2024年 4月 26日 (金)

「2回目以降まとめ買い?」「解約できない」...... トラブル増える「お試し商法」に規制のメス(鷲尾香一)

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   「悪質なお試し商法」に「規制のメス」が入ることになりそうだ。

   内閣府消費者委員会は2020年6月26日、「『悪質なお試し商法』に関する意見」を取りまとめた。

   この意見では、「お試し商法」に対する新たな規制のあり方をまとめ、「消費者庁で早急に対策を講じるべき事項」として進言している。

  • 「お試し」をうたう通販の利用が増えている(写真はイメージ)
    「お試し」をうたう通販の利用が増えている(写真はイメージ)
  • 「お試し」をうたう通販の利用が増えている(写真はイメージ)

2019年だけで約5万件の相談があった

   「お試し商法」とは、近年テレビやインターネットなどの通信販売を中心に急増している、

「定価3000円がお試し無料」
「定価3000円がお試し価格500円 」

などの「お試し」をうたい文句として、実際には定額購入を条件に契約を締結させる商法。

   この定額購入をめぐる相談件数は、国民生活センターと全国の消費生活センターを繋いだPIO-NET(全国消費生活情報ネットワークシステム)に急増しており、2016年4月から2020年5月の累計で11万件を超えた。2019年度だけでも、約5万件が寄せられている。

   筆者の知人で「お試し」販売で商品を購入したが、言われていた効果が得られなかったことから解約しようとしたができず、消費者生活センターに相談に行った経験のある50代女性は、「会社側がきちんと契約内容を記載しているというが、契約内容の詳細は、「虫眼鏡」を使っても読めないほど小さな字で書かれている。

   解約を申し出ても、「違約行為」にあたり、最低3か月は継続して購入する義務があると言われた」と話す。

   そんな「おためし商法」を、内閣府消費者委員会では「回数縛り型」「違約金型」「解約困難型」に3分類している。

   その内容は、

「回数縛り型」
たとえば、お試し価格を誇張して一回限りのお試し販売と見せかけ、実際は最低X回の購入などを条件とした定期購入契約を締結させる場合。

「違約金型」
たとえば、定期購入契約ではあるが回数縛りなどの条件はなく、当該定期購入契約の解約がいつでも可能であったとしても、初回購入後、中途解約した場合には初回がお試し価格ではなく通常価格に戻り、いわば解約料または違約金のようなものが請求される場合。

「解約困難型」
たとえば、定期購入契約につき、電話による解約手続に限定されているため、販売業者に電話をかけたところ、一向につながらない場合などであって、その間に販売業者側が定めた解約期限が過ぎてしまい、次回分の商品の受領及び支払をせざるを得なくなる場合。

――で、こうした販売形態のあり方について同委員会では、「表示」と「契約内容」「解約手続」「消費者による誤認など」の点で問題があると指摘している。

解約自由なのに「解約期間を短く」「電話に出ない」

   4つの問題点については、

「表示」
販売業者がお試し価格や解約自由の表示を他の契約条件の表示よりも誇張し、かつ契約条件の全体が理解困難な表示手法がとられている。たとえば、お試し価格などの表示につき、他の契約条件と比して著しく大きなフォントサイズ、目立つフォント、文字色、背景色などを使用するほか、お試し価格の表示から何度もスクロールしなければ認識できないような離れた位置に他の契約条件を表示すること。

「契約内容」
たとえば、中途解約した場合にはお試し価格が通常価格に戻ること、2回目は数か月分の一括購入とすること。

「解約手続」
たとえば、定期購入契約であることを表示する一方で、解約自由を強調しておきながら、実際には解約手続の方法を電話のみに限定し、かつ解約期限を比較的短い期間に設定することによって当該期間が過ぎるまで電話受付を事実上拒否して解約できないようにすること。また、解約期限を他の契約条件と関連させて複雑にしたうえで、他の契約条件を表示しない、またはわかりづらく表示すること。

「消費者による誤認など」
たとえば、表示に係る問題や「お試し」という文言に対する消費者の一般的な理解と定期購入という実際の契約内容との矛盾を前提として、消費者に対して金銭的な負担はない、またはお試し価格のみ支払えばよいと誤認させること。

   こうした実態に対して、消費者委員会では「法制度や法執行のあり方を含む消費者被害の未然防止、再発防止、被害回復について検討を行い、必要な措置を講ずるべき」としており、「ガイドラインの見直し」と「執行の強化及び高度化」について、消費者庁に対して早急に対策を講ずべきとしている。

   具体的には、

「 ガイドラインの見直し」
インターネット通販における申込みの最終確認画面などを規律する「インターネット通販における『意に反して契約の申込みをさせようとする行為』に係るガイドライン」につき、見直すこと。

「執行の強化及び高度化」
執行官庁の迅速な執行などを通じて悪質な事業者を市場から淘汰するとともに、健全な事業者が適正な事業を行えるよう、執行の強化に向けて、事業者や消費者にとってわかりやすいガイドラインを整備すること。

   また、ICT(情報伝達技術)やAI(人工知能)の積極的な活用、健全な事業者団体などとの連携の強化により、監視を高度化する体制を整備すること。

――の3点だ。

   コロナ禍にあって、食品類や日用品をはじめ、あらゆるモノを通販で買う傾向が高まっている。通販を利用する人は、まだ増えそう。規則の改正で、「お試し商法」が健全に運用されることで、消費者にとって「お試し」が真に意味のあるものとなり、購入につながるような形に改善されていくことが必要だ。(鷲尾香一)

鷲尾香一(わしお・きょういち)
鷲尾香一(わしお・こういち)
経済ジャーナリスト
元ロイター通信編集委員。外国為替、債券、短期金融、株式の各市場を担当後、財務省、経済産業省、国土交通省、金融庁、検察庁、日本銀行、東京証券取引所などを担当。マクロ経済政策から企業ニュース、政治問題から社会問題まで、さまざまな分野で取材。執筆活動を行っている。
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