2022年 9月 25日 (日)

時代を先取り「ホラクラシー」 ティール組織に挑んだ「ザッポス」

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   ザッポスは米国のオンライン・シューズショップ。1999年に創業し、インターネットで靴を売るのは不可能と考えられていたのを覆して、急成長を果たしたことで知られる。あのアマゾンが大いに期待して投資したことで、日本でも一躍有名になった。

   成長を支えたのは、「あらゆる人への心からのサービス」。顧客ファーストを徹底した経営は全米の注目を集めた。いち早く実行したのは「ホラクラシー」の導入だ。

「ザッポス伝説2.0 ハピネス・ドリブン・カンパニー」(トニー・シェイ著)ダイヤモンド社
  • 都市のような自己組織化のシステムに移行…
    都市のような自己組織化のシステムに移行…
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企業の寿命迎え決断

   「ホラクラシー」は、役職がない自由な組織づくりをいう。複雑化・多様化が進む次世代で、有効な組織運営法とされる。本書は、ザッポスのトニー・シェイCEO(経営最高責任者)らが、顧客サービスと将来の成長を目的に取り組んだ改革の軌跡を明かした。

   米国の代表的株価指数「S&P500」を構成する企業の平均寿命は約15年という。1999年創業のザッポスの15年目、2014年にシェイCEOはこう考えた。

「その時の私たちが惰性で進み始め、『効率化』と『削減』という典型的な道を歩み、居心地のいいゾーンにとどまるな、やがて衰退するだろうとわかっていました」

   企業は一般的には時間という試練には耐えられず、「初期設定」のまま進めば、未来に待ち受けるのは「死」。市場に大きな変化が起きて、予想もしないようなことが起きるかもしれず、そうしたことに対応できる力がなければ消え去ることになる。

   成功で会社が大きくなり、組織が膨らむと役割が固定化して会社が縦割り化する。対応力は衰え、イノベーションは生まれにくくなる。15年目のザッポスは、それに近い感じだったという。

   シェイCEOは、企業が環境の変化に適応し、変化のスピードにもついていけるようになるには「レジリエンス」が欠かせないと考えていた。レジリエンスは近年しばしば、ビジネスでも使われ、「弾力」や「復元力」「回復力」などの意味がある。「しなやかな強さ」や「柔軟性」という訳語があてはまることもある。

   ザッポスが「初期設定」のままでいては、レジリエンスが失われるばかり。「先手を打つときが来た」と感じたという。その先手は「経営の構造を変えること」。シェイCEOは、トップダウンの経営を取り除き、「会社の土壌にしっかり植え付けた進歩とイノベーションとレジリエンスを、成長させ、繁栄させる」方向へと舵を切った。

都市にあるレジリエンスを企業に!

   シェイCEOは、都市にレジリエンスがあることを見出す。時の試練に耐えて変わらず、それなりの規模を維持し続けるあり方は「大規模な自己組織の理想的な手本という意味でも最適」という。

   都市の規模が2倍になると、住民1人当たりのイノベーションと生産性は15%向上するなど、都市には指数関数的な性質がある。ところが企業では、組織の規模が倍加すると生産性は大幅に低下する傾向がある。

   ヒエラルキー型の企業では、一つのことが効率的になって改善されるとうまく機能するが、強い競合企業や別のテクノロジーが登場するなどのイノベーションがあると途端に機能しなくなる。かつて偉大だった企業が、レジリエンスをもたなかったため姿を消した例は少なくない。

   シェイCEOは、ザッポスを都市のような自己組織化のシステムに移行させるため2014年1月にその第一歩を踏み出す。それがホラクラシーの導入だ。

   本書によると、ホラクラシーは、自己組織化に向けて組織を後押しするためのガイドラインや構造。つまり、自己組織化を達成する手段だ。従来の会社は1人が所属するチームは1つで1つの基本的職務を担うが、自己組織化する組織では1人が複数のチームに所属し、さまざまな取り組みに参加できる。

   このことだけでも「革命に近い変化」であり、多くの斬新なアイデアを生み出し、停滞や生産性の低下をもたらす「組織のサイロ化」の解消を促す効果がある。

反対社員に退職パッケージ、18%が応じる

目指すのは「管理職のいない組織」

   シェイCEOが理想に燃え、ザッポスを自己組織化する組織にしようとする試みは、ホラクラシーをツールにティール組織を目指す道を進む。ティール組織は、しばしば達成型組織と対比され、同僚との関係性のなかで働くシステムなどを備えるもの。シェイCEOは、2015年3月に全社員にメールを送り「ホラクラシーは目的ではなく一つのツールであり、ティール組織を目指す」と明言。管理職のいない組織への完全移行を宣言した。

   しかし、ホラクラシーを実行しているプロセスの中でも、たとえばサークルという新たに採用されたフレームで、フレームごとにリーダーの存在があり、そのマネジメントの範囲がわかりにくかった。それが社内では「カオス」ともいえる状態として現れていた。

   ティール組織を目指すという宣言は、方向をきちんと示して混乱を鎮静化する狙いもあったが、裏目に出てそれ以上にパニックになった。

   そこでシェイCEOは、今度は「ティール・オファー」として知られる提示をすることになり、社内ばかりか世間をも驚かす。オファーは、行動を共にできない社員の離脱を容認したもので、給料の3か月分などを条件とする退職パッケージを提案した。これに18%の社員が応じ会社を去ったという。

   本書では、その後にザッポスがティール組織へと進化を遂げたプロセスが詳しく語られる。また、ホラクラシーの導入に戸惑い悩んだ社員や、ティール・オファーに応じて辞めた人たちの声も収められている。ホラクラシーやティール組織を視野に入れ、新しい経営を志すスタートアップの人たちには参考になるに違いない一冊。

「ザッポス伝説2.0 ハピネス・ドリブン・カンパニー」
トニー・シェイ著
ダイヤモンド社
1700円(税別)

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