2024年 4月 19日 (金)

コロナ禍も逆風にならず...... あらゆるモノをサービス化する「XaaS」

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   「出かけるときは忘れずに...」。かつて、クレジットカードのCMに使われたフレーズだ。いまならスマートフォンのことになるのだろう。何をするにもインターネットが必要な現代。高速・大容量が可能な通信でドラマや映画、スポーツ中継を楽しみ、食事も買い物もネット経由の宅配か通販が幅を利かせている。

   そしてIoT(モノのインターネット)の登場で、工業製品、製造設備、インテリジェントビル、都市インフラなど、あらゆるものがネットと常時接続して、スマホ一つで管理できたり、利用できたりするようになった。

「XaaS[ザース]の衝撃 すべてがサービス化する」(日経産業新聞編)日本経済新聞出版
  • XaaSの代表例がMaaS。自動運転バスはその核となる試みの一つだ
    XaaSの代表例がMaaS。自動運転バスはその核となる試みの一つだ
  • XaaSの代表例がMaaS。自動運転バスはその核となる試みの一つだ

未知なものを表す「X」+「aaS」

   本書「XaaS[ザース]の衝撃 すべてがサービス化する」は、そうした現代を分析して、こう述べる。

「IoTの台頭がモノやものづくり自体より、それらからネット経由で得られる大量のデータを活用したシェアリングなどのサービス開発や効率改善の仕組みの方により高い価値を置くという、序列の逆転を生み出す。『第4次産業革命』などとも称される動きで、ネットがもたらした革命は間違いなく、IoTにより新たなステージにあがったといえる」

   近年、「サービスとしての〇×△」=「〇×△ as a Service」や、〇×△の最初の文字「〇」と「as a Service」の略である「aaS」を組み合わせた「〇aaS」という表現がしばしば用いられる。

   本書の「XaaS」の「X」は、「Xデー」「惑星X」「謎の物体X」など、未知なものを表すとき使われるのと同じ用法のよう。モノからサービス、所有から利用へと向かう可能性を秘めた製品や産業を探ったのが本書の内容だ。

   2019年4月から2020年3月にかけて日経産業新聞に連載した「XaaSの衝撃」および、新型コロナ流行で起きた情勢変化を踏まえた補編「XaaSの衝撃ウィズコロナ」を加筆訂正したものに加筆してまとめた。

   「XaaS」の代表例といえば「MaaS(マース)」だろう。移動(Mobility=モビリティ)」をサービス化するもので、自動車会社や鉄道会社などが取り組みを続けている。「XaaS」の潮流はこれまで年を追って強まってきたが、新型コロナウイルスの世界的流行は、感染防止対策で移動を避けることが意識されるようになり、MaaSにとっては逆風になるのでは、と懸念されていた。

   ところが、そうした懸念は杞憂だったようで、いち早く変化に適応したサービスへと進化させる動きが始まった。

   たとえば、羽田や成田など空港への送迎配車を手がけるスタートアップ企業のNearMe(ニアミー)。コロナ禍による航空利用の急減を受け、新たに立ち上げたのは、通勤専用の相乗り配車サービス「ニアミーコミュ―ト」だ。

ダイキン、コマツの「XaaS」とは......

   テレワークを容易に導入できない企業にとって、社員の通勤に大量輸送の公共交通機関は避けたいが、タクシーではコストがかかりすぎる。ニアミーは、それなら少人数の相乗り配車には需要があると考え、2020年4月から取引先などに声をかけた。この読みは当たり、東京都心の保険会社など計10社の参画を得て6月1日からサービスを始めた。

   参画企業社員から事前予約をもとにAI(人工知能)を使い効率の良い配車ルートを設定。ルートに応じて複数のタクシー会社から大型車の時間貸しを受け、毎朝5~10台運行。相乗りは3人から多くても5人までに限り、座席間隔を空け消毒や換気を徹底し、マスク着用と併せ安心できる車内環境にした。

   空港送迎で実績あるシステムを使い通勤に不可欠な「時間に正確」をキープし、評判が広がって引き合いが増えているという。

   コロナ禍では、ヒトやモノの流れを滞らせ企業の経営環境に大きな影響を及ぼしているが、本書によるとネット革命にとってはむしろ、さらに加速させる役割を果たしている。

   「〇aaS」は、もともとはIT・クラウド業界で使われていた用語。「MaaS」が一般的になるとともに、急速にその範囲を広げてきた。本書では各産業界で起こっている最先端の動きを紹介。先行する北欧をはじめ国内外のMaaS事例のほか、エアコンでおなじみにのダイキン工業が取り組む空調設備のサブスクリプション「AaaS(Air as a Servive=エアアズアサービス)」や、コマツなどの建設機械メーカーによるデータを基盤にしたサービスの構築について詳しく述べられている。

   とくに建機の稼働状況は、資源需要や公共投資などの景気変動を敏感に示すものだけに、建機が生むデータは「宝」ともみなされる。業界内外から注目が集まっているという。

「XaaS[ザース]の衝撃 すべてがサービス化する」
日経産業新聞編
日本経済新聞出版
1600円(税別)

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