2024年 4月 24日 (水)

【外国人に聞く!】働くことは暮らすこと あなたは「外国人街」を受け入れられますか?

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   2019年4月から、外国人労働者の受け入れが拡大された。日本の雇用事情は、深刻な人手不足に見舞われ、それによる企業の倒産まで起きている。政府は、その人手を外国人労働者に求めた。

   そんな日本の厳しい雇用情勢を、外国人労働者はどう見ているのか。日本人との賃金格差や生活習慣の違い、もちろん言葉もそうだ。「障壁」は低くない。そう考えると、外国人労働者も、「よろこんで!」というわけにはいくまい。

   現在、日本で活躍している外国人は、今回の「受け入れ拡大」をどのように見て、受けとめ、なにを思うのか――。シリーズ「外国人に聞く!」の第1弾は、日本でインド料理店と旅行代理店を経営するインド人のバット ロマシュさんに聞いた。

  • 外国人労働者が暮らしていける環境がつくれるか(写真は、東京・秋葉原)
    外国人労働者が暮らしていける環境がつくれるか(写真は、東京・秋葉原)
  • 外国人労働者が暮らしていける環境がつくれるか(写真は、東京・秋葉原)

「できる仕事が広がること」はいいけれど......

   バットさんは、「外国労働者を積極的に受け入れることは喜ばしいこと」としたうえで、「ただ、(数値目標の達成は)そんなに簡単なものではないでしょう」とみている。

   政府が定めた外国人の受け入れ拡大には、14の業種(特殊技能1号)と業種ごとに受け入れ人数の目標(在留資格による受け入れ見込み数)が設定されている。

   たとえば、介護業は初年度に5000人を受け入れ目標とし、5年間の累計で5万~6万人を受け入れるとしている。ビルクリーニング業は2000人、累計2万8000~3万7000人、宿泊業は950~1050人、累計2万~2万2000人、建設業は5000~6000人、累計3万~4万人、飲食料品製造業は5200~6800人、累計2万6000~3万4000人といった具合だ(政府試算)。

   ただ、どの業種も仮にこの目標人数に到達しても、人手不足は解消しない。介護業は初年度に約6万人の不足が試算されており、5万5000人も足りない。ビルクリーニング業は初年度6万人が不足するところの2000人なのだから、砂漠に水を撒くようなレベルなのだ。

   初年度の計画では、合計で58万6400人が足りないところ、3万2800~4万7550人を受け入れ、5年間の累計で145万5000人のところ、最大34万5150人を受け入れる。

   バットさんが言うように、「門戸が広がった」ということにすぎないわけだ。

制約が多すぎて機動的でない

   外国人労働者の受け入れ拡大の「ハードル」の一つは、仕事に「制限」があること。バッドさんは、「雇う側としては受け入れる業種を広げてくれるっていうのはありがたいと思いますが、『特殊技能』で制限されてしまうと、逆に受け入れられないということも結構あると思うんです」と指摘する。

日本でインド料理店と旅行代理店を経営するインド人のバット ロマシュさん
日本でインド料理店と旅行代理店を経営するインド人のバット ロマシュさん

   たとえば、ある食料品の製造・販売会社に、外国人が勤めることになった。しばらく販売員として働いていたが、工場勤務に異動させたい。ところが、食品製造は特定技能での受け入れに当たるため、やらせる仕事が制限される。つまり雇った外国人労働者を機動的、効率的に働かすことができない可能性があるわけだ。

   なぜ、このようなことが起こるのか――。それは改正出入国管理法で新設された「特定技能」制度は、すでにその分野の技術を持った人が働き手の対象となっているためだ。「技能実習」は、技能のない外国人に日本で学んでもらい、母国でその学んだ技能を活かす制度だが、「特定技能」はすでに技術を持った外国人が日本でその技能を活かして働いてもらう制度。そのため、改正入管法は外国人労働者の転職を認めているが、「特定技能」で就労している外国人が他の業種へ転職する場合、転職先が指定する技能試験(14分野)を受験して、合格する必要がある。

   日本人が転職するような、簡単な話ではない。まったく別の業種(分野)への転職はもちろん、同じ企業のグループ会社や職場の異動すら、容易でないかもしれないのだ。

   バットさんは、「どこか、わかりづらいですよね。たとえば日本人がやったほうがいい作業は日本人がやるべきでしょうし、外国人ができることは外国人がやる。そのような働き方ができれば、(外国人労働者が)働きやすく、また定着しやすくなるのだと思います」と話す。

「仕事のことは教えても、生活のことは面倒見ない」

   こんなトラブルもある。外国人材を仲介する、ある人材派遣業者によると「東京都内での研修後、地方の工場に派遣する外国人労働者のうち、何人かは1週間ももたない」と、明かす。

「東京があまりに便利なため、地方での住まいと工場の往復だけの暮らしがイヤになってしまうんですね。なかには逃げ出していなくなってしまう外国人労働者もいる。もちろん、放っておけないので、連れ戻しに出かけなければなりませんし、そのコストはバカになりません」(人材派遣業者)

   バット ロマシュさんは、「働くということは、そこで暮らすことです。生活習慣はもちろん、文化や習慣の違いは日本人と外国人とでは雲泥の差があります。ここが一番の問題。外国人労働者の場合、数人で一緒に暮らしていることが多いのですが、ポンと連れて来られて『はい、ここでやってよ』って放り出されちゃう。仕事のことはきちんと教えても、生活のことは済む場所さえあればいい、あとは知らないっていう感じです」という。

   門戸は広げたものの、現実の日本社会は外国人労働者に、さほど寛容ではない。

   法務省が2019年3月22日に発表した「平成30(2018)年末現在の在留外国人数」で、都道府県別の在留外国人数をみると、最多は東京都の56万7789人で、前年末と比べて5.6%、3万287人増えた。全国の20.8%を占める。

   次いで、愛知県の26万0952人 (前年末比7.4%増)、大阪府の23万9113人(4.7%増)、 神奈川県の21万8946人 (7.1%増)、埼玉県の18万762人(8.1%増)と続く。

   バットさんは、東京・西葛西に住んでいる。ここ西葛西は「インド人街」が形成されるほど、インド人が多く住む町。このほか、自動車工場が集積する群馬県太田市のブラジル人街や、埼玉県川口市の中国人街などが有名だが、こうした「コミュニティ」が必要と、バットさんは指摘する。

「セーフティーネットという意味でのコミュニティが必要で、ここを行政や企業が主体的に進めてもらえれば、定住する外国人労働者も出てくると思いますよ」
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