2024年 4月 26日 (金)

ますます縮む国内市場 生き残りに「効く」のは「マイレージサービス」ってホントか?

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   消費増税が実施され、小売店や飲食店にとっては、顧客らの購買行動に何か変化があるのではないかと気になるところだ。

   増税が消費者にとっては値上げであり、店にとっては形を変えた価格競争。本書「なぜあの店でもう一度かいたいのか」(日経BP)は、価格のことに頭を悩ませることなく、自分のところの製品やサービスを選んでもらうための施策である「ロイヤリティ・マーケティング」をテーマにした一冊。米国などでは盛んに行われているものだが、少子高齢化などでますます市場が縮小する日本では今後、効果を発揮するとみられる。

「なぜあの店でもう一度買いたいのか」(村上勝利著)日経BP
  • 縮小する市場のサバイバルには「ロイヤリティ・マーケティング」
    縮小する市場のサバイバルには「ロイヤリティ・マーケティング」
  • 縮小する市場のサバイバルには「ロイヤリティ・マーケティング」

「ポイント」と「ロイヤリティ」の違い

   日本ではさまざまなポイントプログラムが盛んで、「ロイヤリティプログラム」と混同されているケースがしばしば見受けられるそうだ。

   ロイヤリティプログラムの代表例は、航空会社のマイレージサービス。搭乗の機会多いほど(航続距離が長いほど)顧客のランクが上がり、そのランクに応じて、座席のアップグレードや空港でのラウンジ使用など、継続利用に報いる特典が用意されている。

   その企業(あるいは企業グループ)への「ロイヤリティ(忠誠心、愛着)」が高まるように仕向け、高まるほどに厚くもてなし、顧客の囲い込みを図ろうという狙いだ。

   一方、ポイントプログラムは、購買金額や来店回数に応じて、一定の条件でポイントを加算するというのが定番。たまったポイントは、買い物時に「現金」として使えるなどのインセンティブになる。近年は、さまざまな業種や業態の企業をグループ化した共通ポイントプログラムも数々あるが、毎日同じ店に足を運ぶような「忠誠心」あるお客でも、インセンティブは同じであり、その店にとって囲い込みなどの効果はないことになる。

競争勝ち抜いたアメリカン航空

   マイレージサービスは、米アメリカン航空が1981年に導入。本書の著者、村上勝利さんが社長兼CEO(最高経営責任者)を務める米顧客関係管理サービス会社、ブライアリー・アンド・パートナーズの創業者であるハル・ブライアリー氏がコンサルタントとして最初に手がけたロイヤリティ・マーケティングだ。

   当時、米航空業界はアメリカン航空のほか、大手数社が乱立。激しい利用者争奪戦が繰り広げられていた最中に考えだされたという。「米国では常に競争が起きていて、新製品や新サービスが登場すると、既存の市場が失われていく。だから、ロイヤリティ・マーケティングが必要であったし、進化してきた」と村上さん。

   アメリカン航空がマイレージサービスを始めた当時のライバル会社の中には、競争に耐えきれず市場から撤退した会社もある。

   日本ではこれまで、業界ごとに大体のシェアが決まっていて、競争がないわけではないが、それほど激しくもなく、企業が目指すところは、製品やサービスの向上、高品質化で、それにより他社に差をつけることであり、顧客の囲い込みなどは関心が薄かった。

   ところが、その日本でもこの先、人口減少や少子高齢化にともなう国内市場の縮小が必至で、競争環境の面では大きな転機を迎える。

   「だからこそ、リテンション(既存顧客の維持)に目を向けなければいけない」と村上さん。「これまでは、安定した国内市場で一定のシェアを持っていれば、業界の下位企業でも儲けを出すことができた。ところが、市場そのものが縮小するとなると、事情は変わってくる。利益率は同じであっても、規模が小さくなるのだから、儲けの絶対額が減ってしまう」と指摘する。

よい製品を提供しているだけではお客に選んでもらえない

   市場で買い手が少なくなるという規模の縮小がある一方、このところのグローバル化で通信事情や輸送力が向上。それにより商品・サービスのサプライヤーが増えたことも、市場の環境をタイトにしている。

   たとえば、世界市場で製品のでき栄えに定評があった日本の家電メーカーだが、村上さんによると「急速に存在感をなくした」という。

   「結局、新興国の台頭などで製品のコモディティ化が進むという周りの変化の方が早かった」。かつて高付加価値を誇った日本メーカーの製品だが、他国の安価な製品が市場に入り、日本製品の市場価値は低下して一般的な商品になってしまった。テレビでは中国や韓国のメーカーが、エアコンではまたインドのメーカーが世界市場でシェアを伸ばしている。

「よい製品を作ることが大事であることは言うまでもない。私も強くそう思う。ただ、今は世の中の移り変わりが早くなってしまい、よい製品を提供しているだけでは、なかなかお客に選んでもらえなくなっている」

   グローバル化や、少子高齢化など現代特有の現象で、市場は早い速度で変化を続ける。その環境のなかで、「ロイヤリティ・マーケティング」は企業にとって有効なサバイバル戦略の一つだ。「顧客維持率が5%上がれば利益が2倍になる」あるいは「既存個客の購入額は新規顧客のそれより平均で67%高い」というデータもある。

「こうして得られた利益の一部を原資にロイヤリティ・マーケティングを展開するのは、合理性に適っている」

「なぜあの店でもう一度買いたいのか」
村上勝利著
日経BP
税別1600円

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