2019年 11月 17日 (日)

【日韓経済戦争】泥沼へ 「日本人のトラウマ」サリンまで利用するのか! 韓国紙で読み解く

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   日韓の経済戦争が泥沼化の様相を呈してきた。文在寅(ムン・ジェイン)韓国大統領は2019年7月16日、日本政府の輸出規制を「韓国への重大な挑戦だ」を激しく批判。一方、日本側は韓国が求める協議には一切応じない構えだ。

   こんななか、韓国紙も次第にヒートアップの度を強めている。大手韓国紙を読み解くと、日本では報じられない韓国の裏事情が見えてくる。

  • 韓国メディアが「倉庫会議」と報じた日韓実務者会議。韓国側代表(右)の後方に山積みされたパイプ椅子が見える(ハンギョレ日本語版オンライン12日付紙面より)
    韓国メディアが「倉庫会議」と報じた日韓実務者会議。韓国側代表(右)の後方に山積みされたパイプ椅子が見える(ハンギョレ日本語版オンライン12日付紙面より)

「我が国代表に物置で会うとは!」韓国紙が激怒した実務者会談

   これまで比較的クールな反応が多かった韓国紙を一斉に激怒させたのは、7月12日に経済産業省の会議室で開かれた日韓の実務者による「説明会」だった。韓国紙はこれを「倉庫会議」あるいは「物置会談」と報道し、日本側の「無礼な対応」に怒りを向けた。倉庫や物置のようなひどい場所で、韓国の代表に対応したという意味だ。

   ハンギョレ(12日付)は「『輸出規制』後初めて実務会議...殺伐とした会議室、握手もなし」という見出しで、殺風景な会議の写真を大きく載せ、こう報道した=メイン画像参照

「日本政府関係者は整頓されていない会議室で韓国代表を迎えるなど、韓国にきわめて冷ややかな態度を示した。交渉のテーブルには、韓日の交渉担当者たちの名札もなかった。日本の代表は韓国の代表を待ちながら、終始正面だけを見つめていた。韓国の代表が入ってきても立ち上がらなかった。両者はあいさつも名刺交換もしなかった。会議の場所も整頓された所ではなかった。テーブルと簡易椅子が一隅に積み上げられ、床には機材の破損の跡が残っていた」

   朝鮮日報(13日付)の「社説:日本の意図的な冷遇に韓国政府・国民は冷静に対応すべき」もこの異常な会議の模様をこう伝える。

「テーブルの横に置かれたホワイトボードには『輸出管理に関する事務的説明会』と書かれていた。『韓国政府が今回の措置を気にしているので説明するに過ぎない。韓国の主張は聞かない』という意味だ」
「海外からの訪問者を迎える時には『おもてなし』を前面に出す日本で、実務担当者クラスの人間が自らの判断でこのように失礼な対応をするとは考えられない。上からの指示に従い徹底して計算された冷遇だ。それに対して我々が興奮すれば、日本の意図に巻き込まれる恐れがある」
「冷静かつ落ち着いて対処しなければならない。韓国社会の一部では日本製品の不買運動が始まっているが、これは何のプラスにもならない。日本は韓国政府と韓国国民がどのような態度を取るか計算している。その計算とは違った行動を起こさねばならない」

「狡猾な日本政府の陰にトランプ大統領がいる」

安倍晋三首相
安倍晋三首相

   こうした日本側の冷遇の狙いについて、中央日報(17日付)は「コラム:韓国は日本をあまりにも知らなすぎる」で、こう注意を呼びかけた。

「韓国実務団を冷遇する日本を見て、22年前の苦い記憶が脳裏に蘇った。通貨危機当時、筆者は東京特派員として、『日本の悪い癖を直す』と言った金泳三(キム・ヨンサム)政権のその後の悪影響を現地で目撃した。1997年11月、韓国の副首相が日本の大蔵大臣に会って緊急資金支援を要請したがけんもほろろに断られた。米国財務省がすでに大蔵省に『金を貸すな』と手を打っていた。大蔵大臣は『日本の単独支援は難しい』と繰り返すのみだった。先週末の日本の冷遇も米国との事前共感や最小限の黙認があったとみるべきだ」

   日本の冷たい仕打ちに背景に米国の暗黙の了解があるというのだ。そもそも、今回の日本の輸出規制の背景には、米国の経済戦略があると指摘するのは、朝鮮日報だ。10日付「輸出優遇除外:米国の沈黙は『計算づく』か」は、「日本の経済報復で韓国企業が不振に陥った場合、半導体で米国が『漁夫の利』を得る」としてこう書いている。

