出でよ! ユニークなオンリーワン自治体 地方創生モデルを増やすことが未来の日本をつくる 新たな「生涯活躍のまち」中野孝浩参事官に聞く(前編)

   東京への一極集中の解消と地方創生は、日本の大きな課題だ。少子高齢化の進展で、「地場産業の担い手不足」や「空き家」が社会問題化して、過疎化どころか、「限界集落」まで現れた。

   危機感が高まるなか、366の地方公共団体が活路を見いだそうと、内閣官房のまち・ひと・しごと創生本部が推進する「生涯活躍のまち」の取り組みに名乗りを挙げるとともに、地方創生に向けた挑戦をはじめている。

   内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局の中野孝浩参事官に、その取り組みを聞いた。

  • 内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局の中野孝浩参事官は、「地方創生モデルを増やすことが未来の日本をつくる」と話す。
    内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局の中野孝浩参事官は、「地方創生モデルを増やすことが未来の日本をつくる」と話す。
  • 内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局の中野孝浩参事官は、「地方創生モデルを増やすことが未来の日本をつくる」と話す。

「全世代・全員活躍型」のまちづくりをめざす

石川県輪島市の子育て支援施設「ママカフェ」(「内閣官房まち・ひと・しごと創生本部」資料より)
石川県輪島市の子育て支援施設「ママカフェ」(「内閣官房まち・ひと・しごと創生本部」資料より)

   ――「生涯活躍のまち」の取り組みが第2期に入り、参加する地方自治体が増えてきたと聞いています。第1期との違いは、どこにあるのでしょうか。

中野孝浩参事官「この5年間はアクティブシニアと呼ばれる中高年齢者を中心とした、移住に重点を置いていました。しかし、取り組みを進めている中で徐々に『コミュニティ』に重要性があることが見えてきたのです。また、全国の先進的な団体の事例を見ても、そこを重視していることがわかりました。それにより、中高年齢者の取り込みだけでなく、若者世代のニーズにも応え、全世代の活躍を推進したほうがいいのではないか、ということになりました。
さらに地方公共団体の意向調査から、これまで地域共生社会を目的に取り組んできた自治体の中でも、人口減少を乗り越えるために、その多くが『分野横断的な政策』を推進したいと考えていることがわかったのです。
2020年3月末にまとまった意向調査(2月1日現在)の結果では、『生涯活躍のまち』の推進派(「推進意向がある」団体)が、過去最高の366まで大幅に増えました。そのうちの102団体が、すでに具体的な構想や計画を策定しています。
2018年10月1日時点と比べると、「推進意向なし」と答えた自治体は415から157まで減りました。『全世代・全員活躍型』のコミュニティづくりに重点を置くことを、多くの団体の現状の方針や取り組みにも適合して、より関心が高まったと考えています」

   ――「全世代・全員活躍型」とは、どのような人の移住を想定しているのでしょうか。

中野参事官「まず、必ずしも移住にはこだわっていません。全世代・全員活躍型の生涯活躍のまちとは、誰もが活躍するコミュニティづくりを目指しています。つまり、世代に関係なく、コミュニティへの移住だけでない人の流れをつくること。そのような人たちを『関係人口』ととらえ、何らかのご縁を持ってもらい、『交流以上移住未満』の、その地域のファンをつくるような『プラットフォーム』づくりを、第2期の方針に盛り込みました。
『移住』というとハードルが高くなりますが、一定期間滞在して、リモートワークしながら地域に貢献してもらう、そういったモデルをつくりたいと思っています。たとえば、会社から派遣されて、それなりの期間滞在した地方と関わりを持つことによってご縁ができれば、定年後に、そこに行ってみよう、暮らしてみよう、地域に貢献してみようというインセンティブにつながりやすいのではないでしょうか」

