2020年 4月 9日 (木)

【年末は本を読む!】コストコ成長の原動力は「礼節」 無礼な人はこんなに会社をダメにする

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   米国の仕事の現場では近年、「礼儀正しさ」が減じて無礼な人の割合が増している。礼節ある振る舞いを心がける大多数の人たちにとって過ごしにくくなっており、そのことが、企業の生産性や成長にも暗い影を落としているそうだ。

   本書「Think CIVILITY(シンク シビリティ) 『礼儀正しさ』こそ最強の生存戦略である」は、成長を目指す企業ならば礼節を重視しなければならないと訴える。企業内でのいじめ、セクハラやモラハラは、ガバナンスやコンプライアンスが問われるだけでなく、放っておけば企業の生き残りにかかわる問題にも発展しかねないという。

「Think CIVILITY(シンク シビリティ) 『礼儀正しさ』こそ最強の生存戦略である」(クリスティーン・ポラス著、夏目大訳) 東洋経済新報社
  • 17の業界の800人にのぼる管理職、従業員を対象に実施した調査
    17の業界の800人にのぼる管理職、従業員を対象に実施した調査

20年間にわたり「職場の無礼」を研究

   「CIVILITY」は「礼節」とか「礼儀正しさ」を意味する。「礼儀正しさ」を指す英語というと、politeness(ポライトネス)を思いつく人が多いかもしれない。こちらは、本心からの「礼儀正しさ」というよりは、外形的なこと。それに対し、civilityは社会的に不作法、無礼でないレベルで礼儀を果たすことで、本書の原題は「Mastering Civility: A Manifesto for the Workplace」だが、そのいわんとするところは「最低限の礼儀のルール身につけることは、仕事の現場で目指すべきことの一つ」というようなものになろう。

   このように呼びかけねばならないほど、米国の仕事の現場では近年、社会的にみて礼儀を欠いた行為が目にあまるようになっているらしい。本書では、その言葉は使われていないが、いわゆるハラスメントが横行しているというのだ。

   2年前、メディアやSNSで著名映画プロデューサーが長年にわたるセクハラで告発され業界を締め出されたことは世界的にニュースになった。前後して、元コメディアンの上院議員や人気キャスターがセクハラを理由に辞職に追い込まれたり、解雇されたりもしている。

   著者のクリスティーン・ボラスさんはワシントンのジョージタウン大学ビジネススクール准教授。自身が社会に出て初めて就職した企業で「暴君のように振る舞う」マネジャーに悩まされた経験や、父親が長年にわたり上司のパワハラに苦しめられる姿を見てきたこともあり、「職場の無礼」の研究に「人生を捧げる」ことを決め、以来、20年間にわたりその活動を続けている。

   「そこで働く人が気持ち良く仕事をして大きな成果を出せるような、明るい職場や企業文化を作る手伝いをしたいと思ったものだ」と著者はいう。だが礼節の大切さを説いて歩くだけでは耳を傾けてはもらえない。そこでまず「無礼な態度がいかに大きな被害をもたらすか」を示そうと考えた。ハラスメントによる損失を数量的な明確化だ。

ストレス対応コストは年間5000億ドル

   米心理学会(APA)の試算だと、職場のストレスで米経済にかかるコストは年間5000億ドル。また、米国立労働安全衛生研究所(NIOSH)の報告によると、日々ストレスを感じながら仕事をしている労働者の医療コストは、そうでない労働者に比べ46%高い。ストレスの半分は、人間関係の問題であり、無礼な人物の存在を許す代償として企業は大金を負担せざる得なくなっているという。

   著者らが17の業界の800人にのぼる管理職、従業員を対象に実施した調査では、無礼な人間が及ぼす害は、病欠が増え生産性が落ちたり医療費が上昇させたりするだけではなかった。

