2020年 1月 26日 (日)

AIに仕事を奪われないための切り札は「読解力」! OECD調査で世界15位に下落、それを止める策は?

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   AI(人工知能)はこの数年来著しい成長を遂げている。AI開発の目的の一つは、人間の仕事の肩代わりだが、人間にとっては、いよいよ、AIに仕事を奪われないためにはどうすればいいのかを真剣に考えねばならない時がやってくる。

   じつはAIは読解力で決定的な弱点を抱えており、理解やコミュケーションを前提とすることが苦手。だから、人間は読解力を磨く必要があるのだが、あろうことか、現代人の読む力も非常に衰えていることがわかった。この問題の解決が、本書「AIに負けない子どもを育てる」のテーマだ。

「AIに負けない子どもを育てる」(新井紀子著)東洋経済新報社
  •  AIに仕事を代替されないために……
    AIに仕事を代替されないために……

AIの東大合格から目標転換

   同じ著者によるベストセラー「AI vs.教科書が読めない子どもたち」(東洋経済新報社、2018年2月刊)の続編。著者の新井紀子さんは、2011年に始まった官民共同のAIプロジェクト「ロボットは東大(東京大学)に入れるか」のプロジェクトリーダーを務めたAIのエキスパートだ。

   このプロジェクトで「東ロボくん」と呼ばれたAIは、国公立を含む7割の大学に合格可能性80%以上という力をつけたが、十分な文章の読解力を備えることができず、16年に東大受験を断念。東ロボくんは、辞書や教科書、過去の入試問題などから蓄積したキーワードを頼りにした対応しかできないため、記述式の東大入試には歯が立たないと判断された。

   新井さんらは、AIプロジェクトに関連して、読解力を測るための「リーディングスキルテスト(RST)」を開発。「事実について書かれた短文を正確に読むスキル」を測るよう設計されたテストで「係り受け解析」や「同義文判定」など6分野がある。中学生程度の学力なら容易に解けそうな内容なのだが、AIとの比較のため、実際に中学生や高校生らに試してもらうと、読解力が不足している子どもたちの割合が非常に多いことがわかった。RSTの調査を進めていくと、子どもばかりか、大人でも文章を正確に理解できないていない状況があることも明らかになってきた。

   RSTの問題はたとえば、こうだ。

―― 次の2文は同じ意味でしょうか?

(1)幕府は、1639年、ポルトガル人を追放し、大名には沿岸の警備を命じた。
(2)1639年、ポルトガル人は追放され、幕府は大名から沿岸の警備を命じられた。

   「同義文判定」の問題。答えはもちろん「異なる」だが、中学生の正答率は57%どまり。そのことを、ある自治体の教育委員会で話すと「多くの委員が『信じられない』という顔をした」ものだ。ある高校で、国語の定期試験に同じ出題をしたところ、なぜ「異なる」のかを質問する生徒が少なからずいたという。

   RST開発の動機の一つは「読解力をめぐる人間のAIに対する優位性を示そうとした」ことだったが「逆に、人間の読めなさ加減を白日の下に晒すこと」になり、「皮肉なこと」と新井さんは言う。

AIと同じキーワード読み

   AIがこの先、読解力を向上させても人間並みに達するのは容易ではなさそう。だが、計算や記憶を要する処理や作業では人間が対抗することはできない。新井さんは、「東ロボ」のプロジェクトの経験から、AIをめぐる人間にとっての課題は、AIの進化を目指すこともその一つに違いないが、いまはそれよりもまず、人間、とくに子どもたちの読解力向上を図ることが重要と考え、東ロボプロジェクトの凍結と前後して、2016年から、「教育のための科学研究所」代表理事・所長として、RSTの研究開発を主導している。

   本書は、そのRSTの最新の研究成果を報告し、テストを使った読解力向上を手ほどきした。企業の中間管理職に就く人たちからは、若い従業員によるメールや仕様書の誤読によるトラブルが続発しているという声が寄せられており、その内容は子どもにだけ向けたものではなく、ビジネスパーソンにとっても自らの読解力を知り、鍛えることができる。企業のなかには、RSTを入社試験に導入しているケースもあるそうだ。

   RSTは、前述の「例題」のように、答えが書かれていることを読めるかを診断するテスト。これまでの3年ほどの間に、小学生から会社員まで約7万5000人を対象に調べたところ、AIと同じくキーワードを頼りに文章を読む人が非常に多いことがわかったという。そういう人は意味を理解しないで機械的に、コピペ型の処理しかできず将来、AIに代替されやすい。

OECD調査でも......

   読解力は大別して、例題のような「同義文判定」、代名詞などが指す内容を認識する「照応解決」や「係り受け解析」などの文の構造を理解する能力と、基本的知識などから論理的に判断する「推論」、文と図表などの非言語情報を正しく対応づける「イメージ同定」、定義と合致する具体例を認識する「具体例同定」などの文の意味を理解する能力があるという。どの読解力が不得意かによって、対処方法も変わる。

   経済協力開発機構(OECD)はこのほど、79か国・地域の15歳約60万人の生徒を対象に、2018年に行った学習到達度調査(PISA)の結果を公表したが、それによると、日本は「読解力」で15位と、前回15年調査の8位から順位を下げた。PISAは3年に1回実施。日本の「読解力」は、2003年に、それまでのトップクラスから14位と大きく順位を下げ、文部科学省が「脱ゆとり教育」を本格化させた経緯がある。12年調査で4位まで回復したが、15年に8位に下がり、そして今回また低下した。

   RSTで自分の読解力の程度を知り、苦手な分野がわかれば、その分野の強化に努め改善をはかる必要があるという。本書のタイトルは「AIに負けない子どもを育てる」だが、大人でも、自分では「読めてる」と思っている人でも、読めていないことが多いのが実情という。2020年以降に間違いなくくるAI時代の本格化に備えて、また、グローバル化のなかで各国と伍していくためにも、さまざまな人にとって有用な一冊になりそうだ。

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「AIに負けない子どもを育てる」
新井紀子著
東洋経済新報社
税別1600円

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