2020年 1月 20日 (月)

【どこゆく子育て】子育て支援、ゆるっと前進 それでも、なお「幼児教育」を受けられない子どもがいる(鷲尾香一)

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   2019年10月1日から、子育て関連政策として幼稚園などの利用料金の無償化がスタートした。3~5歳児(0~2歳児は一部条件付き)の幼稚園などの利用料金の無償化は、「新しい経済政策パッケージ」「骨太の方針2018」「幼児教育無償化の制度の具体化に向けた方針」などを踏まえ、子ども・子育て関連3法(子ども・子育て支援法、認定こども園法の一部改正法、児童福祉法の一部改正等関係法律の整備法)により、幼稚園、保育所、認定こども園、地域型保育、企業主導型保育(標準的な利用料)を対象に実施された。

   安倍晋三政権が進める「子育て対策」が着実に成果を挙げつつあるが、その半面、預かり保育の遅れなどの課題も明確になってきている。

  • 子育て支援、進展はみられるものの……
    子育て支援、進展はみられるものの……

幼稚園は全国で1万474園、120万7884人の園児が通う

   2019年10月23日の文部科学省「幼児教育の現状」によると、2018年5月1日現在、幼稚園は1万474園あり、その内訳は国立49園(構成比0.5%)、公立3737園(35.7%)私立6688園(63.9%)となっている。国立に5330人、公立18万6762人、私立101万5792人の園児が通っており、園児の総数は120万7884人にのぼる。

   利用料金は一概には言えないものの、私立は国公立のおよそ2倍になることや、親としては「何となく、国公立のほうが保育内容も良く、見栄もある」という気持ちもあり、国公立の人気が高いが、その分、入園の競争倍率は高く、国公立への入園は難しい状況だ。

   ただ、利用料金は各種の補助もあり、実際には国公立と私立で大きな差はなくなっている。ちなみに、国公立は行政が運営しているため、教員は基本的に公務員だ。

   さて、幼稚園以外の保育施設の状況は、2018年度で認定こども園(幼保連携型)が4474園、保育所が2万9338園となっている。幼稚園を合わせた園児の総数は592万8000人で、その内訳は保育園が216万3000人(36.5%)、認定こども園が59万8000人(8.4%)、幼稚園が120万9000人(20.4%)となっており、そのほかに未就園児が122万8000人(20.7%)いる。

   統計の対象となっているのは0歳児から5歳児なので、幼稚園に入園できる3歳児未満の0~2歳児は保育園か認定こども園への入園となるため、当然、未就園児が多いのだが、未就園児は3歳児で5万1000人、4歳児で2万7000人、5歳児でも1万7000人いる。つまり、小学校入学まで幼児教育を受けさせていないということだ。

「認定こども園」で幼稚園児は大幅減少

   「認定こども園」とは、教育・保育を一体的に行う施設で、いわば幼稚園と保育所の両方の良さを併せ持っている施設で、幼稚園型、保育所型、幼保連携型、地方裁量型がある。

   「幼稚園型」は認可幼稚園が、「保育所型」は認可保育所が「地方裁量型」は幼稚園・保育所いずれの認可もない地域の教育・保育施設が、認定こども園としての機能を果たすもので、「幼保連携型」は幼稚園的機能と保育所的機能の両方の機能をあわせ持つ、単一の施設だ。

   2019年4月1日現在で認定こども園は7208園で、その内訳は幼保連携型が5137園、幼稚園型が1104園、保育所型が897園、地方裁量型70園となっている。わずか1年間で幼保連携型が728園、幼稚園型が138園、保育園型が177園、地方裁量型が5園の総計で1048園も増加しており、認定こども園は急速に普及している。

   このため、幼稚園は直近のピークである1978年の249万8000人から51.6%も園児が減少しているが、保育園は同じく直近のピークだった1980年の199万6000人から8.3%増加している。

   幼児のいる家庭にとって、一番の大きな問題は教育費だ。2015年の国立社会保障・人口問題研究所「第15回出生動向基本調査(夫婦調査)」 では、「理想の子供数を持たない理由」として、「子育てや教育にお金がかかりすぎるから」との回答が、30歳未満では76.5%、30~34歳は81.1%、35~39歳は64.9%、40~49歳は47.7%もある。