「日本の経済報復が拡大する兆しを見せる中、仲裁の鍵を握る米国の沈黙が長引いている。日本との事前のコンセンサス、自国の半導体産業への反射利益などを計算した『戦略的沈黙』ではないか。専門家は、韓国がトップの競争力を持つ半導体やディスプレーの供給が途絶えても、米国のIT産業に及ぶショックは大きくないだろうとみている。100%の代替が不可能な製品は最上位クラスに限定されるからだ。スーパーコンピューターやデータセンターに使われる高性能半導体、自動走行車両・スマートフォン用に開発された半導体くらいだ。残りは独自調達したり、中国企業から供給を受けたりできる。韓国半導体メーカーの不振は、米国企業にとっては福音となり得る」

   そして5月、6月の安倍首相とトランプ大統領との度重なる会談で、今回の措置に関する話し合いが行なわれた可能性が高く、トランプ大統領の了解もなく、安倍首相が日米韓の三国同盟にひびが入る強硬手段に出るなどあり得ないというわけだ。

NHKが火をつけた「サリン」「北朝鮮」騒動

   もう一つ韓国メディアが激昂しているのは、日本側が「韓国企業が北朝鮮にサリンの原料を流している」と非難していることだ。正確には、日本政府は何も言っていないが、一つの報道をきっかけに情報がメディア間をキャッチボールされ、雪だるまのように膨れ上がってしまった。きっかけを作ったのはNHKの9日夕方の「輸出規制 韓国から他国に原材料渡るリスクを懸念 日本政府」という「スクープ」だった。NHKはこう伝えた。

「政府が、韓国に対する輸出規制を厳しくした背景には、韓国側の貿易管理の体制が不十分で、このままでは化学兵器などにも転用される可能性がある物資が、韓国からほかの国に渡るリスクが排除できないという懸念があったことが、関係者への取材で分かりました。関係者によりますと、これらの原材料は化学兵器のサリンなどに転用される可能性もあるにもかかわらず、一部の韓国企業が発注先の日本企業に急いで納入するよう迫ることが常態化していたということです」

   この報道に関し、日本政府は一切コメントしていないが、翌10日には最も激しく日本を攻撃するハンギョレの見出しが踊りあがるありさまだ。「韓国に対する輸出規制の論理に『サリン』を持ち出した日本の狙いは? WTO協定違反の指摘を回避でき『オウム真理教トラウマ』刺激し世論に有利」

   ハンギョレは、オウム真理教の集会の写真を大々的に扱って、こう報道した。

「日本が、韓国への輸出規制の理由として、一部の物品が毒ガスのサリンに転用される恐れがあるという論理まで持ち出した。日本の世論をコントロールするために自国の人々の『サリン毒ガスフォビア(恐怖症)』と反北朝鮮世論を活用しているのではないかとの指摘が出ている。サリンは、1990年代にオウム真理教が大量に散布し多数の人命を殺傷した毒ガスとして有名だ。このために日本社会でサリンは極度の嫌悪を呼び起こす物質だ」
「安倍晋三首相は7日、(フジテレビで)『韓国は (北朝鮮に対して)ちゃんと貿易管理をしていると言っているが、徴用工問題について国際的な約束を守らない。貿易管理も守らないと思うのは当然だ』として、北朝鮮問題と今回の規制を連結するニュアンスの発言をした。これは、北朝鮮問題では事実上反論や批判が難しい日本の情緒を念頭に置いた布石と読み取れる」

   要するに、日本人の2大トラウマであるサリンと北朝鮮を結びつける安倍首相の巧妙な世論対策だというのだ。

文在寅大統領の母校で起こったトンデモ反日運動

文在寅大統領(青瓦台動画より)
文在寅大統領(青瓦台動画より)

   すると、そこへ「日本こそサリンの原材料を北朝鮮に輸出している証拠をつかんだ」とする国会議員が現れて記者会見、混乱に拍車をかけた。これをまたハンギョレが大々的に報じるありさま(11日)。

「国会国防委員会所属の正しい未来党ハ・テギョン議員は11日、国会政論館で日本が過去にフッ化水素などの戦略物資を北朝鮮に密輸出した事実が、日本の安全保障貿易情報センター(CISTEC)の資料で確認されたと明らかにした。日本が、韓国政府がフッ化水素を北朝鮮に搬出したという疑惑を提起したなか、逆に日本から核開発・生物化学兵器に使われうる戦略物資が密輸出されたという主張が出てきた」
「日本で1996年から2013年までの17年間に、30件を超える対北朝鮮密輸出事件が発生。この中には、核開発・生物化学兵器に活用されうる戦略物資が含まれている。ハ議員は、記者会見で『目糞鼻糞を笑うというようなものだ』とし、『日本は感情的な対応を自制すべきであり、ごり押し主張をすればするほど国際社会から孤立するだろう。日本は直ちに不当な輸出規制を撤回せよ』と声を高めた」

