがあるが、それらの目標はそれぞれが連携していて、そのことがSDGsをわかりづらくしているようだ。

   「2019年はSDGs元年」という、企業のSDGsの取り組み促進を提唱する伊藤園顧問の笹谷秀光氏とSDGsへの理解を深めながら企業の役割を確認する。

SDGsの前に発展途上国に目線を当てた「MDGs」があった(写真はイメージ)
SDGsの前に発展途上国に目線を当てた「MDGs」があった(写真はイメージ)

「5つのP」は連携している

   ―― 「17の目標」にある「5つのP」が、それぞれ連携しているようです。

笹谷秀光氏「ええ。じつはSDGsの前に、『MDGs(Millennium Development Goals)がありました。これは2000年から2015年まで。発展途上国に目線を当てて先進国が応援するようなイメージだったのですが、SDGsを議論しているときに先進国も途上国も同様の課題があることに気づいたのです。そのため、二つ目の『P』である『Prosperity』という概念を取り入れることになりました。人類の繁栄の必須要素として、まずはエネルギー問題があります。これが、2番目の『P』の1番と7番の目標です。
たとえば、世界には電気のない、無電化地帯がまだあって、これがなかなか深刻なんですね。パナソニックは『ソーラーランタン 10万台プロジェクト』といって、ソーラーパネルにLEDライトをつけたランタンを作って発展途上国に支給しました。無電化地帯を応援する素晴らしいプロジェクトです。
その一方で、日本のような先進国では電源の安定、ブラックアウトがあっていけないので、今後の電源をどう確保していくのかというテーマがあります。これは再生可能エネルギーへの転換問題に当たります」
SDGsには「働き方改革」も含まれている(写真は、笹谷秀光氏)
SDGsには「働き方改革」も含まれている(写真は、笹谷秀光氏)

   ―― 日本の「働き方改革」にあたる目標も含まれていますね。

笹谷氏「8番目に、『働き方』があります。働き甲斐のある職場づくり。これは日本では話題の『働き方改革』のこと。かつての奴隷制度のような、人間らしくない、人を人として扱わない働き方は許さないということですね。それで昨今のブラック企業は許さないという流れが起こっているわけです。
また、ここが大事なんですが、技術力と産業革新があります。これはイノベーションと創造性がないと難しい課題の解決ができない、このあたりが企業の力がなくしては成し得ないところです。SDGSは、企業が力を発揮してほしい、本業の力でいろんな社会課題を解決してほしいのです。たとえば人工知能(AI)とか、ロボットとか、IoT(モノのインターネット)であるとか、最新技術、また医療技術、それからインフラの整備と、あらゆることに企業の本業の力に期待しています。それを課題解決につなげていくのです。
それで解決すると、10番の世の中の不平等も撲滅されていくだろうと。11番に、『住み続けられる街づくり』がありますが、技術力を街づくりに応用しますと、みなさんの住んでいる町が持続可能になるわけです。これらが『繁栄』という視点で考えたときに重要な要素になります。

地球環境をどのように守っていくのか

   ―― 地球規模の課題が含まれています。当たり前と思うような内容ですが、ポイントはどこですか。

笹谷氏「なんといっても、『Planet』、地球環境で重要な要素が気候変動です。なかでもCO2(二酸化炭素)排出量の問題が看過できないところに来ています。身近なところでいろいろな異常気象が起こっているのを肌身に感じはじめていると思いますが、世界中で気候変動対策を本格的に実行するときなのです。そこは『待ったなし』だと思いますし、企業が取り組めることがたくさんあるのだと思います。
この課題を身近なことに置き換えると、その一つが12番の『つくる責任、使う責任』になります。読者のみなさんの立場でいえば、モノをつくる方も、使う方もいますよね。ここで大事なのは、使う方はつくる方が持続可能なつくり方をしたモノを選びましょうということ。それが使う方の責任になります。だから、社会や環境にいいモノを選びましょうと。なので、たとえば資源のリサイクル、循環型社会の構築が必要になりますよね、となるわけです。
14番に『海洋生物の保全』、15番には『生物多様性の保全』があります。人類だけでない、地球上の多様な生物と共生していきましょうという、しごく当然のことです。
これらが地球環境の必須要素ですが、仮にこれがうまくいったとしても、次の『peace(平和)』が確保できていないと、世界は崩壊します。平和にはルールを守りましょうという、公正性が伴わなければなりません。ルールを守らない世界は、治安は荒れ、健全な社会や市場が育ちません。つまりコンプライアンス(法令順守)も、ここに含まれます。 そして、こうした課題はとても難しく複雑なので、みんなで連携を組み、その仕組みを考えていきましょうということで、5つ目の『P』の『partnership』の目標があるのです」

   (つづく)

(会社ウォッチ編集部)

プロフィール
笹谷 秀光(ささや・ひでみつ)
伊藤園 顧問 CSR/SDGコンサルタント

1976年東大法卒。77年に農林水産省入省。2005年環境省大臣官房審議官、06年農林水産省大臣官房審議官、07年関東森林管理局長を経て、08年に退官。伊藤園入社。10〜14年取締役、14〜18年常務執行役員。18年5月から、現職。
19年4月から、社会情報大学院大学客員教授。
31年間の行政経験と10年のビジネス経験を活かし、企業の社会的責任、地方創生などのテーマを考える。特に企業ブランディングと社員士気の向上を通じて企業価値を高めるための理論と実践について、アドバイザー、コンサルタント、講演などを幅広くこなす。

清水一守(しみず・かずもり)
清水一守(しみず・かずもり)
一般社団法人SDGs大学 代表理事/公益財団法人日本ユネスコ協会連盟・ユネスコクラブ日本ライン 事務局長/英国CMIサスティナビリティ(CSR)プラクティショナー資格/相続診断士
日本大学文理学部を卒業。大学では体育を専攻。卒業後、家業である食品販売店を継ぐも新聞販売店に経営転換。地域のまちづくりとして中山道赤坂宿のブランド化を推進した。その後CSR(企業の社会的責任)の重要性を学び、2018年7月から名城大学で「東海SDGsプラットフォーム」として月2回の勉強会を開催中。SDGsを広めるための学びの場として2019年9月に一般社団法人SDGs大学を開校。現在、SDGs認定資格講座やSDGsイベントなどを開催中。
岐阜県出身、1960年生まれ。
一般社団法人SDGs大学
SDGsを広めるために、誰もが伝道師となるような認定資格講座を3段階で設定。SDGsを学ぶきっかけの資格としてSDGsカタリストから始まり、その上位資格としてのアドバイザー資格、さらにカタリストを育成するカタリストトレーナー資格を設け、2015年9月の国連サミットで採択されたSDGsを他人事ではなく、『ジブンゴト』としてとらえ、実践していけるようにSDGsの研究・周知・教育を行っています。校訓として学び・実践・達成・及人を掲げ、物心両面の幸せを追求し、真の『自分ごと』を探求できる学びの『場』として、誰もが参加ができるインラインによる「SDGs大学プラットフォーム」、「SDGsキャンプ」などのセミナー、イベントを提供しています。
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