2024年 4月 26日 (金)

コロナ禍で進む「ふるさと副業」 都市部と地方をつなぐ新しい働き方

   「ふるさと副業」という、新しい働き方が注目されている。

   新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、働き方が見直されている。テレワークの進展でプライベートに時間的な余裕が生まれたことや雇用の先行き不安への備えとして、副業・兼業への関心が高まっているからだ。

   「ふるさと副業」は、都市部に住みながら副業で地方の企業の仕事に携わるという働き方。都市部の人材と地方の企業の「共創のカタチ」で、働く人はスキルや経験を生かして地域貢献でき、地方の企業は人材不足を解決する打開策になると期待されている。

  • サンカクの「ふるさと副業」で石川県が初めて副業や社会人インターンシップを希望する人を集めた(画像は、ディスカッションに参加した人たち)
    サンカクの「ふるさと副業」で石川県が初めて副業や社会人インターンシップを希望する人を集めた(画像は、ディスカッションに参加した人たち)
  • サンカクの「ふるさと副業」で石川県が初めて副業や社会人インターンシップを希望する人を集めた(画像は、ディスカッションに参加した人たち)

増やすのは「関係人口の拡大」

   リクルートキャリアが提供する、会社を越えて成長に参画できるサービス「サンカクの『ふるさと副業』」は、副業や兼業、地域貢献に興味があり、自分の経験や知識を活かして地方の企業に貢献してみたい人、将来的にUIターンを希望する人に向けて、地方企業とのマッチングを支援するプログラムを用意している。

   人口減少や高齢化の進展に悩まされている地方自治体や企業は、首都圏をはじめとする大都市部で働く人に対して、これまでは主に移住を前提に就業を呼びかけてきた。

   ただ、「移住」のハードルは高い。就職先は、給料は、暮らしは、子供がいれば学校は......。そう考えると、都市部で働く人がなかなか決断できないのは、むしろ当たり前なのかもしれない。

   一方、厚生労働省は2018年に副業・兼業を促進するガイドラインを策定。副業を認める企業を増やすほか、政府は地方創生の柱として、都市部に住みながら地方に貢献する「関係人口」の拡大を掲げており、2020年度からは都市部に住みながら副業で地方に貢献する「ふるさと副業」への参加を希望する人に、交通費や宿泊費の半額(一人年間50万円が上限)の支給を開始した。

   副業を解禁している企業は増えている。リクルートキャリアの「サンカク」責任者、古賀敏幹さんは、

「しかし一方で、副業したいと考えても、自分に何ができるのか、どんなことをやれるのか、自分のスキルは通用するのかがわからないという人は少なくありません。地方の企業も、これまでは人手不足を補うことに一生懸命で、一番大事な『仕事のマッチング』にまで気が回りませんでした。『サンカク』の役割はそんな両者を引き合わせて、インターンシップを活用して、地方で働きたい、地域に貢献したいという人に、より具体的に、実際に仕事を経験してもらったり勤めている人の話を聞いたりすることでマッチングの確度を高めていこうという取り組みです」

と、説明する。

若い人はお金より地域貢献

   そうしたなか、突然のコロナ禍によって、テレワークなどの在宅勤務が普及してきた。その半面、営業成績が伸びずにリストラが進み、給料が減ったり、職を失ったりする人がジワリと増えてきた。副業への関心の高まりは、それを補う狙いもある。

   古賀さんは、「サンカク(サイト)へのアクセス数は増えています。仕事を体験すること、働くことは副業もインターンシップも、そのプロセスは同じです。やってみようという人は増えているようです」と話す。

   しかし、コロナ禍では「お金を目的に副業を考えている人ばかりではありません」と、古賀さん。「自分の持っている技術などが地方の企業の役に立つなら。地方に貢献したい。社会貢献したいという人は増えています。なかでも、若い人に多いですね」と明かす。

   自分が子どもの頃に生まれ育った土地や、社会人として初めての赴任地であったり、転勤で印象的だった地方だったり......。そんな「地域を活性化したい、地元企業の力になりたいといったお問い合わせは増えています」と言う。

   コロナ禍で直接現地を訪れることが難しくなるなか、「サンカク」のオンラインディスカッションを活用して、副業や社会人インターンシップを希望する人を求めたのが石川県。「関係人口の増加」や「将来的な移住人口の増加」の実現に悩んでいる自治体の一つだ。

   今回は、石川県人材確保・定住推進機構(金沢市)が公募している「社会人UIターン者向けインターンシップモデル事業」プログラムへの参加を呼びかけ、2020年10月3日にその第1回が開催された。

   魅力ある企業がたくさんある石川県だが、県外の人がその存在を知る機会は少ない。そこで県内企業と県外の人材が交流する機会を設け、お互いの理解を深めることで、副業・兼業やUIターンなど、さまざまな関わり合いに繋げていくことで「関係人口の拡大」を目指した。

老舗菓子の宣伝活動や海外進出を目指す手づくり健康食のサポート

   第1回目となる今回のイベントでは、柚子菓子や輪島プリン、金澤ぷりんで知られる創業110年を迎える老舗菓子メーカーの柚餅子総本家 中浦屋(輪島市)と、企業人事向けのオンラインサロン運営やオンライン合同説明会などで北陸地方の若者と企業のマッチングを支援するガクトラボ(金沢市)、シニア施設や個人向けに、手づくりの健康食や医療・介護食などを開発、製造・販売する大和(小松市)の3社が参加した。

グループワークで盛り上がった(画像は、石川県の柚餅子総本家 中浦屋のオンラインディスカッション)
グループワークで盛り上がった(画像は、石川県の柚餅子総本家 中浦屋のオンラインディスカッション)

   現在、東京などの都市部で、主にWebやデジタルマーケティング、ECサイトの企画・運用経験がある人やWebディレクター、ブランド戦略やエリアマーケティング、プロモーション、PRの知識がある人、営業企画や提案型の法人営業の経験がある人、企画立案からプロジェクトマネジメント、システム設計などの経験がある人を求めた。

   地方企業にとっては、採用コストが抑えられ、地元とのしがらみがない、斬新なアイデアや発想力が得られることや、優秀で経験豊かな人からアドバイスや最新の知見が得られるといった魅力がある。そこから、新たなビジネスの可能性が開けることもある。

   柚餅子総本家中浦屋は、歴史ある商品を守りつつ、新たな商品投入とそのブランド力の向上に向けた戦略の立案、推進するという課題解決のため人材を。ガクトラボは、コロナ禍でも学生と企業の出会いの場を創出し続けられるよう、北陸地方の企業のオンライン化を促進したいという課題解決にあたれる人材を。また、大和は海外展開や事業領域の拡大などを見据え、自社や商品のブランディング、IT化の促進といった課題を解決できるアイデアを求めた。それぞれのワークショップでは、熱心に意見が交わされていた。

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