   このようにエキサイトする反日の国民感情のなか、ついに高校生にまで広がった動きを、朝鮮日報(17日)は「文大統領母校の生徒ら、『親日校長の像』撤去を求め国民請願」で、こう紹介している。

「文在寅(ムン・ジェイン)大統領の母校である釜山市の慶南高校の生徒らが16日、校内に設置されている同校の初代校長である安竜伯(アン・ヨンベク)氏の胸像撤去を求めて大統領府国民請願を行った。慶南高校3年生と名乗る人物が『校庭には恥ずべき胸像が置かれている。親日派の胸像を校庭に置くのは、親日派を容認するという意味に他ならない。文大統領様、後輩たちの意見に耳を傾けてください』などと訴えていた」

秀吉の侵略、植民地の反乱であおる文政権の幹部たち

   じつはその国民感情に、一番火に油を注いでいる存在が文在寅政権の幹部たちなのだ。豊臣秀吉の朝鮮侵略や日本の植民地時代の「反日運動」を引き合いに出す危険性を各メディアが指摘する。朝鮮日報(15日)の「社説:解決策を提示せず国民の反日感情に火をつける韓国大統領府」はこう苦言を呈する。

「韓国大統領府の金鉉宗(キム・ヒョンジョン)国家安保室第2次長は米国から帰国の際、『1910年の国債補償運動を行った時のように、今こそ一つとなって危機を共に克服しなければならない』と述べた。文在寅大統領も先週、全羅南道庁で『全羅南道住民は李舜臣(イ・スンシン)将軍と共にわずか12隻の船で(日本から)国を守った』と述べた」
「韓日間の対立を念頭に、420年前の李舜臣将軍に言及するとはどういうことか。韓国大統領府のチョ・グク民政主席も東学農民革命を素材とした歌『竹槍歌』についてフェイスブックで言及した。外交対立の解決策を提示するのではなく、国民の反日感情に火をつけようとしているのだ」

   ちなみに、李舜臣将軍は秀吉の侵略(文禄・慶長の役)で朝鮮水軍を率いて日本軍と戦い活躍した「救国の英雄」だ。国債補償運動とは、植民地時代の韓国で、国民の自主的な募金活動によって、日本からの借金を返済し、経済的独立を守ろうとした一大国民運動だ。また、東学農民革命とは、李王朝に対して農民300万人が竹やりで蜂起、それを日本軍が鎮圧、数万人を虐殺したとされる反乱だ。いずれにしろ、日本が敵役の歴史的大事件である。それを、文在寅政権の要人たちが国民にアピールし始めたのだ。

日本のメディアにも注文する韓国紙

   韓国政府を批判する一方で、日本のメディアに対する、八つ当たり的な注文も散見される。中央日報(12日)「サリンガス・VX...嫌韓あおる日本メディアの『難癖祭り』」はこう報じている。

「日本の一部マスコミが相次いで韓国に難癖をつけ、そうでなくても冷え込んでいる韓日関係をますます悪化させている。フジテレビは今月10日、『韓国政府が、北朝鮮が金正男(キム・ジョンナム)を暗殺する時に使ったVX神経ガスの原料と核兵器開発に使うフッ化水素を密輸出した』とし「韓国が武器に転用できる戦略物資を密輸出した事例が4年間で156件に達する」と報じた。フジテレビが「単独入手」したかのように報じた根拠は、産業通商資源部が5月に国会に提出した資料だ」
「韓国政府が密輸出をあらかじめ摘発したものを『透明に』国際社会に公開した内容だ。摘発件数が多いという理由で問題を提起するなら、(摘発件数が最も多い)米国の制度を信頼できないということになる」
「これに先立ち、国営放送NHKは9日、『化学兵器のサリンなどに転用される可能性もあるにもかかわらず、一部の韓国企業が発注先の日本企業に急いで納入するよう迫ることが常態化していた』と報じた。だが、日本から輸入するエッチングガスは「高純度(99.999%)」だ。化学武器は「低純度(純度97%前後)」でも十分に作ることができる。高価で手に入りにくいうえ、輸出入通関も難しい高純度エッチングガスを化学武器づくりに使う理由がない」
「さらに大きな問題は、日本メディアの『難癖つけ』式報道を安倍首相や日本の高位官僚がそのまま反復再生産している点だ。事実(ファクト)に基づいた報道で両国が互いに資する最善の道を探さなければならない。フェイクニュースで嫌韓感情をあおっていては、良心ある日本人はもちろん国際社会からの信頼も得ることはできない。これはいらぬ難癖ではない」

