2024年 4月 20日 (土)

【SDGs大学長がゆく】売り上げの90%を「捨てた」栄新薬の挑戦 そこにはSDGsでできる食材のイノベ―ションがあった

来店不要なのでコロナ禍でも安心!顧客満足度1位のサービスとは?

開発した「気流粉砕機」は食品ロスにも寄与する

「マルチドリンク充填機」
「マルチドリンク充填機」

   健康寿命をテーマに業務をスタートさせ、サプリメントではなく食品として、いかに口から栄養を摂り、食の楽しさを提供できるかをテーマに、行きついたのは離乳食から介護食まで幅広い用途に簡単に活用できる食材のパウダー化だった。

   複数の栄養素を簡単に摂取できる。加工しやすい。必要な分量だけ使える。保存しやすいなど、パウダー化には多くのメリットがある。

   そのために、新しく「気流粉砕機」の開発に取り組んだ。これは粉砕機内に気流の対流を起こし、原料同士をぶつけ合い自生粉砕する粉末加工で、投入から粉砕の時間を非常に短くして(毎秒1秒で、80~90度の温度で熱処理する)、原料が含む栄養素を失活しにくくし、色素と風味の再現性を高く、そして劣化も少なくする。

   この技術開発はSDGs(持続可能な開発目標)のゴール3の「すべての人に健康と福祉を」を目指す、第一歩でもあった。

   じつは、この気流粉砕機は別の課題解決の大きな役割も担っている。それは、食品ロスと食材のイノベーションだ。

   最近、農業が注目され始めているが、その経営は簡単ではない。作った野菜をすべて出荷することができれば、経営は安定するだろうが、収穫のタイミング、天候の変化などによって、なかなか計画どおりにはいかない。できが悪くてもできが良すぎても頭を抱えるのが現状だ。

   さらに野菜には、市場で定められた「規格」というものがあり、大きさはS・M・L、色や形、品質はA・B・Cなど(優・良・並)で振り分けられている。曲っている、キズがついている、色が薄い、太さが足りないという理由で、定められた規格にあてはまらない野菜のほとんどが店頭に並ぶことなく廃棄処分されており(一部はカット野菜や加工食品として流通)、その廃棄率は生産量の約40%にも達するといわれている。

   市場に出荷できない、廃棄するしかない野菜をパウダー化ができれば、いや、野菜だけでなく魚介類、肉類、一部の加工食品も賞味期限切れになる前にパウダーにすることで、安定した経営ができるのではないだろうか。

   また、たとえば誰でも捨ててしまうトウモロコシの芯をパウダー化することで、美味しいコーンスープができる。つまり、食品ロスを越えた新たな食の可能性が見いだされたのである。栄新薬の取り組みは、SDGsゴール3がSDGsゴール12の「持続可能な生産消費形態を確保する」ことを導き出した。

   栄新薬が、医薬品に頼らない健康の提供を進めた先に、新たな食の可能性までに行きついているが、森下社長は「今後、人口の増加による食糧危機が懸念されます。その対策としても長期保存ができるパウダー化は一つの対策ではないだろうか。そしてこの技術は貧困国の手助けになるのではないか。」と付け加えられた。

   健康をテーマに再建を果たしたその先に、世界課題を見据えた新たな取り組みに引き続き取材を続けていきたいと思った。(清水一守)

◆栄新薬株式会社
〈所在地〉〒464-0007
      名古屋市千種区竹越一丁目8番9号
〈代表者〉代表取締役社長 森下 洋
〈設立〉1960年5月
〈資本金〉2700万円
〈事業内容〉清涼飲料水や健康食品の製造・販売
〈従業員数〉本社40人

清水一守(しみず・かずもり)
清水一守(しみず・かずもり)
一般社団法人SDGs大学 代表理事/公益財団法人日本ユネスコ協会連盟・ユネスコクラブ日本ライン 事務局長/英国CMIサスティナビリティ(CSR)プラクティショナー資格/相続診断士
日本大学文理学部を卒業。大学では体育を専攻。卒業後、家業である食品販売店を継ぐも新聞販売店に経営転換。地域のまちづくりとして中山道赤坂宿のブランド化を推進した。その後CSR(企業の社会的責任)の重要性を学び、2018年7月から名城大学で「東海SDGsプラットフォーム」として月2回の勉強会を開催中。SDGsを広めるための学びの場として2019年9月に一般社団法人SDGs大学を開校。現在、SDGs認定資格講座やSDGsイベントなどを開催中。
岐阜県出身、1960年生まれ。
一般社団法人SDGs大学
SDGsを広めるために、誰もが伝道師となるような認定資格講座を3段階で設定。SDGsを学ぶきっかけの資格としてSDGsカタリストから始まり、その上位資格としてのアドバイザー資格、さらにカタリストを育成するカタリストトレーナー資格を設け、2015年9月の国連サミットで採択されたSDGsを他人事ではなく、『ジブンゴト』としてとらえ、実践していけるようにSDGsの研究・周知・教育を行っています。校訓として学び・実践・達成・及人を掲げ、物心両面の幸せを追求し、真の『自分ごと』を探求できる学びの『場』として、誰もが参加ができるインラインによる「SDGs大学プラットフォーム」、「SDGsキャンプ」などのセミナー、イベントを提供しています。
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