2019年 6月 26日 (水)

先行き不透明な「令和」 若者は平成時代から「終身雇用」をアテにしてない(気になるビジネス本)

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   令和の時代の幕開けにビジネス界のリーダーたちから、新時代が雇用の転換期になることを予感させる発言が相次いだ。

   日本企業の伝統である「終身雇用」について「制度疲労」「守っていくのは難しい......」と。発言はさまざまに取り沙汰されて、そのインパクトは大きいようだが、平成の時代から若者たちの多くはそのことに気づいており、終身雇用など、とっくにアテにはしなくなっているのだ。

「起業家のように企業で働く 令和版」(小杉俊哉著)クロスメディア・パブリッシング/インプレス
  • 企業で起業家として働いて次に備えるのが現代のビジネスマン
    企業で起業家として働いて次に備えるのが現代のビジネスマン

経団連会長、トヨタ社長が相次ぎ発言

   「起業家のように企業で働く」は2013(平成25)年に、若者の就業マインドの変化の変化をとらえて刊行された。就職した企業の力を活用すれば、当時もてはやされていた起業家のように働けることを説いてヒットし、14刷を重ねるロングセラーになった本だ。起業家のように働くうえで、滅私奉公的な勤務の見返りである終身雇用などは眼中になく、視線の先に据えるべきはステップアップの転職や独立だ。

   平成時代の後半にかけては、働き方改革など政策の転換もあり雇用環境が変化。人材側も伝統的就業意識は薄れているというわけで、現実には終身雇用はすでに前提ではない。雇用側から言われる前から、新時代に働き方がさらに変わるのはわかっていた――。「起業家のように企業で働く 令和版」は時代の転換を見越して、一層「起業家のように働く」ことが、人材側に対する時代の要請であると説く。

   ゴールデンウイークが終わってすぐに、日本経済団体連合会の中西宏明会長(日立製作所会長)が「制度疲労を起こしている」と指摘。それを受けるかのように、トヨタ自動車の豊田章男社長が「守っていくのは難しい局面に入った」と述べ、遠くない時期に制度として放棄する可能性をあることをにおわせた。ふたりの発言はさまざまに取り沙汰され、インターネットでは若者らが不安の声をあげている。

   そんな若者たちに対しては、本書はこう突き放す。

「いまや企業は、採用した人材を定年まで面倒みるなどということは前提としていない。企業経営に対して貢献していない人を長期的に雇い続けるほどの余裕はもはやない」

「シリアルアントレプレナー」の時代

   著者の小杉俊哉さんは、1958年生まれの慶應義塾大学大学院理工学研究科特任教授。早稲田大学法学部卒業後にはNECに勤務し、その後、米マサチューセッツ工科大学スローン経営大学院修了、マッキンゼー・アンド・カンパニーインクを経て、ユニデン、アップルコンピュータでそれぞれ人事総務部長、人事総務本部長を務めた。その後は、教壇に立つほか複数社で社外取締役も務めている。

   「私は四つの会社を経験して独立した。さまざまな企業での経験があったからこそ、今独立してやっていけるのだといえる。だからといって、転職したほうがいいよ、というように勧めるつもりはない。一つの会社で、ハッピーに生涯過ごせるのであれば、それも素晴らしいことだ」と小杉さん。だが、現実には大学を卒業して就職した人のうちの3割近くが3年以内で辞めていき、また中には最初から3年間と決めて就職する新入社員もいるという。

   キャンパスで学生と過ごす小杉さんは、人事部門の管理職を務めた経験からも、大学生の就活や企業動向には関心が高い。その目でみた就活状況によると、この数年は、特に意欲が高く優秀な人材の行動が大きく変化しているという。

   前著「起業家のように企業で働く」を上梓した6年前は、就職人気ランキングで上位を占める金融・保険を中心とする、いわば一流企業に就職することが「王道」だったそうだが、それがいまでは傾向が大きく変わってきているという。

   かつてはメガバンクがさらっていった「高い意欲の優秀な人材」の志望は、戦略コンサルティング会社や外資系企業にシフト。彼らの眼中には「終身雇用」などはなく、新卒でそれらの会社で起業などを学び、そして自ら起業し、それを売却、そして次の起業にかかる「シリアルアントレプレナー」だという。

就職した会社がなくなってしまう

   平成時代には、電機メーカー各社が経営難の嵐に見舞われた。かつては液晶のトップランナーであり、テレビの「亀山モデル」で一世を風靡したシャープだったが、大規模投資があだになり赤字続きで台湾の企業に買収された。その後、短期間でV字回復を果たしたが、それは「日本流とは異なる相当厳しいマネジメントが行われた」ことを意味するものだ。三洋電機は業績悪化からパナソニック(当時は松下電器産業)に友好的に買収されたが、このとき10万人いた社員のうち働き続けられたのは7000人にとどまったという。

   また、東芝は不適切な会計処理で屋台骨が揺らぎ、いまだ再生の途中。これまでに、東芝メディカルシステムをキヤノンに、東芝ライフスタイルをマイディアグループに売却するなど3万人以上の削減を実施した

   エレクトロニクス系や、金融機関でも買収や合併が繰り返され、近年では製薬業界でその動きが盛んだ。「自身が入社時についた職種から別の職種に変わらされるというのは、日本企業の場合は以前からありうることだった。しかし、自身が入った企業ではない、それも結果的に外資系あるいはファンド傘下で働くことになる、という変化はかつてはなかった」ものだ。

   産業界の「平成史」をみれば、終身雇用が「制度疲労」をきたしているのは間違いない。製品やサービスはますます多様化するだろうから、合併や統合、目的に応じた分社など合従連衡が盛んになり、制度として維持していくことは確かに難しそうだ。企業に依存せず暮らせるよう、起業家のように働くことを学んでも損はない。

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「起業家のように企業で働く 令和版」
小杉俊哉著
クロスメディア・パブリッシング/インプレス
税別1380円

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