農漁業とともに、和食とともに リーディングカンパニー、白鶴酒造の矜持

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   日本有数の酒どころ、灘(兵庫県神戸市)の老舗清酒メーカーで、リーディングカンパニーの白鶴酒造が2020年11月16日、「笑顔でつなごう!みんなの『まる』キャンペーン」で集まった寄付金を、漁業団体のJF全国漁青連に贈呈した。

   このキャンペーンは日本の漁業を支援する目的で、食文化のさらなる発展を目指した。その根幹には、同社の経営理念である「食文化・生活文化の発展」への寄与がある。

   白鶴酒造の取締役執行役員でマーケティング本部長の西村顕さんに聞いた。

  • 漁業は日本の食文化を支えている
    漁業は日本の食文化を支えている
  • 漁業は日本の食文化を支えている

SDGsの「海の豊かさを守ろう」に合致するキャンペーン

   白鶴酒造の「笑顔でつなごう!みんなの『まる』キャンペーン」は、日本の食卓を支え、貴重な食資源である漁業を応援する目的で、アンバサダーにプロ野球・読売ジャイアンツの丸佳浩選手を迎えて、今年3月にスタートした。

   丸選手がホームランを打った時にベンチ前で披露する「○(まる)ポーズ」と、同社で人気の「白鶴 まる」のテレビCMで見られる「○(まる)ポーズ」が取り持つ縁で、オファーした。

   アンバサダーの起用に当たって、西村顕マーケティング本部長は、

「丸選手が千葉県勝浦市の出身で、幼いころから漁港の近く、漁業が盛んな街で育った背景もあって、同じ思いをもって社会貢献としての取り組みを進めていくことができないかと考えました」

と明かす。

   キャンペーン(期間は3月25日から6月30日まで)は、消費者に、まるポーズの写真投稿(1投稿で100円)とキャンペーンツイートのリツイート(8円)、スタンプのダウンロード(8円)の3つの方法でSNSへの投稿を呼びかけ、それに基づき同社が寄付金を贈る仕掛け。コロナ禍の影響で思うような取り組みができなかったものの、11月16日にJF全国漁青連に寄付金100万円を贈呈。魚食の普及活動や水産資源の保護活動などに役立ててもらう。

   清酒の製造、販売に携わる会社として、日本の豊かな食資源の維持、発展は不可欠。国際的な取り組みであるSDGs(持続可能な開発目標)の、14番目の目標「海の豊かさを守ろう」の実践にも合致する。

超ロンググランCMに込めた漁港への思い

   「白鶴 まる」の発売は、丸選手が生まれる5年前の1984年のこと。西村さんは、

「当時は日本酒ブームで、主に純米吟醸が支持されていました。そうした中で「まる」は、コストパフォーマンスの良い商品として知られるようになり、当社でも味わいと価格を訴求していこうと、マスメディアへの露出を増やしていった時期でした」

と、振り返る。

   それ以来、「まる」のテレビCMは、今もなお続いている。なかでも、日本全国の漁港を訪ねるCMは超ロングラン。誰もが一度は目にしたことがあるはずだ。

「『まる』はコスパの良い商品」と語る白鶴酒造の西村顕さん
「『まる』はコスパの良い商品」と語る白鶴酒造の西村顕さん

   清酒によく合うあてといえば、やはり魚。「清酒との相性の良い魚料理を楽しく、非日常のシーンの中で『まる』をアピールできる場所として漁港を舞台に撮影しました」と、西村さん。地元でしか味わえない、おいしい漁師料理と「まる」との相性の良さに加えて、漁師やその家族、漁業関係者の方々との和気藹々で酒を酌み交わすシーンに、手で輪っかをつくる「まる」の決めポーズがウケて、北は北海道から、南は九州まで全国十数か所の漁港を巡る人気CMに。なかには、「うちに来て」とオファーが来ることも少なくなかったという。

   漁港のすがたをありのまま伝えたことで、消費者もテレビCMを通じて津々浦々の漁港を訪ねた気分にもなれるのもよかった。

   テレビCMで紹介された、西村さんの印象深い漁師料理に「鮭のちゃんちゃん焼き」がある。「漁師らしい豪快な料理で、自宅に帰ってから、ちょっとした飲み会の場で作ってみたんですけど、おいしくて好評でした。会社にも『どうやって作るんだ』『どこへ行けば食べれるんだ』と問い合わせが相次いで、気づいたら街の居酒屋さんのメニューになっていたんですね。CM効果かどうかはわかりませんが、地場の魚料理を広められたことはうれしかったですね」と、目を細める。

   実際に「まる」の売り上げにも大いに貢献。ここ数年は日本酒全体の売り上げが減少傾向にあるが、「まる」の売り上げは好調を維持。コロナ禍の今年も、家飲み効果も手伝って上向きだ。

リーディングカンパニーだからやり続けるPR活動

   白鶴酒造の社会貢献(CSR)活動のもう一つの柱ともいえるのが、酒造りの基本である米(山田錦)づくりへの支援だ。年々、農業従事者の減少が進むなか、5年前に「白鶴ファーム」を立ち上げ、米作りの担い手の育成に着手するとともに、育成技術や土地づくりやそのノウハウを蓄積、研究・開発。これは、SDGsの「飢餓をなくす(17の目標の2)」取り組みに通じている。

「そもそも、清酒産業は環境にやさしい産業でした。たとえば米からはもみ殻や藁が出ますが、昔は断熱材として使っていましたし、糠は赤糠からは油、白糠からはお菓子が作れます。そこから、酒を造ります。米づくりには『村米制度』という山田錦の作る地域と栽培米の契約を結んでいます。灘の清酒産業は地域とWinWinの関係を構築してきました。
商品化後も、回収して使う一升ビンはリサイクルの優等生ですし、現在の紙パックも再資源化できるよう、日々の技術開発に力を入れています。今、世界的にSDGsが叫ばれていますが、清酒産業はそれを意識せずに取り組んできたわけです」

   西村さんはそう説明して、胸を張る。

白鶴酒造のホームページ「白鶴丸が行く」より(大阪府泉佐野市の佐野漁港)
白鶴酒造のホームページ「白鶴丸が行く」より(大阪府泉佐野市の佐野漁港)

   コロナ禍で行き来が難しくなってしまったものの、海外では空前の和食ブームが続いている。「日本酒(清酒)は、外国人からリスペクトされる存在で、その背景には和食の歴史と伝統、文化があります」と、西村さんは話す。

   その波に乗って、「SAKE」は海外市場で売り上げを伸ばしている。白鶴酒造も約40年かけて、世界50か国で直接販売している。「まる」も好調の一品だ。

   西村さんは、こう説明する。

「最近は地方の地酒が(海外に)進出していますが、白鶴は『SAKE』の安心、安全のナショナルブランドとして、また日本酒文化、和食文化を広く知ってもらうPR活動を担う役割をもっていると考えています。
清酒業界全体で、どのように『SAKE』を広く知らしめていくかという課題は、体力が伴わなければできないことです。純米吟醸酒ばかりでない、多くの商品群をもっている白鶴と、地方の蔵との違いです。『SAKE』を発信し、『SAKE』文化を底上げする役割を、リーディングカンパニーである白鶴が担っていかなければならないと自負しています」
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