2020年 1月 20日 (月)

【日韓経済戦争・番外編】「安倍首相ありがとう!」韓国理工系学生が喜び、「BTS」が泣いた兵役免除 明暗のワケは?

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   すべての成人男子(19歳以上)が兵役に就くことになっている韓国で、兵役免除の特例をめぐって泣き笑いが起こっている。

   世界的に大人気で国威発揚に大いに貢献したKポップグループ「BTS」(防弾少年団)が兵役に就くことになり、一方、理工系大学生の兵役免除の優遇措置は残った。

   大学生たちは「安倍首相ありがとう!」と感謝しているという。いったいどういうことか。韓国紙で読み解くと――。

  • 「安倍効果」で理工系学生の兵役特例維持と報じる中央日報(2019年11月21日付)
    「安倍効果」で理工系学生の兵役特例維持と報じる中央日報(2019年11月21日付)

BTSの経済効果は5兆円、平昌五輪4兆円を超える

   韓国の少子化の急速な進行ぶりは日本をも上回る。女性が一生に生む子どもの数を表す「合計特殊出生率」が2018年、ついに0.98になり初めて1を割った。少子化が深刻といわれる日本でさえ1.42だから、いかに凄まじいかがわかる。

   「西暦2750年、韓国人は最後の1人が死んで地上から消える」――韓国の行政機関、国会立法調査処がこんな発表をしたのは2014年8月のことだが、それをも上回るペースで人口が減っているのだ。

   北朝鮮との全面戦争の危機を抱える韓国軍にとって、兵士になる若者の数がどんどん減ることは大問題なのだ。その一方で、徴兵制度には兵役免除の特例優遇措置がある。産業・経済の維持に欠かせない人材、スポーツ・芸術の分野などで国威発揚に貢献した人物などだ。そこで、韓国政府は2019年11月に1年以上の論議をかけて特例優遇措置を見直すことにした。兵士の減少を防ぐために兵役免除対象を大幅に減らしたのだ。

   その際、世論が大きな関心を寄せたのは、国民に人気のあるKポップグループを兵役免除の対象に入れるかどうかだった。これまで「芸術分野」で優遇措置を受けてきたのはクラシック音楽家や伝統芸能の人たちだったからだ。「東方神起」や「JYJ」などのメンバーが入隊するたびに「彼らの方が外貨を稼ぎ、国家に貢献している」という世論が巻き起こった。

   特に今回注目を集めたのは、BTSが兵役免除になるかどうかだった。BTSが今後10年間に誘発する経済効果は約56兆ウォン(約5兆円)と推定され、2018年の平昌(ピョンチャン)冬季五輪の経済効果の41兆ウォン(約3.9兆円)を超えるという調査結果が韓国のシンクタンクから出ていたからだ。

「克日」のためには理工系学生の兵役免除はやむを得ない

   さて、その注目の結果は――。

   中央日報(2019年11月21日付)「BTSの軍免除はない...『安倍効果』で理工系兵役特例は維持」が、Kポップファンにとって無情の結末をこう伝えている。

「韓国政府が11月21日に発表した代替服務制(兵役免除特例制度)改善計画で、安倍晋三首相が韓国の科学技術界と産業界を助けた。大幅縮小の方向で改善が進められてきた理工大修士・博士級の兵役特例がほとんどそのまま維持される。BTSなど国威宣揚に大きく寄与した大衆文化芸術家を特例の対象に含めるべきだという一部の世論は受け入れられなかった」

   これまでは、経済界の発展のために、理工系大学院生で一定のレベル以上に達した学生は兵役を免除されてきた。ところが、兵士の人員激減という現実を前に、背に腹は代えられず、彼らもかなりの割合で免除の対象外にする案が固まっていた。兵役に就くと、21か月(2020年6月からは19か月)入隊することになる。体が弱くて軍事教練に耐えられない者も、同じ期間を公的機関(福祉施設など)で服務活動をしなくてはならない。

   ところがその後、2019年7月に日本の安倍晋三政権が半導体部品の輸出管理強化という挙に出た。半導体部品の国産化を急がなければならない事態に陥った。このため、理工系大学生の兵役免除がほぼ維持されることになったのだ。

   中央日報はこう続ける。

「確定した見直し計画によると、理工大学博士課程の専門研究要員定員(免除枠)は現行の1000人を維持する。また、修士課程は現在の1500人から20%(300人)減の1200人に縮小する。全体の人員は減るが、緊急性が要求される半導体の素材・部品・装備関連分野の中小・中堅企業に配置される人員はむしろ増やすという」

   最初の案では、免除枠が半分以上は減らされるとみられていたから、理工系大学生たちはほっと胸をなでおろしたことだろう。今回の措置について、科学技術情報通信部(日本の科学技術庁に相当)のク・ヒョクチェ未来人材政策局長はこう語っている。

「(兵役免除枠の)専門研究要員制度はこれまで、兵役資源の減少と公平性の問題のため大幅に縮小する方向で進められてきた。しかし最近の日本の輸出規制事態を受け、半導体の素材・部品・装備分野の支援策を用意するため、高級理工系研究人材の養成が国家的な課題という共感が国民の間で形成された」

   兵役の免除は公平、平等の面から非常にデリケートな問題だ。だが、「克日」という一点でまとまった国民世論にあって、「理工系大学生の優遇はやむなし」という共感が得られたというのだ。

「芸能人はビジネスで活動し、莫大な富も得ている」

   一方、BTSはなぜ認められなかったのか。中央日報が続ける。

「全面廃止まで検討されていた芸術・スポーツ分野の代替服務要員(免除枠)は年間45人程度であり、縮小しても兵役資源確保効果は大きくないため、そのまま維持することにした。アイドルグループBTSなど大衆文化芸術家が国威宣揚に大きく寄与したという一部の要求に対しては、公正性・公平性を向上させようとする政府の基本立場と合わず、受け入れられないとした」

   実は、BTSなどの芸能人については「韓流を広めたり、国威発揚に貢献したりしているとはいえ、彼らはビジネスとして芸能活動を続けて、莫大な富も得ている。兵役を免除するのは不公平だ」という反対意見も根強いのだ。

   こうした政府の決定に対して、韓国芸能界から抗議の動きが上がっている。

   中央日報(2019年12月11日付)「大韓歌手協会、『K-POP歌手の兵役問題はこのままでいいのか』公聴会開催」がこう伝えている。

「大韓歌手協会が『K-POP歌手の兵役問題はこのままでいいのか』という主題の公聴会を開催する予定だと12月11日に発表した。大韓歌手協会のイ・ジャヨン会長は『BTSの今後10年間の総経済効果は約56兆ウォン(約5兆円)に達し、平昌五輪を上回るという事実は国民みんなが知っている。BTSの経済効果でK-POPブランドとその価値は最高潮に達している。このような時期にメンバーが兵役に就いてツアー活動が中断されれば、韓流の未来に大きな障害になる』と述べた」

   ただ、イ・ジャヨン会長はあくまで、

「K-POP歌手の兵役を無条件に免除してほしいという一方的要求ではない。各界各層の意見を万遍なく聞いて、社会的合意を導くことが第一の目的だ」

と念を押したのだった。

(福田和郎)

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