「GoToイート」が飲食店を泣かせている? トンデモ「錬金術」に悪用され 恩恵を受けるのは余裕のある店だけ(2)

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   コロナ禍で困っている飲食店を助けるために2020年10月1日から始まったはずの「GoToイート」キャンペーンが、「飲食店を泣かせている!」と批判を受けている。

   本当に困窮している中小零細飲食店を救済せず、余裕のある大型飲食店しか恩恵を受けない仕組みになっているというのだ。

   それだけではない。SNS上では、「GoToイート」の抜け道を使ったトンデモ「錬金術」の手口が拡散している。いったいどういうことか。主要メディアの報道とネットの声を拾うと――。

  • 焼き鳥を1品だけ頼んで…(写真はイメージ)
    焼き鳥を1品だけ頼んで…(写真はイメージ)
  • 焼き鳥を1品だけ頼んで…(写真はイメージ)

1品だけ注文して673円の「儲け」が出る「鳥貴族錬金術」

   もう一つ、予約サイト経由の「ポイント付与」ではトンデモない「錬金術」がネット上で話題になっている。その実態をNHKニュース(10月6日付オンライン版)が「GoToイート この使い方ってありなの?」という見出しで、こう伝えている。

「オンライン予約によるポイント付与は、利用金額にかかわらず1人当たり昼食は500円分、夕食は1000円分のポイントが後日、付与される。SNSで話題となっているのは、たとえば夕食を数百円に抑えて1000円分のポイントを受け取り、その差額分をコツコツ貯めるという利用方法だ。ツイッターで『錬金術』や『制度のバグ(欠陥)』などと指摘され、さまざまな反応が投稿されている」
地域で使えるプレミアム食事券(静岡県、農林水産省のホームページより)
地域で使えるプレミアム食事券(静岡県、農林水産省のホームページより)

   NHKが特に取り上げたのが、ポイント付与で「不都合な使われ方」をされている居酒屋チェーン店「鳥貴族」のケースだ。鳥貴族のメニューは基本的に298円(税込=327円)。「イート」で夕食を予約・来店すると、1000円分のポイントが付与されるから、1品だけ注文すれば、差し引き673円分の「儲け」が出ることになる。SNS上では「トリキの錬金術」という言葉が生まれ、「成果」を自慢するレシートの写真がアップされている。

   NHKは、こう続ける。

「実際に恩恵を受けた男性に話を聞いた。男性は『鳥貴族』で、焼き鳥と鶏スープの麺を注文した。2品でしめて税込み654円。滞在時間30分で、差し引き346円分がプラスになった。一方、店側はどう感じているのか。少額の注文でポイントを獲得したとSNSで投稿する人が相次いだ『鳥貴族』の担当者は困惑している」

   「鳥貴族」の担当者は、NHKの取材にこう答えたのだった。

「『GoToイート』には期待もしていますし、たくさんのお客さんに来てもらっているので、全体としてはありがたいです。しかし、予約で来店した客には2時間の制限を設けており、たとえば1品で2時間、席を使い続けられると、回転率に影響してしまいます。ポイントをためる目的で来店されているかどうかはわかりませんが、正直、困っています」

   一方、農林水産省の担当者は、NHKの取材にこう答えた。

「こうした使われ方をする可能性があることを当初から想定していた。ポイント付与は飲食店で使うことになるので、外食産業の需要喚起という制度の目的からはそれない。居酒屋に入って飲み物も飲まずに帰ってしまう人は、普通はいない。単価を確保したいのならコースを注文しないといけないとか、店側が自由に決めてほしい。行政側が決めてしまうと使い勝手が悪くなる」

   つまり、店側が工夫するべきだというのだった。

参考リンク:「Go Toイート『錬金術』は想定済み なぜ『一律ポイント付与』に? 農水省に詳しく聞いた」(J-CASTニュース 2020年10月7日)

「農水省が飲食店側の工夫が足りないと開き直るのは言語道断」

(図表)オンライン予約のポイント付与の仕組み(農林水産省のホームページより)
(図表)オンライン予約のポイント付与の仕組み(農林水産省のホームページより)

   この「トリキ錬金術」のSNS拡散について、ネットではさまざまな声があふれた。まず、ファイナンシャル・プランナーの花輪陽子さんは、こう投稿した。

「お店側が最低価格など条件をつけない限り、お得な使い方を考える消費者が出るのは防ぐことが難しいでしょう。牛角の食べ放題も小学生未満だと無料、小学生は半額などお得が多いです。10人までなので子供が多い家族ほど恩恵があります。さらに予約サイトからの特典等がある場合もあります。なんとか、ウインウインになる形のプランや条件設定をお店側も考えて、不具合が出たら修正していくのがよいのではないでしょうか」

   これにはこんな反発、疑問の声が。

「農水省は制度設計に問題があるとわかった時点でなぜ改善しないのか。飲食店が困っているから応援するための企画なのに、飲食店側が工夫すべきだと開き直るのは言語道断だ。1000円以上消費した場合に1000ポイント還元としなければ、原資である税金がどんどん消費されて一部のモラルのない人たちに集まることになる」
「制度設計がアホすぎて逆に笑える。1000円分のポイントを提供するのなら少なくとも1000円以上の利用と制限をつけるべき。しかも実際の店の負担を考えれば2000円とか1万円以上の利用ともっと厳しく制限するべきだった。経済学でいうフリーライダー(タダ乗りする人)が跋扈(ばっこ)している状況と思われる。フリーライダーを許す制度はおかしい」
「定額ポイントにしたところがダメだったね!お得度から考えると還元率いくらかを考えるから、1万円を使っても、1000円を使っても、同じ1000ポイントなら後者のほうがお得だから。利用額の20%とか50%とか、定率のポイント付与にすれば防げたはずだ」

   しかし、こんな意見も少なくなかった。

「本当に困っているのであれば、鳥貴族側が、店として『お客様一人につき、最低3品はご注文いただく』ことをルールとしてしまえばよいだけの話だと思う。税金の使われ方としても正直どうかと思うし、普通の客はそれくらいの最低ラインがあっても何も困らない」
「それにしても、たかが数百円のためにこんなことができる人間がいることのほうが驚きだ。周りにいたらドン引きだな」

(福田和郎)

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