   そのうえで、中央日報は日本メディアの論調を引きつつ、韓国側の「反省」すべき点も忘れない。16日付コラム「日本進歩メディアの毎日新聞も『輸出規制は文政府への不信表現』ではこう指摘する。

「むかしアメリカに『NO』と言える日本、いま韓国に『NO』と言える日本――。進歩的な色彩が強い毎日新聞のコラムがこのようなキーワードで整理した。同紙は「韓国の政権が代わるたびに『国民と寄り添う措置を』とか、『謝れ』とか言われ、また対応......という悪循環を断ちたい。韓国とは対等な主権国家同士、友好的かつ健全な関係を築く時」という日本政府高官の言葉を引用した」
「続いて、日本人の多くは文在寅政権に不信を抱いているとし、韓国との融和を急がず、不信を明確に伝え、関係を結び直す。その第一歩だとすれば、輸出規制には意味があるとした。また、今回の輸出規制措置の背景にある徴用裁判に対しては『日韓基本条約は無欠の合意ではない。紛争は後代の政治の知恵で超えよ――という含みがある』としながら両国間の協議を促した」
「やはり進歩志向の朝日新聞が実施した世論調査でも、今回の措置が『妥当だと思う』と回答したのは56%、『思わない』が21%だった。安倍内閣を支持しない層でも『妥当だと思う』が43%で、『思わない』の36%を上回った」

   安倍政権に批判的な日本国民も、今回の措置を支持する人が多いことを、率直に反省すべきだというのだ。

最後の導火線になりそうな「従軍慰安婦」映画

   ところで、火に油を注ぎそうな要素がもう1つある。7月25日に韓国全土で従軍慰安婦のドキュメンタリー映画「主戦場」が公開されるのだ。これまでの従軍慰安婦映画と異なるのは、監督が日系米国人のミキ・デザキ氏であることだ。さらにデザキ氏は、「慰安婦」被害者を支援する団体だけではなく、慰安婦の「存在自体を批判する日本の右派言論人まで取材、計30人余りのインタビューで構成している。タイトルの「主戦場」とは、日韓の激しい論争を意味しており、この映画が韓国の観客にどれだけ強いインパクトを与えるか。

   ハンギョレはデザキ氏にインタビュー、「慰安婦めぐる論争扱う映画『主戦場』韓国で公開 米国にまで戦場を拡大する日本の右翼にも照明を当て 監督『強制徴用判決に対する日本の経済報復は残念』」(16日)でこう書く。

「映画は、彼らが互いの主張を反論・再反論させる方式で慰安婦問題を眺める新しい観点を提示する。タイトルの通り『戦場』を彷彿とさせる激しい論理争いが噛みつき合いながら進められる。デザキ監督は『安倍首相が話題を作ってくれて映画に対する関心が高まったことに感謝を伝えたい。安倍首相が映画を観るなと発言したことも広報に大きく役立った』と笑った」
「映画は被害当事者女性たちを前面に出して彼女らの歴史を歪曲することを批判する代わりに、慰安婦問題を否定する日本の右翼らが根拠に掲げた文書などを緻密に追跡し、一つひとつ反論する。慰安婦強制連行の真実、彼女らに対する人身拘束と性奴隷化だったかどうかをはじめ、20万人と推算される慰安婦の数字の不正確さなど、やや敏感な部分まで引き出している」
「『彼女らはただの売春婦に過ぎず、報酬も相当もらったということがわかります』『なぜこんなに多くの人がばかばかしい問題に過度な関心を持つのでしょう。やはりポルノ的な関心を感じるんでしょうか』。日本の右翼の代表的な論客である櫻井よしこ、自民党議員の杉田水脈、親日米国人弁護士のケント・ギルバート、日本最大の右翼団体『日本会議』の加瀬英明まで...。監督は日本の右翼が吐き出す『妄言』をこの上なく明快に論理的に反証していく」
「日本の極右勢力の本山である日本会議があり、安倍政府の閣僚の85%が日本会議の議員連盟に所属している。安倍首相の祖父が真珠湾攻撃を行った東条英機内閣の閣僚でA級戦犯だった岸信介であることを思い起こせば、根深い日本の右翼の歴史地図が描かれる...」

   じつは「主戦場」は今年4月、日本で先に公開されている。6月14日付朝日新聞「慰安婦映画、異例のヒット 全国44館に広がる」によると、

「(櫻井よしこ氏ら)一部出演者が『承諾なく出演させられた。監督にだまされた』として、上映中止を求める事態も起きている。東京の単館公開では、満席や立ち見に。上映後には拍手が起き、ツイッターで『いま見るべき』『日本のヤバさがわかった』などと感想が投稿された」

という映画だ。韓国中を刺激するのは間違いないようだ。

(福田和郎)

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