2021年 4月 12日 (月)

第2の「くまモン」は追うな! 地方再生のヒント? 必要なのは地産品を見直す逆転の発想だ

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   東京を中心とする首都圏で大きく転入超過が続き、「東京圏一極集中」は止む気配がない。

   対照的に、地方では人口の減少や経営資源の限界もあって、企業や産業の成長が難しくなってきている。その中で大きな期待が寄せられているのが、「地域ブランド」。熊本県の「くまモン」のような人気者が生まれれば、地域の産品が売れ、観光客が訪れ、地域のアイデンティティーの核にもなり、経済的効果ははかり知れない。

「地域活性マーケティング」(岩永洋平著)筑摩書房
  • 地方都市の商店街の多くは、かつてのにぎわいが姿を消している
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ブランディング成功は幸運

   本書「地域活性マーケティング」によると、「くまモン」の顰に倣って、地域ブランドの形成に躍起になっている自治体や地域は多いが、予算とそれに伴う継続性の限界があって、望んだような結果が得られていないのが実情という。

   ブランド形成というと、イメージ作りを先行させて、それを頼りに地域を代表するような産品を仕立てる流れになるのが一般的だが、それでうまくいかないのであれば、アプローチを変えてみるのも手ではないか、という。

   著者の岩永洋平さんは、シンクタンクなどを経て、広告会社のアサツーDK(現ADKホールディングス)→確認をお願いしますに勤務。他方で、法政大学地域研究センター客員研究員を務め、大手企業のほか地方の中小企業、公共団体などのブランド戦略、コミュニケーション開発、事業計画策定、研究開発を担当するなど、サラリーマンと研究者の二足のわらじで地方の活性化に携わっている。

   その活動を通じて蓄えたマーケティング調査の結果をもとに、従来の方法とは順序を入れ替えて、認知が先行している地域産品を核にしてブランド形成を進めるような、新しいタイプの試みを提案している。

   成功すれば、大きな経済効果が期待できる地域ブランドだけに、総合的な地域振興を主導する自治体では、その形成を目指し、いわゆる「ブランディング」の政策を盛んに打ち立てている。この段階は、直接の商品販売を伴うものではなく、自治体が行う地域ブランドの認定制度の策定や、イメージ形成のためのさまざまなコンテンツの制作が実際の活動になる。

   具体的なアクションでいうと、ブランドコンセプトの確立、コピー編集、ロゴマークの開発、あるいは、ゆるキャラの考案、PR動画の制作などで、これらがファーストステージ。そして、ファーストステージ用意したものを素材としてホームページやポスターなどを作り、イベントや動画サイトなども使ってコミュニケーション活動を展開する。それがセカンドステージだ。

   このファースト、セカンド両ステージのアクションがブランディングということになる。

限られた原資がボトルネック

   ブランディングが大当たりした例が「くまモン」だ。だが、著者によれば、くまモンのヒットは運がよかったことが多分にあり「地域ブランドの価値を高めるための活動として、そのようなブランディング活動は本当に効果的なのか」と疑問を投げかける。

   そういわれてみると、確かに第2、第3のくまモンといえるような存在は見当たらない。

   自治体などがブランディングにより地域ブランドの確立を目指すのは、地域ブランドが地域産品に「価値付与」をし、地域ブランド産品として高まった評価の「波及効果」で、地域ブランドの効果がいっそう高められる「双方向の影響関係」が想定されているからだ。

   たとえば、地域ブランドの「伊勢」の価値が、消費者に認められているおかげで、地産品である「赤福」にも価値が付与される。地産品の「厚岸の牡蠣」に対する評価が高まれば、地域ブランドであり「北海道」や「北海道の海の幸」の価値がいっそう向上する。こうした関係が目標にされている。

   だが、伊勢や北海道はもともと地域ブランドをつくる素材に事欠かない土地柄で、そうした素材を持たない場所では、地域ブランディングの活動では苦戦を強いられるのは当たり前のことだ。

   何もないところでブランドを創造しようとすれば、自治体の原資が限られていることがボトルネック。経済産業省が行った調査でも、地域ブランディングがうまく進んでいない「最大要因」として「予算が不十分」な点が指摘されている。

   アピールできる素材を持たない場所では、地域ブランドとして認められるような何かを確立する前に資金が底をつき、ブランディングは中途半端なままで動きが止まってしまう。そして「評価が定まっていない地域ブランドは地産品に十分に価値を付与できる見込みがない。地産品にありがたみがなければ地域ブランドへの波及効果もない」ということになる。

「地域産品」を起点に考える

   著者はこの事態に、地域ブランドの形成が困難に見舞われるのは、ブランディングでまず「地域ブランド」の価値を形成し、それから地域産品に「価値付与」を狙うからではないか、と指摘。順序を入れ替えて、「地産品」を起点として、その「波及効果」によって地域ブランドの価値を高める可能性を探ってみることを提案する。

   たとえば、くまモンの高い訴求力でミカンやトマトなどの熊本県の名産品が知られるようになったが、地域ブランドを背景とせず、製品のマーケティングで全国に販路を拡大している地産品もある。

   著者の提案は、それらに依存して地域ブランドの確立していく手もあるのではないかというものだ。

   そこで問題になるのは「地産品が、地域ブランドの価値を高められるかどうか」だ。それを知るために用いられたのは「仮想的市場評価法」。商品のスペックを被験者に提示して「いくらなら買うか」を聞き、その評価価格と量販店のプライベードブランド(PB)製品などの価格との差が、地産品の「プレミアム度」といえる。

   本書で引用されている仮想的市場評価に用いられた地産品は、高知「馬路村農協」のゆずぽん酢、香川・小豆島「井上誠耕園」のオリーブオイル、岩手・釜石「三陸おのや」のサバの味噌煮、北海道・小樽「ルタオ」のチーズケーキ、福岡「茅乃舎」のだしパックの5品目。

   このうち、地域産品「馬路村農協のゆずぽん酢」の場合、これを知っている消費者はPBと比べて142%の価格で買うと評価。知らない消費者の同129%の値付けより13ポイント高く、馬路村農協のマーケティング活動により消費者に認知されていることが示された。

   他の4品目でも、非認知者の評価より5?15ポイント高く、これら地域産品については「十分に高い波及効果」が確認されたとしている。

「ふるさと納税」も議論

   こうした地産品は、仮想的市場評価で示されたように、地域ブランドの価値評価を高める可能性を秘めた「地域の資産」といえる。認知者のほうが、非認知者に比べて、PB比で高い評価価格をつけていることは、その品物のプレミアム度が高いばかりか、品物独自のマーケティング活動の効果が地域ブランドの価値を高める可能性があることを示しているという。

   だから、プレミアム度が高い、または高いと思われる産品がある地域では、それを使った地域ブランドの形成により、光明を見出せる場合があるのではないかというわけだ。

   本書ではまた、地方から大きな期待が寄せられスタートし、存在感を増している「ふるさと納税」についても議論。2008年に制定され、近年では、本当に地方のためになるのか、疑問も寄せている。

   地方活性化の点から、その意義や仕組み、地方交付税交付金との関係、政策的妥当性など多角的に検討。「利用者調査による制度検証」で、「地方応援層」「利得志向層」を詳しく分析するなどして、改革を実現するための「ふるさと納税制度への提案」を行っている。

「地域活性マーケティング」
岩永洋平著
筑摩書房
税別860円

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