2019年 12月 10日 (火)

育休明けの時短「もう『戦友』じゃない?」元バリキャリ女性の嘆きの投稿が話題に 専門家に聞いた

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   「仕事人間」だった女性が、育児休業後に時短勤務で復帰すると、かつての仲間たちから「育休明けの人」という烙印を押されている気がする。

   バリバリ働く独身女性たちが男性に混じってワイワイ飲みに行く姿を見ると、羨ましくて、ああ「戦友」扱いされてないなと思う――。こんな寂しさを綴った投稿が話題になっている。

「贅沢すぎる悩みだ。だったら子どもを生むな」
「時短でも仕事の成果は出せるよ、頑張って」

という反感と共感の賛否両論だ。「時短」という働き方に詳しい専門家に聞いた。

  • わが子を保育園に預けて出勤(写真はイメージ)
    わが子を保育園に預けて出勤(写真はイメージ)

独身女性が男性社員と飲みに行く姿がうらやましい

   話題になっているのは女性向けサイト「発言小町」(2019年8月21日付)に載った「育休明け時短 ステージが違うと言われた」というタイトルの投稿だ。

「1年の育休から復帰して1年になる30代正社員、時短勤務中です。大企業のため育児制度が整っていますが、ジレンマは抱えながら仕事をしています。ハードに働いていた妊娠前に比べて与えられる仕事が物足りなく、『育休明けの人』という烙印を押されている気がする毎日です」

と、鬱屈した気持ちを綴る。

   そして、以前は職場の同僚とよく飲みに行ったのに、バリバリ働く独身女性や子供のいない女性が男性に混じってワイワイ飲みに行くのを蚊帳の外で見ているのが寂しいという。

「もう『戦友』として見てもらえていない気がします。仲のいい同僚に話したら、『彼女たちとはもはや立っているステージが違うのだから、比べるものではない』と言われました。元のステージに戻るまであとどのくらいかかるのか、仕事人間だっただけにつらくもあります」

と、結んでいる。

   この投稿に対して、6割以上の人が「贅沢な悩みだ。子どもを生むのは自分で選択したことだから仕方がない」と厳しい批判の声を寄せている。

「だって時短でしょう? あなたが帰った後、だれが仕事をカバーしていますか? 子どもの体調で、急な休みや早退をしていませんか? カバーしなくちゃいけない人は戦友ではないです。これが同僚の本音です」
「1年育休した時短勤務の人は、以前と同じ働き方などできませんよ。当然評価も違います。私の会社では、育休後の人は1年間評価対象外になります。2人目を作ることになれば、評価はもちろん昇格も他人よりも遅くなります。今は子育てに専念する時期です。後から挽回すればいいことです」
「職場で元のステージに戻りたいなら、母親をあきらめることです。子供が熱を出しても休まない、『ママ行かないで』とすがってきても仕事を優先する、保育園の送迎は身内に任せる、ご飯は孤食......など、徹底的に自分の人生を優先しなければ『元のステージ』を手に入れることは難しいと思いますよ」

   また、投稿者が「独身女性が男性に混じってワイワイ飲みに行く」姿をうらやましがっていることに対しても反感の声が多かった。

「なんか不思議な職場ですね。一緒に飲みに行かないと戦友として見てもらってない気がする? 私なら家に赤ちゃんがいるのに、飲んで酔っ払いたい、なんて微塵も思わない。ずいぶんとお気楽な職場ですね」
「バリバリ働く『戦友』のイメージが、飲み会参加なんですね。ランチじゃだめですか? 結局、『飲み』がなくなったことが寂しいだけかなと思いました」

「本当にデキる人なら、ブランクがあっても元に戻れる」

   一方、「時短でもいい仕事すれば成果を出せる」「粛々と仕事していれば、いつかステージに戻れるよ。今は育児頑張って!」という応援エールも少なくない。

「本当に仕事ができる人なら、ブランクがあっても評価される。私も、同じ経験をして同じ気持ちになった事があるのでよくわかります。本当に実力がある人なら、子どもに手がかからなくなって仕事に集中できる環境になったら同じポジションにつけるはずです。それが無理なら、子どもがいなくてもその程度の実力だったということです」
「私も育児時短なので、職場で戦友ではなくなってしまった感じ、すごくよくわかります。でも、何かを選べば何かは捨てなければならないのは仕方のないこと。私は、『今できることはしっかりやる』『周りをよく見る。参考になることは盗む』を心がけています。子育てがひと段落ついたら、前線の兵士や司令官にはなれないけれど、新米兵の身近なお手本や有能な後方支援兵になりたいと思います。今、真摯に頑張っていれば、今までとは違う形で充実できる日が来ると思うのです。お互い頑張りましょう!」
「私もかれこれ10年時短勤務を選択している2児の母です。家庭優先で時短を選択したら、やはり犠牲になるものはある。それでも成果は出せるし、時短勤務に誇りを持てと言いたい。そのうえで時短勤務は誰かに強要されるものではないし、フルタイムに戻すことも自由なのですよ」

   また、「フルタイム勤務に戻ってはどうか」というアドバイスも多かった。

「仕事人間に戻るために時短勤務をやめることはできませんか? 子供を理由に時短にするのを女性だけの負担にするのは不公平です。夫に半分、時短勤務をお願いするか、シッターや家事代行、祖父母に頼るなど、あらゆる手段を使ってフルタイム勤務に戻しましょう」

といった意見に代表される。

「仕事時間ありきの価値観が骨の髄まで染み込んでいる」

   J-CASTニュース会社ウォッチ編集部では、女性の働き方に詳しい、主婦に特化した就労支援サービスを展開するビースタイルの調査機関「しゅふJOB総研」の川上敬太郎所長に、この「育休明けは『戦友』じゃない?」論争の意見を求めた。

――今回の投稿に対する反応を読み、率直にどんな感想を持ちましたか?

