2019年 9月 17日 (火)

いまや企業の盛衰を決める!? 「サステナビリティ」とどう向き合うか

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   「サステナビリティ(持続可能性)」は、主に環境やエネルギー問題で使われていた言葉だが、グローバル化や社会の複雑化を背景に応用が拡大して、ビジネス界でも新しい概念・目標として取り入れる動きが加速している。

   「『未来市場』のつくり方 サステナビリティで変わる企業の常識」(東洋経済新報社)によれば、「サステナビリティ」が世界のあらゆる市場の最重要ファクターになっている。ところが、日本ではなぜか反応が鈍いという。なぜか――。

「『未来市場』のつくり方 サステナビリティで変わる企業の常識」(中原雄司著)東洋経済新報社
  •  SDGsの「17の目標」
    SDGsの「17の目標」

いまや「メガトレンド」

   「世界では、サステナビリティのメガトレンドをいち早く察知し、その市場で主導権を握ろうという動きがそこかしこで起こっている」ほど。著者は東京大学、東大大学院で工学を専攻。さらに米コーネル大学経営大学院でMBAを取得したのち、日本の商社やコンサルティング会社に勤務。グローバルネットワークを持つ欧州の化学メーカーでも活躍した中原雄司さん。そのキャリアから「サステナビリティ」の理念がビジネス界で重視される様子を身近でモニターしてきた。

   「サステナビリティのインパクトは、すべての企業・産業にイノべーティブな変革をもたらす。すべての産業が巻き込まれるほどの『未来市場が生まれるダイナミズム』が今起きている」のが現状。「この変革のインパクト、ダイナミズムを、日本のビジネスパーソンにも気づいてほしい、そして共有したいという願いを込めて本書をまとめた」という。

   著者が定義するサステナビリティは「技術を生かして環境と生活の水準を維持していくために必要な一定の活動」。動力源、電力源として化石燃料への依存を減らして再生可能エネルギーの開発に努めたり、人口減少や少子高齢社会を支えるためにAIなどのテクノロジーを使って自動化したりすることなどは、その代表例といえるだろう。

GAFAだって怠りなく

   そうすると、燃料電池を動力に無人で動くクルマを、自動車メーカーと開発しているテクノロジーや金融の巨大企業は、サステナビリティの面ではフロントを走っているのか――。近年、GAFAと総称されるIT企業も自動運転などでしのぎを削っているようだが、過度ともされる個人情報の収集や節税の指摘などをみると「環境と生活の水準を維持」は、それがビジネスだから取り組んでいるのであり、本来的なサステナビリティへの貢献は薄いように感じられる。

   だが実際は、巨大企業に成長した背景には、環境のサステナビリティへの貢献もある。たとえばグーグル。じつはデータセンターのサーバーの運用で、他の企業とはケタ外れの電力を消費しており、このことによる環境への影響を抑制する取り組みを早い段階で始めている。

   2010年代初頭で同社の電力消費は年間2億6000万ワット。この量は日本ならば、人口20万人の都市を支えるのに十分な電力という。グーグルでは創業まもなくから再生可能エネルギーによる電力調達をスタート。その後も積極的に取り組みを進め、17年には消費電力のすべてを、風力や再生可能エネルギーで賄っていることを同社が発表した。

国連の「SDGs」で浸透

   やはりGAFAの一つ、アップルもサステナビリティを明確に打ち出している。世界各地のアップルの関連施設では供給される電力をすべてクリーンエネルギー由来に。また、製造パートナー企業に対しては、アップル向けの生産についてはクリーンエネルギー由来により作業するよう呼びかけているという。

   日本の企業にもこうした事例がないわけではなく、本書では、リコーが1988年に「環境経営」を打ち出したことを紹介。「環境保全と利益を同時に追求していく」経営方針をとるようにし、サプライヤーにもこれに準じるよう求めた。

   サステナビリティが世界でよりクローズアップされるようになったのは、2015年9月の国連サミットで「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が採択されてから。16年から30年までの「国際目標(SDGs=Sustainable Development Goals)」として「17の目標」が定められ、それらはエネルギー資源のことからジェンダーなど社会的な枠組みにおける目標が盛り込まれている。

   「SDGs」はここ数年、世界中で関心が高まっているフィールドの数々が持続可能性を重視する対象になったことから「サステナビリティ」への注目も上昇。企業を見る目も「サステナビリティ」に関する対応が、評価の重要ポイントになってきた。最近しばしば取り沙汰される、海洋プラスチックの問題なども、企業のなどの間で「サステナビリティ」を重視する動きが強まり、その処理などにおける貢献を企業自らアピールしたり、報道で発掘されたりするなどの動きがあったからだ。

   本書によると「サステナビリティ」は、国連の「SDGs」の影響で、個人レベルでも強く意識されるようになっている。著者はコンサルティングや会社経営に携わった経験から「サステナビリティ」に配慮を欠いた企業は、人材採用や管理などで頭を悩ませる場面もあるのではないかとみる。「素朴な入社拒否の動機、または退職の理由になり得るのではないだろうか。実際、そうした人材の流動が増えているように実感している」

   「サステナビリティの方向を理解しないまま利潤の追求に走るだけの企業は、人材不足となって、サプライチェーンから外されることになるだろう」とも。その心配はともかく、本書を読んで、サステナビリティやSDGsについて理解を深めておくことはムダではないだろう。

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「『未来市場』のつくり方 サステナビリティで変わる企業の常識」
中原雄司著
東洋経済新報社
税別1500円

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