   ――「生涯活躍のまち」のコンセプトを教えてください。

中野参事官「コンセプトは、誰もが『居場所』と『役割』を持つコミュニティです。地方に全世代・全員活躍型の居場所をつくり、都市部と地方の連携、人材の循環をつくり出すことを模索します。
じつは石川県輪島市の『輪島KABURET拠点施設』や島根県南部町の『あなたの活き方をデザインできるまち』、岡山県奈義町の新たな就労支援モデル『しごとコンビニ』などの先進的なモデルとなる自治体が、すでにあります。『活躍・しごと』『交流・居場所』『住まい』『健康』の4つの要素を、必要な機能として確保して、そこに生涯活躍のまちとと関係人口を掛け合わせる取り組み(都市部との人材循環)を推進しています。
こうしたコンセプトに基づいた取り組みを、6月までにガイドラインとしてまとめ、それを全国の団体に示しながら、それぞれの自治体が工夫して、地域ごとに構想を練っていただきたいと思っています」

空き家が続く街並みが一変! 注目の輪島市「ごちゃまぜのコミュニティ」

石川県輪島市の「ごちゃまぜのコミュニティ」は注目(写真は、中野孝浩参事官)
石川県輪島市の「ごちゃまぜのコミュニティ」は注目(写真は、中野孝浩参事官)

   ――地方公共団体の危機感は、かなり強いのでしょうか。

中野孝浩参事官「切羽詰まっている町村も多いと思います。隣接する市との合併を諦め、人口減少の一途でピーク時の半分。地場産業、ありません。そう言うと、深刻で手立てがないように思えますが、じつはそういった地方のほうがおもしろいアイデアを多く持っているのも事実です。本当に困った地域ほど、住民の力を合わせて本気で取り組まれることも多いんです。志の高い自治体は、自分たちの力で考え抜き、地域総動員で動いているわけです」

   ――先進的な事例について、具体的に教えてください。

中野参事官「その一つ、石川県輪島市は約2万6000人(2019年12月時点)の町ですが、中心市街地のはずなのに過疎化によって空き家だらけになり、夜は真っ暗になっていました。そこに温泉を掘り、人が集まれるような交流拠点を設けたのです。風呂というのは日本人の交流拠点として伝統があり、その周りに居酒屋のような交流スペースやフィットネスのような運動できる場所や、子育て世代の方々が集まれるような、厨房付きの料理ができる場所を、空き家を改修してつくりました。そうした巧みな『仕掛け』が成功し、いろいろな人が集まり、交流するようになった結果、すばらしい『ごちゃまぜのコミュニティ』が形成されました」

   ――「ごちゃまぜのコミュニティ」というのは、どのようなものなのでしょう。

中野参事官「たとえば、お年寄りはお年寄りだけ、若者は若者だけと分けて支援していくと、それぞれに分断されたコミュニティができてしまいます。しかし、たとえば温泉に入ると、みんな一緒になっていきます。伝統的なコミュニティというのは、みんなが交流しながら『ごちゃまぜ』になって、それぞれが役割を果たして、思いがけない力を発揮しています。
先の輪島市では、外国人や障害のある方を含め、ごちゃまぜで交流しています。いろいろな方々がちゃんと『居場所』と『役割』を持ってまざりあって、それぞれの役割を果たしているんです。コミュニティの中で、それぞれの持つ能力を活かして暮らすわけですから、そこでは人々が多様性を認めあって、じつは街全体でみるとすごい強みになっているのではないでしょうか。
366の地方公共団体が生涯活躍のまちの一定のコンセプトを守ったうえで、地域のニーズをどのようにカタチにするかを考え、工夫して、その土地の魅力や多様な地域資源を生かしていく。これが一律だとおもしろくありません。基本コンセプトである、『誰もが《居場所》と《役割》を持つコミュニティ』と、それを実現するための4つの要素を守っていただければ、あとはその地域の特性を生かして柔軟に個性を活かしたまちづくりを進めてもらえばいいと思います。逆にそうならないと、おかしいですよね。似た者同士でつながる分断ではなく、まざりあっての心地よさをうまく生かしていく。そこを狙っていきたいですね」

後編につづく

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