川上敬太郎さん「年功序列に代表される、仕事時間ありきの価値観が、日本社会の骨の髄まで染み込んでいることを象徴する投稿と反応だと感じました。時短かフルタイムかは、仕事にかけられる時間量の差でしかありません。フルタイムだから仕事能力が高く成果も出せる。時短だから仕事能力が低く成果も出せない―― そんな思い込みによって職場の風土が醸成されている現状があるのではないかと感じます」

――確かに「時短」=「働く時間が少ない」=「お荷物」という先入観が、ほとんどの回答者にみられますね。しかし、その先入観は投稿者本人にもあって、「もはやステージが違う」「戦友にはなれない」という屈折した思いになっているのではないでしょうか。

川上さん「投稿者さんが抱えているジレンマは、決して屈折したものではないと思います。むしろ、時短=ステージダウンとみなす職場風土に対して、率直な疑問を投げかけたものではないでしょうか。職場風土や染みついた価値観に対して、疑問すら抱かない人が多い中で、むしろ投稿者さんはご自身なりの価値観を失わずに持ち続けているように感じます」

――投稿者に批判的な意見の多くは、「時短は、通常勤務の人より仕事が出来ないのだから仕方がない」「人に迷惑をかけているから戦友とは言えない」などです。こうした意見は間違った先入観というわけですね。

川上さん「なかには、時短であることが原因で、仕事の成果を出せなかったり、周囲に迷惑をかけてしまったりする人もいるのだろうと思います。しかし、時短でも高い成果を出したり、周囲に影響が出ないようにうまく調整したりしている人もいます。これらの違いには、時短で働く個人の力量の問題と、会社の業務体制・仕組みづくりの問題の両方があると考えます。
たとえば会社にかかってきた電話に出るという仕事は、その時に会社にいないと対応できません。時短の人がいない時間帯に同僚の電話応対数が増え、それが負担になっているようなケースは、時短で働く人がどれだけ力量を磨いてもカバーしきれない面があります。一部の社員に負荷がかかり過ぎないよう会社側が業務体制を整理し、どうしても負荷がかかってしまう場合はその分をきちんと評価するなどの仕組みづくりなどが必要です」

――電話の応対の問題は、時短の人が取引先に時短であることを伝えれば、ある程度解決できますね。会社側が業務体制を工夫することで、時短の人をカバーする同僚の負担を減らせることができるというわけですね。

川上さん「そのとおりです。一方、仕事のために子どもをあきらめる、というのは別次元の話です。これまでの職場の常識からすれば、仕事と出産を天秤にかける考え方が通じたのかもしれません。しかし問いたいのは、そんな社会を本当に望みますか? ということです。仕事も出産も、どちらも充実させることはできます。本当はそんな社会が良いと思っているのに、無理だと考えている人が多いということです。例えば、当社の『スマートキャリア』というキャリアを活かす転職サービスを通じて、時短でもハイスキル・ハイキャリアを要する仕事に就き、かつ子育てと両立させ、どちらも充実させている人がたくさんいます」

「時短の人がフルタイム並みの成果をあげるコツは」

――「男性に混じってワイワイ飲みに行く独身女性」をうらやましがる投稿者の姿勢を痛烈に批判する人が多くいました。働く母親は飲んではいけないという風潮が強いのでしょうか。

川上さん「仕事終わりに仲間たちと飲みに行ってワイワイやりたい、というのもまた、素直な気持ちではないでしょうか。その気持ちを他人が批判するのは筋違いだと思います。ただ、一緒に飲みに行けないことと、戦友として見てもらえないこととは本来無関係ですが、そこを結びつけているところに、やや投稿者さんに幼さを感じる人がいるのではないかと思います」

――時短の人がフルタイムの人並みに成果をあげるようにするには、どうしたらよいでしょうか。

川上さん「仕事で成果を上げるには、それだけの実力をつけるしかありません。仕事にかけられる時間量が少ないわけですから、より生産性高く仕事する能力が求められます。実力をつける点においては、時短か否かに関わらず、甘えは許されません。ただ、会社との間で、どこまで成果を上げればよいかという認識合わせはとても重要です。仮に勤務時間も給与もフルタイムの半分だとしたら、理屈上は仕事の成果も半分でよいことになります。具体的な経済効果も踏まえながら、自分も周囲も納得できるラインをきちんと定めておくことが先決だと思います」

――なるほど、成果のラインをはっきり周囲にもわかるよう決めておけば、「お荷物」扱いはなくなりますね。ところで、回答の中には、バリバリ働くためにはベビーシッターや祖父母も動員して、フルタイムに戻るべきだ」というアドバイスがかなりありました。どう思いますか。

川上さん「投稿者さんがフルタイムで働きたいのであれば、アドバイスの通りだと思います。しかし、子育てしつつ、時短で仕事にもしっかり取り組みたいという希望があるのかもしれません。投稿者さんご自身が本当はどうしたいのか、心の声を確認した上で、それを実現できる方法をあきらめずに考えることです。そうでないと、ずっとモヤモヤした気持ちが続いてしまうと思います」

(福田和郎)

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