   また、内閣府の2014年度「結婚・家族形成に関する意識調査」では、「どのようなことがあれば、あなたは(もっと)子供が欲しいと思いますか」との質問に対して、「将来の教育費に対する補助」が68.6%、「幼稚園・保育所などの費用の補助」 が59.4%と1、2番に多い回答だ。

欧米に比べて共稼ぎの子育て環境は遅れている

   幼児教育の段階的無償化の取り組みは、2014年からスタートしたが、生活保護世帯や市町村民税非課税世帯(年収約270万円まで)などの低所得世帯が対象となっていた。その後、冒頭の子ども・子育て関連3法が整備されたことで、今年10月1日から3~5歳児(0~2歳児は一部条件付き)で無償化がスタートするに至った。

   夫婦共働き世帯が増加する中で、幼稚園などの利用料金が無償化されても、共働きが継続できる条件の一つである「預かり保育」が大きな問題だろう。

   「預かり保育」は幼稚園や認定こども園の正規の保育時間終了後に、延長で預かる仕組みのことだが、厚労省の2016年幼児教育実態調査によると、同年6月1日現在の幼稚園における預かり保育の実施状況は、幼稚園全体の85.2%にあたる8901園(公立幼稚園の66.0%にあたる2549園、私立の96.5%にあたる6352園)が実施している。

   ただし、預かり保育には、「保護者の就労等」「兄弟の学校行事等」「近親者の介護等」といった条件を設定している幼稚園が、公立の場合には59.6%、私立の場合には27.2%、全体では36.5%ある。また、ほとんど幼稚園では預かり保育に対して別途料金が発生する。その内訳は以下のとおりとなっている。

<預かり保育における料金> 公立:2,549園、私立:6,352園、合計:8,901園
             公立      私立      合計
保育料・実費ともに徴収   992(38.2%) 1.517(24.7%) 2,563(28.8%)
保育料のみ徴収      1,112(43.6%) 3,817(60.1%) 4,929(55.4%)
実費のみ徴収        159( 6.2%)  810(12.8%)  969(10.9%)
保育料・実費ともに不徴収  286(11.2%)  154( 2.4%)  440( 4.9%)

   さらに、預かり保育が利用できても、「何時まで預かってくれるのか」という大きな問題が残る。以下に幼稚園の公立、私立別、時間帯別の預かり保育の終了時間を掲載した。

<預かり保育の終了時間> 公立:2,266園、私立:6,285園、合計:8,551園
           公立      私立       合計
午後3時以前    160( 7.1%)   52( 0.8%)  212( 2.5%)
午後3~4時    506(22.3%)  193( 3.1%)  699( 8.2%)
午後4~5時    653(28.8%) 1,135(18.1%) 1,788(20.9%)
午後5~6時    616(27.2%) 3,063(48.7%) 6,679(43.0%)
午後6~7時    317(14.0%) 1,761(28.0%) 2,078(24.3%)
午後7時を超える   8( 0.4%)   68( 1.1%)   76( 0.9%)

   預かり保育の終了時間では、公立の場合には「午後5時」が最も多く、私立の場合には「午後6時」が半数(48.7%)を占めている。「午後7時」を超えた預かり保育を行っているのは公立ではわずかに0.4%、私立でも1.1%しかなく、欧米に比べれば、まだまだ共働きをしながら子育てをする環境が整ったとは言い難い状況だ。

   なお一層、預かり保育を実施する幼稚園などが増加し、預かり保育終了時間も延長されることが望まれる。こうした施策が功を奏して、子どもの増加につながることを期待したい。(鷲尾香一)

鷲尾香一(わしお・きょういち)
鷲尾香一(わしお・こういち)
経済ジャーナリスト
元ロイター通信編集委員。外国為替、債券、短期金融、株式の各市場を担当後、財務省、経済産業省、国土交通省、金融庁、検察庁、日本銀行、東京証券取引所などを担当。マクロ経済政策から企業ニュース、政治問題から社会問題まで、さまざまな分野で取材。執筆活動を行っている。
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