2024年 4月 25日 (木)

自己啓発を「否定」した自己啓発書 自分自身に置き換えてブレイクダウンすることが大事

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   最近、簡単に読めてしまう自己啓発や成功本が増えたように思います。内容は酷似しており、著者もなんだかうさん臭い人が少なくありません。

   最近、悪い意味で印象に残っているのは、「売り上げに悩んでいるなら靴を新調しよう。新品の靴は新しいお客様の元にあなたを案内する」というものでした。数年前、長財布を新調するとお金持ちになるという説が流行りましたが、それに近い衝撃でした。

   手元に、自己啓発を否定した自己啓発書があります。もちろん、いまお話したような内容ではありません。ビジネスパーソン向けに書き下ろされた、辛口メッセージに特徴がある一冊です。

「自己啓発って言いたくないけど、でも誰かを啓発する言葉」(了戒翔太著、写真・本間寛)かざひの文庫
  • 自己啓発、やってます?
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ネガティブ思考を受け入れよう

   著者の了戒翔太さんの主な経歴は、5年前にClover出版を創業。代表取締役社長でしたが現在は退任して、出版販促プロデューサーや、自らCDを発売したり、ライブを行ったりと活躍するミュージシャンであり、アーティストのプロデューサーの職にあります。

   一般的に「ネガティブ思考」は、リスクとされます。ネガティブ思考によって、思考にフィルターがかかり、正しい理解ができなくなるからです。

   自己啓発書や仕事術の本には、ネガティブ思考の弊害がこれでもかと書かれています。しかし、私たちは聖人君子ではないので、ネガティブな思考を排除することはできません。ではどうすればいいのでしょうか――。

   了戒さんは、こう説きます。

「その第一歩は、ネガティブな感情をすべて受け入れることです。ネガティブ思考になることは当然のことと考えて、ネガティブと仲良くすればいいのです。『マイナスな言葉を口にしてはいけない』と教える人もいますが、溜めとこむと、余計につらくなります。自分の気持ちや感情に素直に向き合うことが大切です」

   筆者はアセスメントの専門家でもあるので、わかりやすくネガティブ思考を解説してみます。ネガティブ思考というのは、抑鬱性が低い状態のことを言います。抑鬱性を改善するには「楽観性」や「セルフエフィカシー(自信)」などの素養が必要になります。

   しかし、「楽観性とセルフエフィカシーを改善しよう」と言われても簡単にはできません。

   この場合、ネガティブ思考を受け入れて阻害要因を導き出すことが大切です。何らかの問題が発生しても、「これは必要なことだ」と転換すれば楽になります。

   間題とは、それを感じる本人が自らつくり出すもので、自分がより自分らしく生きられるように起きるものと考えることができます。

   すべての問題は自分の捉え方の問題です。つまり、了戒さんの考え方はアセスメント的な視点から鑑みても正しいと判断することができます。

自己啓発で自己を啓発させるには?

   自己啓発は薄っぺらい言葉のカタマリなので、そのまま飲み込んでも大した意味を成しません。

   たとえば、ギャンブル癖のある人がいたとします。「ギャンブルをやめろ!」と言ったところで、本人が問題を理解しなければやめることはできません。この場合は、「ギャンブルをそのまま続けたらどうなってしまか」という視点が必要です。

   すると「ギャンブルで家族との時間が取れなくなる」「ギャンブルで貧しくなる」といった答えがでてきます。そこからさらにブレイクダウンすると、「最悪の場合、家族がバラバラになってしまうかしれない」といった答えが導き出されるはずです。

   次に、「ギャンブルをやめると、どんなに素晴らしいことがあるのだろう」と考えて見ます。「家族の時間をより多く作れる」という答えが出てきます。「家族との時間ができると、何がいいのだろう?」と考えれば、「家族が幸せになり、自分の仕事にもやりがいを感じるようになる」といった答えが導き出されるはずです。

   そうすれば、ギャンブルをやめることの意味がようやく理解できます。コンサル業界の人なら、これが思考法によるものだとわかるはずです。

   いまの思考の流れは演繹法です。演繹法は普遍的な事実を前提として結論を導きだす方法のことです。必然に必然を重ねるプロセスに特徴があり、結論はより真実に近いものが導き出されます。

   もし、自己啓発に触れる機会があったら、それを自分自身に置き換えてブレイクダウンできるか考えてみてください。くれぐれも、言葉の表面だけを飲み込まないようにしてください。

   今回、初出版を実現させた了戒さんの前途を祝したいと思います。(尾藤克之)

尾藤 克之(びとう・かつゆき)
尾藤 克之(びとう・かつゆき)
コラムニスト、著述家、明治大学客員研究員。
議員秘書、コンサル、IT系上場企業等の役員を経て、現在は障害者支援団体の「アスカ王国」を運営。複数のニュースサイトに投稿。著書は『最後まで読みたくなる最強の文章術』(ソシム)など19冊。アメーバブログ「コラム秘伝のタレ」も連載中。
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