2020年 11月 30日 (月)

世界で広がる経済格差 上位2100人の「富」が46億人分の資産を上回る現実のウラ側(鷲尾香一)

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   「世界の富裕層の上位2100人の資産が世界の総人口の6割にあたる46億人分の資産を上回る」――。国際的なNGO(非営利組織)の「オックスファム」が2020年1月20日、ダボス会議(世界経済フォーラムの年次総会)に合わせて発表した最新の報告書で、こんな衝撃的な推計が明らかになった。

   オックスファム・インターナショナル(Oxfam International)は、貧困と不正を根絶するための持続的な支援・活動を90か国以上で展開している団体で、例年、ダボス会議の開催に合わせて経済格差に関する報告書を発表している。

  • 世界中で経済格差が広がっている
    世界中で経済格差が広がっている
  • 世界中で経済格差が広がっている

富裕層の多くが意図的に税金逃れ

   この報告書によると、2019年時点で10億ドル(約1100億円)以上の資産を持つ富裕層2153人の富の合計が、世界の総人口の6割にあたる約46億人分の資産の合計を上回っているとし、「富裕層とその他の人々の格差は想像を絶する規模になっている」と指摘している。

   その一例として、世界で最も裕福な1%の持つと富の合計は、その他の69億人が持つ富の合計の2倍以上となっていることや、世界で最も裕福な22人の男性の富の合計は、アフリカのすべての女性が持つ富よりも大きいことをあげている。

   そして、世界で経済的な格差が広がっている一因として、富裕層や大企業向けの優遇税制が行われていることや、富裕層の多くがタックスヘブンなどを利用して、意図的な税金逃れを行っていることをあげ、富裕層は本来支払うべき税額のうち、3割にあたる額を逃れている、としている。

   もし、上位1%の富裕層の富に今後10年間、0.5%の税金を追加すれば、教育、医療、高介護などの分野で1億1700万人の新たな雇用を創出できるようになると指摘している。

権力者が富裕層と癒着「富を貪っている」構造がある

   さらに、「経済的不平等はジェンダーの不平等によってもつくられている」とし、男女の経済格差にも言及。世界全体で労働年齢の女性の42%(男性は6%)が介護などの責任を負わされて、仕事に就けずにいる。また、介護や育児などの無報酬や正当に評価されていない労働の総時間は125億時間にのぼり、年間で少なくとも10兆8000億ドルに相当すると、推計している。

   こうした点においてジェンダーの不平等があり、女性には低賃金で不安定な雇用や、家事・育児・介護など賃金不払いあるいは異常に低賃金の労働が不釣り合いに押し付けられているため、「政府が介護などの分野に投資し、女性に適切な賃金が支払われるしくみを作るべきだ」と提言している。

   この報告書では、「各国政府は1%ではなく99%の国民の利益になる経済をつくらなければならない」と訴え、(1)富裕層・高額所得者・大企業への課税強化と税金逃れ対策(2)低賃金や無権利となっている介護などの労働者の保護③ジェンダーの不平等の是正―― などを求めている。

   ちなみに、オックスファムの2018年時点の報告書では、世界の富裕層上位26人が、世界の人口の約半数となる約38億人と同じ額の資産を保有しており、この約38億人の資産合計は対前年比で11%減ったのに対し、富裕層1900人の資産合計は12%増加しているとしている。2019年時点と比べれば、格差は一段と拡大しているわけだ。

   日本を含め、多くの国がそうであるように、国家や政権、権力者が富裕層と癒着し、富を貪っている構造があり、それが格差を縮小・解消するための法規制などを妨げている要因となっている。こうした状況を改善しない限り、格差の縮小は難しいのではないだろうか。(鷲尾香一)

鷲尾香一(わしお・きょういち)
鷲尾香一(わしお・こういち)
経済ジャーナリスト
元ロイター通信編集委員。外国為替、債券、短期金融、株式の各市場を担当後、財務省、経済産業省、国土交通省、金融庁、検察庁、日本銀行、東京証券取引所などを担当。マクロ経済政策から企業ニュース、政治問題から社会問題まで、さまざまな分野で取材。執筆活動を行っている。
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