2019年 12月 6日 (金)

米中貿易戦争の思わぬとばっちり ファーウェイ抜き、東京五輪の5G整備に間に合わず?

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   次世代の移動通信システムの「5G」、第5世代移動通信システムは、米国などではすでにサービスが始まっており、日本でも2020年春から使えるようになる予定だ。

   超高速、大容量、多接続が特長だが、AI(人工知能)やVR(仮想現実)、AR(拡張現実)などのテクノロジーをさらに進化させ、新たな産業革命への期待が高まっているという。

   その新時代の開拓を牽引しているのは、中国の通信機器メーカー、ファーウェイ・テクノロジーズ(華為技術)なのだが、米トランプ政権がその前に立ちふさがった。

「ファーウェイと米中5G戦争」(近藤大介著)講談社
  • 米国ににらまれた中国・ファーウェイ、どうなる?(画像はファーウエイ本社)
    米国ににらまれた中国・ファーウェイ、どうなる?(画像はファーウエイ本社)

「米中冷戦」トランプ大統領の「宣戦布告」

   本書「ファーウェイと米中5G戦争」は、5Gを足掛かりに、世界の先頭に出ようとする中国に対して、通信分野を含めて世界の覇権を握ってきた米国が「それはまかりならぬ」と待ったをかけて始まった「戦争」について詳しくルポした。

   著者の近藤大介さんは、中国についての著作が多いジャーナリスト。外国人記者としては初めてとみられる、中国・深センのファーウェイ本社内にある研究開発本部の詳細取材を敢行。本社敷地内には、社員寮のタワーマンション群、出張社員用の豪華なホテルが備えられ、その「帝国」ぶりのスケッチ描写も圧巻だ。

   いわゆる、米中貿易戦争が顕在化したのは2018年。お互いに追加関税を実施し始め、それが19年になってからも続く。そして、ついに5月、トランプ米大統領は「米中冷戦」の「宣戦布告」ともいえる行動に出た。

   それが「情報と通信技術とサービスのサプライチェーンの保護」と題する大統領令への署名。国家安全保障を理由に、ファーウェイの製品を米通信ネットワークから事実上排除するもので、さらに同じ日の米商務省の発表で、ファーウェイとその関連会社を、政府のエンティティリスト(禁輸措置対象リスト)に追加したことを明らかにした。

   米国側は貿易戦争での、そもそものターゲットがファーウェイの排除であり、その機が熟すのを待っていたという。

ファーウェイ当初から5Gに照準

   1980年代から進化を続けている通信分野だが、1Gから現在までの4Gまでは、欧米や日本の企業がリードしてきた。その技術を応用してファーウェイは87年に創業。元人民解放軍の技師だった任正非CEO(最高経営責任者)が、5人の仲間と興した。

   1990年代半ばにロシアで商機をつかみ、途上国の通信インフラ整備で成長を遂げる。

   その後、欧州各国、日本、米国へと進出したが、2012年に米下院委員会が、ファーウェイなどの中国の通信会社について「中国共産党政権との関係に重大な懸念がある」とする報告書を提出。これで「スパイ企業」扱いされたことで逆風が吹き始める。

   だが、ファーウェイはそんなことにめげなかった。15年には通信基地局やルーター、モデムなどの通信機器分野で世界最大メーカーとなる。そればかりか、スマートフォン市場では19年第1四半期に、1位サムスン(21%)に続いて17%で2位に着け、アップル(3位、12%)の上を行く健闘ぶりをみせた。

   5G時代のけん引役に擬せられるようになったのは、こうした急成長ぶりがあったからばかりではなく、その利益を投じて進めた研究開発によるという。ファーウェイでは売り上げの10%を研究開発費に回すことを「保証する」と定められており、18年のその額は約1兆6000億円。世界5位のレベルで、日本企業では最高額を誇るトヨタ自動車(18年=1兆800億円)を上回る。

   その成果の一つが、国際特許の蓄積。世界知的所有機関(WIPO)によると、18年の国際特許出願件数は、ファーウェイは5405件で1位。2位の三菱電機は2812件、3位の米インテルが2499件だから、ダントツなのだ。

   「しかも、ファーウェイの出願した特許の多くが5G関連。国別でも中国5万3345件で、アメリカの5万6142件に肉薄しており、19年にはアメリカを抜いて世界トップに立つ勢い」をみせている。

米国に倣えの日本はファーウェイに勝てるのか

   5Gは今後の通信分野ばかりではなく、産業界全体、社会生活のなかで大きな変革をもたらすとみられている。本書によれば、日本の各企業は、5Gをめぐってはファーウェイにはかなわぬと、その下請けに等しい状態にもなっていたと指摘している。

   ところが、そこにトランプ大統領の「宣戦布告」。日本経済団体連合会に加盟する日本企業の関係者によれば、いまでは日本は「アメリカに右に倣え」状態に転換したという。

   日本政府は2020年夏の東京オリンピック・パラリンピックまでに5Gを整備するとしており、富士通がエリクソンと、NECがサムスンと5Gで提携し開発を進めている。「それでファーウェイに勝てるのか?」と本書。世界ではこれから5Gという段階だが、ファーウェイではすでに6Gの研究開発に余念がないそうだ。

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「ファーウェイと米中5G戦争」
近藤大介著
講談社
税別840円

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