   じわりじわりと企業をむしばんでいるのである。調査から、職場で誰かから無礼な態度を取られている人について「48%の人が仕事にかける労力を意図的に減らしている」「47%の人が仕事にかける時間を意図的に減らしている」「38%の人が仕事の質を意図的に下げている」「80%の人が無礼な態度を気に病み仕事の時間が奪われている」――などのことが言えるとわかったという。

   調査結果などから、著者はこう述べる。

「無礼な人間のせいで企業が利益や社員を失ったとしても、その多くは目に見えず、誰にも気づかれない可能性がある。誰かのひどい態度のせいで仕事をやめる決心をした人の多くは、雇用主に本当の理由を言わない。離職者が多いと、それに伴うコストが跳ね上がることになる。特に辞めるのが能力の高い社員である場合には、その人の年収の4倍ものコストがかかる場合もある」

   礼節に欠ける人、無礼な態度の人が職場にいると、管理職もその対応に煩わされ時間を浪費することになる。世界最大のビジネス誌である「フォーチュン」は、この問題についての人材派遣会社の調査結果を掲載。同誌が売上を元に順位付けをしている「フォーチュン1000」の1000社の管理職らは、社員間の人間関係の修復や、無礼な人間による悪影響の対応のため、職場での時間の13%を費やしているという。この割合は1年のうちの7週間分に当たる。問題解決のため社外のコンサルタントや弁護士らの力を借りればコストが莫大になる可能性もある。

ライバル企業と差別化

   一方、礼節を重んじるようにすれば、個人も、組織も、メリットを受けられる。個人の場合であれば、礼節を備えている人には、何かを一緒にやろうと誘われる機会が多くなる。つまり「仕事を得やすい」というのは第一のメリット。幅広い人脈を築ける可能性が高まりネットワークも広がる。「ソーシャルメディアなども発達した現代では、自ら積極的、活発に動き回って人的ネットワークを築こうとする人も多い。

   ただし、熱心なだけではネットワークはなかなか広がらない。それに加えて、その人に礼節がなければ周囲に人は集まってこないだろう」というわけだ。ここで引用されているアンケート調査によると、礼節のある人は無礼な人の1.2倍、就職への推薦を受けやすい。

   著者の研究によれば、企業のなかでリーダーの人物が礼節を備えていれば、そのリーダーが率いるグループ、あるいは企業全体としての業績にも好影響をもたらすことがわかっている。

   礼節あるリーダーの好例は、会員制大型スーパー「コストコ」の共同創業者の一人、ジェームズ・シネガル氏という。同氏は、小売企業にとって顧客と従業員は株主より重要と考え、こまめに店舗に足を運びそこで働く人たちに声をかけ感謝を伝えた。

   待遇でも努力に報いる姿勢を示し、従業員の平均時給は、競合会社であるウォルマートに比べ65%高い。コストコが従業員に向けた礼節や投資は業績に反映。同社の従業員一人あたりの売り上げは、最大のライバルであるウォルマートの子会社、サムズ・クラブの2倍近くになっている。

   コストコはまた、従業員の定着率が高いのも特徴。長く勤める人が多く離職率が低いということは、1年当たり数億ドルのコスト削減効果がある。こうした「礼節」が行き届いた様子から投資家らの間での評価が高まり、2003年から13年の間に株価は200%を超えて上昇。一方、ウォルマートの株価の上昇は50%程度にとどまっている。

   個人でも、企業をはじめとした組織でも、成長のための「最大の武器」の一つは、礼節や礼儀正しさという主張には、少なくとも一面の真理はありそうだ。本書の後半では、「礼節を高めるメソッド」や「礼節のある会社になるための4つのステップ」を提案。また「無礼な人に狙われた場合の対処法」について、実践的なアドバイスを授けている。

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「Think CIVILITY(シンク シビリティ) 『礼儀正しさ』こそ最強の生存戦略である」
クリスティーン・ポラス著、夏目大訳
東洋経済新報社
税別1600円

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