2024年 4月 20日 (土)

ハリー王子夫妻は「賭け」に失敗したのか!? 王室離脱で待ち受ける「いばらの道」(井津川倫子)

   英国王室のハリー王子とメーガン妃が、英王室を離脱して公務から引退することを発表しました。

   ハリー王子自身が「大きな賭けに出た」と思わず吐露したほどの重大決意に世界中が騒然! 若き二人の幸せを願いつつも、20年以上英国メディアの王室報道をウオッチしてきた私の心は晴れません。

   英メディアがこぞって「二人の将来はいばらの道」と警告するように、「本当の戦い」はこれからだからです。

  • 英国騒然!? ハリー王子夫妻はどうなるのだろう
    英国騒然!? ハリー王子夫妻はどうなるのだろう
  • 英国騒然!? ハリー王子夫妻はどうなるのだろう

「やんちゃ」なハリー王子の本心は......

   英国王室は、ハリー王子とメーガン妃が2020年春に公務から退き、「HRH、His/Her Royal Highness(殿下、妃殿下)」の敬称を使わないと発表しました。今後は公的資金を受け取らないうえに、「公金の無駄遣い!」と非難されていた英国居宅の改修費(約3億4000万円)も返済する方針だそうです。

   日本人にはピンときませんが、この「HRH(殿下、妃殿下)」の敬称を使えないのは大きな痛手のようで、ハリー王子の母・故ダイアナ妃が王室を離脱した時に「敬称の継続を切望」したものの「却下されてショックを受けた」という記事を目にしました。

   ハリー王子といえば、以前からやんちゃな言動で世間を騒がせてきましたが、今回の王室離脱は相当な覚悟だった様子。ハリー王子が語った「王室メンバーとしての最後のスピーチ」では、神妙な顔つきと絞り出すような声で、決意のほどを語りました。

We are taking a leap of faith
(私たちは思い切って賭けに打って出ることにした)
take a leap of faith:思い切って賭けに出る、大丈夫だと信じてやってみる

There really was no other option
(実際、他の選択肢は無かった)

   「take a leap of faith」は、結果として失敗するか成功するかわからない、というニュアンスを含みます。ハリー王子は「王室離脱の決意が吉と出るか凶と出るかわからない」ものの、「離脱以外の選択肢が無かった」と、心境を吐露したのです。

   早速、英紙「The Times」は「Harry tells of sadness at giving up royal duties」(ハリーは王室公務をあきらめる悲しさを伝えた)と報じました。苦渋の決断に追い込まれたような無念さが伝わるスピーチに、「本当は離脱したくなかったのでは?」という臆測がメディアを賑わしています。

ハリー王子夫妻が逃れたかったのは王室ではなかった?

   じつは、ハリー王子夫妻の王室離脱は、数か月前から予兆がありました。

   最大のきっかけは、2019年秋にハリー王子とメーガン妃が起こした裁判騒動です。メーガン妃のプライベートな手紙をタブロイド紙が掲載したことに腹を立てて法的手段をとったのですが、王室メンバーがメディアを訴えるのは異例中の異例。この時点で英BBC放送のベテラン皇室担当記者は、

「メディアを挑発するだけだ」
「誰も止めなかったのか!」

と、警笛を鳴らしていました。

British tabloids are not afraid of a fight.
(英国のタブロイド紙は戦いを恐れない)
be afraid of:~を恐れない
They may feel provoked
(彼らは、挑発されたと思うだろう)
Did any of his advisers urge restraint?
(彼のアドバイザーの誰も止めなかったのか?)

   案の定、ハリー王子夫妻に宣戦布告をするかのように、英国内の報道はさらにエスカレートしていきました。ハリー王子は以前から「メディアとのつきあいが苦手(BBC王室担当記者)」で、兄のウイリアム王子とは対照的にメディアへの敵対心をあらわにしてきました。

   「戦いを恐れない」英国のタブロイド紙は、敵とみなした相手には容赦なく襲いかかります。「離脱以外に選択肢がなかった」と語ったハリー王子ですが、本当に望んだのは王室ではなく「英国メディアからの離脱」だったのではないでしょうか。

   ところが、世の中、そうは甘くありません。「英国王室」の保護下を離れたとたん、メディアは遠慮なく牙をむき出しにします。さっそく英タブロイド紙が、カナダで散歩中のメーガン妃を「盗み撮りした」写真を掲載したとして騒動に。夫妻は「必要ならば法的手段を取る」と声明を出しましたが、数か月前にベテラン皇室記者が予告したように、メディアとの大戦争は王室の保護を離れた「これからが本番」なのです。

「『おいしいとこどり』させない!」女王に称賛の声

   今回のハリー王子夫妻の王室離脱問題で、株を上げたのはエリザベス女王でしょう。ハリー王子の本音としては、王室メンバーの特権は手放さずにカナダと英国でプライベートな生活を送りたいというものだったようですが、「『おいしいとこどり』はさせない」というエリザベス女王の決断を支持する声が多いようです。

The Queen's decision was not to let Harry and Meghan "have their cake and eat it"
(女王の決断は、ハリーとメーガンに「矛盾する二つのことを両立させない」というものだ)
You can't have your cake and eat it:二つの矛盾することを同時に得られない

   「You can't have your cake and eat it」は、「ケーキは食べたらなくなる」つまり「二つの矛盾することを両立できない」という意味のことわざです。

   孫もひ孫もかわいいけれど、王室を守るために「『おいしいとこどり』は許さない」という、女王の意志を的確に表しているようで、思わずうなってしまいました。

   それでは、「今週のニュースな英語」は、「ハリー王子の王室離脱をめぐる英語表現」を紹介します。

Harry and Meghan gave up royal titles
(ハリーとメーガンは、王位を捨てた)

Harry is a grandson of Queen Elizabeth II
(ハリーはエリザベス二世の孫になる)

Harry is still 6th in line to the British throne
(ハリーは、英国で6番目の王位継承者のままだ)

They decided to live in the UK and Canada
(彼らは、英国とカナダで暮らすことにした)

They no longer carry out royal duties
(彼らは、もはや公務を行わない)
no longer:もはや~でない

This new model will take effect in the spring of 2020
(2020年春からこの新しいモデルが効力を発する)
take effect:効力を発する

   ハリー王子夫妻のカナダ移住をめぐっては、年間数億円以上にのぼる多額の警備費用を「誰が負担するのか」との懸念が出ています。パパラッチとの戦いが本格化すればするほど警備費用はうなぎ登りに......。残念ながら、ハリー王子夫妻の未来は前途多難のようです。(井津川倫子)

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井津川倫子(いつかわりんこ)
津田塾大学卒。日本企業に勤める現役サラリーウーマン。TOEIC(R)L&Rの最高スコア975点。海外駐在員として赴任したロンドンでは、イギリス式の英語学習法を体験。モットーは、「いくつになっても英語は上達できる」。英国BBC放送などの海外メディアから「使える英語」を拾うのが得意。教科書では学べないリアルな英語のおもしろさを伝えている。
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